文学座公演『女の一生』プレ・イベント 共催:早稲田大学演劇博物館 
                            in 早稲田大学大隈講堂小講堂(1/14)

第一部
平淑恵による朗読』
第二部
シンポジウム「敗戦70年間の『女の一生』」
パネリスト 大笹吉雄、鵜山仁
司会 児玉竜一

昨年、長岡リリックホールで初日を迎え
現在、地方巡演中の『女の一生』もやっと3月に三越劇場で開幕されます。
その公演に前に行われた無料のイベントに参加してきました。
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第一幕は、主演の布引けいさんを演じられる平淑恵さんとけいさんの初恋相手
・堤栄二さんを演じられる上川路啓志さんとのリーディングで
ト書きを鵜山仁さんが読まれたそうです。
そうです…というのは、残念ながら仕事で第一部が間に合わず、休憩時間に滑り込んだのでした。

第二幕は、シンポジウム。
司会は、早稲田大学教授の児玉竜一さん。演劇評論家の大笹吉雄さん。鵜山さんとの
3人のトークセッションです。
昭和20年初演という『女の一生』。
何バージョンあるかわからないほど改訂されているそうです。
昭和20年初演の台本は、現存されているのは一冊のみ
それは杉村春子さん所有の台本で、現在は早稲田演劇博物館に寄贈されているそうです。
その初演台本の復刻版が、シアターアーツ6月号1996-Ⅲに掲載されています。
杉村さんの台本を起こしての復刻版なので、台本に書かれた杉村さんの書き込みも明記されていて
とても興味深い本です。
この画像がそうなのですが。今でも入手可能なのかしら??
かなり貴重な記録だと思うので、もし目につく機会がありましたら
ぜひ入手をおすすめします。
もし難しかったら、そうだなぁ~当面持ち歩きますので、声を掛けて頂けたら
お見せできると思います(^^♪

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いくつもの改訂版がある『女の一生』今回のバージョンは?と聞かれた鵜山さん。
文学座に入って、研究所の発表会で必ず演じられる『女の一生』のバージョンが
スタンダードとして刷り込まれている感があるので、そのバージョンで行われるそうです。

大笹さんからは、初演時のエピソードが語られました。
まずは台本について
初演時は戦争中。上演台本には検閲が入るという表現の自由がない時代です。
戦中と戦後の改訂版の違いについて、プロローグとエピローグに表れています。
戦中版のプロローグは、昭和17年正月の堤家の居間から始まって、
大正38年の正月の提燈行列の回想シーンに。昭和3年正月に伸太郎さんが亡くなって
エピローグは、昭和17年の正月に戻って幕。
栄二さんは大陸に渡って工作活動なう。
戦後版は、東京大空襲の堤家の焼け跡から始まって、焼け跡で終わる。
伸太郎さんは昭和20年の節分に亡くなって、栄二さんは、中国に渡って
共産党に入って、戦争中は獄中。戦後の堤家の焼け跡でけいさんに再会。

初演時では、演出の戌井市郎さんも職人役としてご出演されたそうです。
若い役者は戦地へ。当時の文学座のギリギリのメンバーで演じられたそうです。
作品の背景にしても、戦争をそのまま引き受けている作品といえると、大笹さん。
演出の戌井さんが亡くなっての初の上演。
そして初めてのこの作品の演出をされる鵜山さん。
文学座にとってとても大きな作品と、大笹さんにとっても『女の一生』に対する思い入れが
伝わってくると共にチクチクと鵜山さんにプレッシャー(笑)

今回の舞台は、プロローグとエピローグ以外は、堤家の居間で同じセットを使われますが
四季折々細やかに変わるのが大変で…今は、昭和はなかりけり(苦笑)と鵜山さん
台本には手を加えないそうです。

10代から60代の女性をみせるこの芝居
リアリズムではないとおっしゃる大笹さん。
作家の森本薫さんは、日本の伝統演劇に詳しい作家で
歌舞伎や新派からのエッセンスを持ってくることによって
新劇だけでは収まり切れないこの作品を成立させる事ができたそうです。

リアリズムについては、色々リアリズムを超越することも多いので
それよりもむしろ日本の四季とか、着物の柄とかが難しいとおっしゃる鵜山さん。
戦争を知らない。そこで日本人の何が変わったかを知らないことが大問題で
そういうことが検証できるのか?と
そんな中でも、児玉さんが、学生さんたちの中で
100人中3人位しか杉村春子さんの存在をしらないけれど
『女の一生』を見せると面白がると(笑)ほぉ~ですね。

文学座に入れば、必ずかかわる作品で、そういう意味でも大きい『女の一生』。
ストーリーはわかりやすいが、登場人物は複雑。
そんな大衆性と芸術性のおかげで、
今の全国演劇鑑賞会、当時の各地の労演から依頼があり回数を重ねて上演できたことにより
劇団の経済的に支えられた作品だったそうです。

この作品は、戦後、国交前の1960年に中国へ。
これは新劇として初の海外上演で、中国向けの改訂版が作られています。
そしてロシアに海外公演されています。
作家として、本来書きたかったものではなく、国策に沿った形としてその指示のもとに
書かれた作品であり、そこに作家・森本薫さんの精神的な意思の強さを感じ取れると大笹さん。
アジアに対する加害者の象徴であるといいます。
貿易相手にである中国によって大きくなった堤家(日本)が、中国はお金で解決するしかないと
言い切るけいさんを近代日本の象徴として描き、焼け野原で終わる…

主人公のけいさんは、大衆が愛する女性ではない。
癖があって、嫌な女だな~と思う女性に惹かれるという大笹さん。
確かに女性から見ても好きか嫌いか言われると微妙ですが
チェーホフの『三人姉妹』のナターシャのように
家を切り盛りする女性の強さにとても惹かれるのです。
スパンが長くて、近代日本を女性で描いた作品であるそうです。

そんな中で、客席で座って参加されていた平淑恵さんが
杉村さんが存命中に引き継いだことで、ファンの方から杉村さん宛の電話が殺到して
とうとう電話線を抜いてしまったというお話や
東京公演の三越劇場ではなく、地方の劇場に見に来られて、
全員にお肉をごちそうして下さったお話とか
杉村春子さんからけいさんを引き継いだ時のエピソードをお話ししてくださいました。

最後に大笹さんが、こういう芝居も上演していかなくてはと
シェイクスピアもいいけれど、着物の芝居もね!みたいにと言われると、
なんと会場からも拍手が(笑)くくくっ
ちょっとたじたじの鵜山さん(笑)
そんな鵜山さんも、『女の一生』の問題は何一つ解決されていないと
現代に置き換えられておっしゃいました。
次の世代に向けても頑張ります!と締めくくられました。

ふぅ~久々のレポでございます。
なんかとっちらかっておりますが、お許しください。
とてもとても貴重なシンポジウムだったのですよ。
なんか、実際は演出をされた鵜山さんが、演出補にこだわる姿勢もとても実感できたし
当時の時代背景を感じながら、3月三越劇場で感じる『女の一生』も
なかなかいいもんなのではないでしょうか?
まさに今の時代にもつながる世界が見えてきそうです。










# by berurinrin | 2015-02-08 14:17 | イベント

2月~の主な外部出演

★今井朋彦『三人姉妹』2/7~3/1シアターコクーン(Bunkamuraチケットセンター03-3477-9912)3/5~15シアターBRAVA!(キョードーインフォメーション06-7732-8888)
★斉藤祐一『雲の脂』2/7~16アトリエ春風舎(青年団 03-3469-9107)
★佐川和正『ベルリンの東』2/6~15下北沢『劇』小劇場(名取事務所03-3428-8355)
★加藤武『琵琶二面-朗読「新・平家物語」』2/8日暮里サニーホール((公財)荒川区芸術文化振興財団 03-3802-7111 )
★粟野史浩『PENALTY KILLING』2/12~18下北沢ザ・スズナリ(風琴工房080-5446-5870)
★鬼頭典子『The River』2/19~26東京芸術劇場(日本劇団協議会03-5909-4600)
★富沢亜古、大場秦正『朗読「支払過ぎた縁談」「一年半待て」』2/24府中の森芸術劇場(チケットふちゅう042-333-9999)
★高瀬久男(演出)、南一恵、大原康裕、福田絵里『3.11企画2014「終わりと始まり」』2/10桜美林大学プルヌスホール(桜美林大学パフォーミングアーツ・インスティチュート042-704-7133)
★高橋耕次郎『止むに止まれず』2/10~15ザ・ポケット(演劇企画CRANQ制作工房070-1432-7482)
★植田真介、牧野紗也子『おおどろぼうホッツェンプロッツ』2/21,22八尾プリズン小ホール(プリズンホールチケットカウンター072-924-9999)
★鵜山仁(演出)『ペリグリーズ』2/19~3/1下北沢本多劇場(加藤健一事務所03-3557-0789)
★渡辺徹『独りぼっちのブルース・レッドフィールド』2/22~3/1シアターサンモール(ポップコーンマッシュルームチキン野郎080-4957-0021)
★稲葉賀恵(演出)、上田桃子、増岡裕子、前東美菜子『解体されていくアントニン・レーモンド建築旧体育館の話』2/26~3/1シアタートラム(世田谷パブリックシアターチケットセンター03-5432-1515)
★沢田冬樹『詩人の家』3/5~8座・高円寺1(後報)
★金内喜久夫、原康義、瀬戸口郁『十二人の怒れる男たち』3/25~3/31俳優座劇場(俳優座劇場03-3470-2880)
★西川信廣(演出)、荘田由紀『さくら色おかんの嫁入り』3/20~23三越劇場(三越劇場0120-03-9354)
★山谷典子(作)、山谷典子、田中宏樹『闇のうつつに我が我かは』3/28~4/5サイスタジオコモネAスタジオ(華のん企画03-5967-1217)
★森さゆ里(演出)、鬼頭典子『トーマの頃を過ぎても』4/15~19中野ザ・ポケット(pal's Sharer)
★秋乃桜子(山像かおり)(作)、松本祐子(演出)、山像かおり『星の塵屑ペラゴロリ』3/11~15下北沢ザ・スズナリ(椿組03-302-1350)
★角野卓造『田茂神家の一族』3/7~8福島テルサFTホール(福島テレサ024-521-1500)3/13~29紀伊國屋サザンホール(劇団東京ヴォードヴィルショー03-3227-8371)
★上村聡史(演出)、永川友里、木場允視『マシューホール』3/6~11恵比寿エコー劇場(日本劇団協議会03-5909-4600)
★鵜山仁(演出)、大原康裕、川辺邦弘、植田真介、荘田由紀『小林一茶』4/6~29紀伊國屋ホール(こまつ座03-3862-5941)上記作品東京公演のみ公演文学座支持会・パートナーズ倶楽部会員特別割引があります。詳細→こまつ座 TEL03-3862-5941へお願いいたします
★小林勝也『漂白』3/20~30吉祥寺シアター(オフィスコットーネ03-3411-4081)
★鵜山仁(演出)、清水明彦『バカのカベ』4/24~5/3下北沢本多劇場(加藤健一事務所03-3557-0789)
★栗田桃子、亀田佳明クライムス オブ ザ ハート4/9~19赤坂レッドシアター(地人会新社03-3354-8361)
★小林勝也『嵐が丘』5/6~26日生劇場(チケットホン松竹0570-000-489)
★鵜山仁(演出)『廃墟』5/29~6/1文化座アトリエ、6/7佐賀文化会館、6/12~23東演パラータ(劇団東演03-3419-2871)

*お問い合わせは( )までお願いします

さ~て
『トロイラスとクレシダ』の情報が少しずつUPされている今日この頃ですが
その前にも大きな大きな企画が着実に進んでおりまして
鵜山仁さん、浅野雅博さん、石橋徹郎さんによるユニット
そう…あの『モジョミキボー』を立ち上げたモジョミキボー上演委員会による
新企画の上演が決定されています。
5/4(祝)~31(日)下北沢OFFOFFシアター!

どんな新たな伝説が生まれるか!?これまた楽しみです♪
で、ちょっと懐かしい『モジョミキボー』のPVなんぞ改めて貼ってみました★
ぐっだいぐっだいぐっだい
ちなみに『トロイラスとクレシダ』に浅野さん、石橋さんご出演です(#^.^#)
演出は、鵜山さんです( *´艸`)♪これまた、ぐっだいです★




# by berurinrin | 2015-02-07 23:52 | 外部出演

文学座付属演劇研究所2014年度研修科卒業発表会『三人姉妹』
                    in 文学座アトリエ(1/30)
作 アントン・チェーホフ
訳 小田島雄志
演出 高橋正徳

将軍であった父親の赴任地であるこの地に住み着いて11年。
去年、その父親も亡くなりプローゾロフ家の三姉妹オリガ、マーシャ、イリーナは
単調な田舎暮らしに限界を感じ、生まれ故郷でもある都会のモスクワでの生活を懐かしみます。
そんな折、三姉妹達の上の兄・アンドレイが結婚し、ナターシャが嫁いできたことにより
それでも平和で静かだったプローゾロフ家の暮らしに変化が起こります。

舞台は、アトリエの会『リア王』のセットを利用した形の白をベースに
両側に客席。楕円のような膨らんだ舞台。正面奥には大きなテーブル。
テーブルを見上げるようにいくつもの置時計が並べられて、静かに時計の音が聞こえます。

『三人姉妹』の私のイメージは、もやもやの感情(笑)
気持ちが先行して、行動が追い付かないという、ほんと、自分のよう
やんなっちゃう
あれもしたい、これもしたい、頭の中で考えて、結局なにもできない(やらない)
結果、ほっぽっちゃう…ふぅ(溜息)とマイナス系なのですが
今回は、等身大の彼らが演じることで、その悩めるもやもやが、マイナスだけじゃなく
前に進むための第一歩、前向きなもやもやだってあるんだと
リアルに伝わってきました。
何とかして現状を打破したい気持ちが、冒頭からうねりのように痛切に胸を直撃して
しょっぱなからこんな状態で、自分大丈夫か?と心配するほど
彼らの身体を通して、彼らの感情と役柄の感情が溶け合い絡み合い吐き出されていく
生きた言葉を私たちの前で見せてくれました。

研修科52期生の卒業発表会でした。
今までの研修科生の中でも、
各自のそのレベル、演技の質はかなり高いと思います。
それも今年は、井上ひさしさん作『天保12年のシェイクスピア』(松本祐子さん演出)
宮本研さん作『美しきものの伝説』(鵜澤秀行さん演出)、
シェイクスピア作『終わりよければすべてよし』(高瀬久男さん演出)と
また、シェイクスピア祭シェイクスピア・リーディングで座員の先輩方とまじり
出演を果たしたりと、言葉言葉に溢れんばかりの貴重な時間を過ごされた事だと思います。
そんな彼らの集大成を高橋正徳さんの演出で迎えられたことは
とても得難い時間だったと思うのです。
彼らの感性により近い形で寄り添うノリ君の描く世界観に触れ
まさに研修科生の彼らの生きる今の『三人姉妹』。
あらめて作品の強さと普遍性を感じながら
すでにもう始まっている彼らの『三人姉妹』第二章の人生が
素晴らしいものであるように願うばかりです。

2015年1/30(金)~2/1(日) in 文学座アトリエ



# by berurinrin | 2015-02-06 23:07 | 文学座観劇感想

京都造形大学舞台芸術科 2014年度2回生 舞台表現法ⅥA/B授業発表会
           『紙屋町さくらホテル』 in 京都芸術劇場studio21(京都造形大学内)(1/11)

作    井上ひさし
演技指導 鵜山仁/若松泰弘
方言指導 藤側宏大

終戦後昭和12年12月。
一人の男性が自分をA級戦犯として逮捕して欲しい」と、
巣鴨プリズンへと連日のように訪れてきます。
そして、対応に現れたのは針生武夫さん。
二人は、ひょうんな事からお互いの本名とその使命を偽って入隊した
移動演劇隊“さくら隊”の活動へと思いをはせていきます。
それは戦争末期の原爆投下直前の広島での出来事でした。

文学座のアトリエでは『リア王』が絶賛上映中の真っただ中。
前日にアトリエに行ったら、まぁ座組のみなさんから
口々に「今日は鵜山さんいないよ~(笑)」「京都行ってるよ」って、はいはい(^^ゞ
でなわけで
京都にプチ遠征に行ってまいりました。
追っかけですからっ
場所は、京都造形大学。まぁ~これが、なかなか道のりが厳しい。
絶対、方向音痴ではないのですが、やらかす事が多い自分としては
前回の長岡公演『女の一生』の時、長岡駅から乗ったバスで下りるタイミングを逃し、
奇しくも一周し長岡駅で降りてタクシーで劇場に向かうという
それも実は、同じ事を二回目繰り返してるという…
なので、今回は慎重に、事前に鵜山さんに行き方をしっかり聞いて超完璧!
時間も超余裕で、道路挟んで向かい側に京都造形大学という
近くのカフェで、スープランチを頂きました。
現在、歯の矯正中なのでスープがなによりも嬉しい食事なのです。
美味しかった~(^^♪
京都造形大学舞台芸術科発表会『紙屋町さくらホテル』_c0023954_22483373.jpg

満たされて満足してお店を出たら
折しもこの日は、全国高校女子駅伝!目の前で走ってる選手を見たの初めて。
みんな全力疾走!きっとそれよか早いっ!その勢いの姿に呆然!早すぎで写真も撮れなかった…
圧倒されました。
そんなこんなで、構内に♪
う~ん、場所はどこかなぁ~と、キョロキョロしていたら、関係者の方が案内をしてくださいました。
「親御さんですか?」と聞かれて、そーか、そーみえるか?ほぉ~とえらく関心しながら
スタジオに到着。

京都造形大学舞台芸術科発表会『紙屋町さくらホテル』_c0023954_22523105.jpg
受付を済ませて、中に…「ん?!」と、下を見てから、上を見上げ…うわぁ~素敵!!
そう、チラシのイラストもそうですが、入り口の照明がピアノの鍵盤になっていたのでした。

舞台は正面後方に控えのイス群。左右には紙屋町さくらホテルの周辺の町並みをイメージした背景。
中央の演技スペースを囲むようにイスが並べてありました。
舞台の下手側には、さくら隊の看板。
休憩を挟んで、第一部と第二部の出演者が入れ替わるダブルキャスト方式でした。

戦争末期、いつアメリカが日本に上陸してくるか?
上陸してきたらどう戦えるのか?
日本は果たして戦える力が残っているのか?
休まる事無く、B29の警戒警報が鳴り続ける空の下
三日後の公演の為に、稽古を続ける移動劇団さくら隊の姿を追っています。
が、俳優達は戦争に赴き、さくら隊のメンバーは烏合の素人集団。

右往左往しながら一つの形になっていく姿と
若い彼らの姿が重なり合って、微笑ましくて愛おしくて…
そんな姿を見ていると、今の自分がやるせなくなちゃったりもするのですが
でもマイナスイオンじゃないけれど、熱い熱いパワーを舞台からいっぱい浴びせられて
明日も頑張ろう!と逆にエールをもらってしまうのです。
まだまだ彼らは、役者としたらホンの小さな底辺の存在かもしれないけれど
もしかしたら役者という存在になっていない程、弱いものかもしれないけれど
それだけにすべてに全力投球。
さっき見た女子駅伝の選手たちのように、がむしゃらに前に向かって全力疾走。
そこには、ただ今を生きようとしてるピュアな感情が息づいていました。
それがどんなに美しくて輝いて客席に届いているか
なんか伝えたくなって感想を書いてみました(#^.^#)

1/10(土)~11(日)まで in 京都芸術劇場studio21(京都造形大学内)






# by berurinrin | 2015-01-31 22:58 | 観劇感想

文学座1月アトリエの会『リア王』 in  文学座アトリエ(1/17)

作 ウィリアム・シェイクスピア
訳 小田島雄志
演出 鵜山仁
美術 島次郎
照明 賀澤礼子

コーディーリア(岡崎加奈さん)を勘当したブリテン王リア(江守徹さん)に苦言を呈した
ケント伯爵(外山誠二さん)は、リア王の怒りから国内追放となってしまいますが
その身を隠し、扮装して、そうとわからないようにリア王の従者としてリア王を守り、
今やフランス王(駒井健介さん)の后となったコーディーリアにリア王の窮地を報告したりと
献身的に使える家臣。
穏やかな振る舞いの宮廷人と、豪快で快活な変装した従者と、その振り幅の大きさ
ケント伯爵が舞台に登場すると、深く響き渡るその声にわくわくしちゃいました。
長いセリフ回しの流れるような語り口調の心地よさ、リア王とコーディーリアを思う慕うひたむきな
気持ち…ケント伯爵の人となりが、外山さんの懐深い芝居からも伝わってきました。
外山さんといえば、シェイクスピア・リーディング『新ハムレット』のハムレット(藤川三郎さん)の
義理の父となる人の好さそうなクローヂヤスを演じられていました。
この『新ハムレット』は原作は太宰治氏。登場人物の皆さんすべてがなんかへんてこで面白かったのです。
で、原作を読んだらやっぱり面白い。へんてこな感じは、
謙虚で日本人臭さが充満してるような異国の空気感かなぁ
ぜひよかったらおススメの一冊です。

長女ゴネリル(郡山冬果さん)の執事・オズワルドは、藤川三郎さん。
ほっぺをくるむような面白いひげを生やしていましたね♪
主人であるゴリネルの言葉には、必ず服従する。
そんな彼にゴネリルは、絶対的な信頼を持ってましたね。
そうでなければ、妹・リーガン(浅海彩子さん)への手紙を書かせたり出来なかったはず。
でも(笑)強気なくせに、勝負となるとポンコツで(笑)
ケント伯爵しかりエドガー(浅野雅博さん)との場面では、まったく勝ち目なく(><)
それでも愛すべき人物な気がしてならない(^^♪
それは、主人(ゴネリル)への忠勤ぶりが、無邪気で微笑ましく思えるほど伝わってくる気が…
見方によっては面白い人物ですよね。
そんな藤川さんは、シェイクスピア・リーディング『新ハムレット』の和装のハムレット。
机に正座して頭を抱えながら悩むハムレット…その姿は太宰治さん?!を演じられておられました。

エドガー(浅野雅博さん)が、次に父親グロスター伯爵(坂口芳貞さん)に再会した時は
コーンウォール公爵(鍛冶直人さん)に両目をえぐられ、その上、領地を追われ
老人(高瀬哲郎さん)に手を引かれた見るも無残で痛ましい姿でした。
老人を演じられたのは高瀬哲郎さん。
ヨチヨチトコトコトコっと、腰をかがめ歩く姿は、もう~高瀬さん年齢不詳です(笑)
グロスター伯爵とエドガーのやり取りの中で、ちゃっかり金貨をつまんじゃう姿は、くすくすしちゃいます。
その後、すたこら逃げる(ヨチヨチですが)バージョンと、
グロスター伯爵の祈りを顔を上げて聞いた後に、
手の金貨を見て去っていく(それでもヨチヨチで)バージョンを観ちゃって
鵜山さんに「演出変わってましたね」「その時の状態で変えちゃうんだよね」って
かるーく仰ってました♪わたしは、どちらのバージョンも、それぞれ後味がよくて気持ちよかったです。
短い場面ですが、好きな場面でした。その他にも高瀬さんは、宮廷の場面ではリア王の傍で地図を
広げてる廷臣、リア王に付き添う騎士、フランス軍の陣営の紳士を演じられておられました。
そんな高瀬さんは、シェイクスピア・リーディング『じゃじゃ馬馴らし』。
ヒロインのキャタリーナ(目黒未奈 さん)の父・パプティスタ氏を演じられいました。

冒頭、リア王が登場するまえに、すくっと真っ直ぐに歩いて、王の登場をしらしめす従者。
エドマント(木場允視さん)に、コーンウォール公爵の到着を知らせる
ちょっと怪しげでダークな香り漂う廷臣・カラン。
コーディーリアに付き添いリア王を治療する医師を演じ分けられたのは木津誠之さん。
木津さんの声は、かなり特徴的だと思うのですが、もしかしたら三役とも全くの別人に見えたの
ではないかと思われる程、その立ち振る舞い、声、姿が重ならない。
本当に役の色の違いを強調して見せてもらった気がします。
軽妙な役から重厚な役柄まで、さまざまに見せて頂きました。
とはいえ、やっぱ、コーディーリアを温かいまなざしで励ます医師役が好きだなぁ~
そんな木津さんは、『大空を見ると私の心は躍る』
実家に帰った恋人の映一さん(柳橋朋典さん)を追ってくるキュートな菅原太一さん♪
一途なくせにひねくれていて可愛いかったです。

扮装したケント伯爵が、信頼したのは、リア王に付き添う一人の紳士。
高塚慎太郎さんが演じられました。
嵐の中でのリア王と道化(金内喜久夫さん)の姿を語る時の痛ましさを叫びのような
今まで聞いたことのない声音で伝えてくれました。かと思うと、楽しそうに笑う朗らかな笑顔
ケント伯爵の使いとしてコーディーリアに面談した時の状況を伝える時の明瞭とした語り口。
高塚さんを媒体として、輝きを放った人物だと思いました。
だって、地味な役名もそのまんま「紳士」
けれども確かに印象的で、新鮮で魅力的な人物として記憶に残りました。
絶対、役名を付けたらよかったのぃ~と、作家に言いたい(笑)
そんな高塚さんは、シェイクスピアリーディング『ヘンリー五世』でのタイトルロール
ヘンリー五世を演じられました。これが、とても楽しくて成長するヘンリー王と高塚さんが重なって
眩しく見えたのでした。また『天鼓』では、笑いながらしゃべるというクセのある警察官シンを
怪しげに演じられていました。

「飯はまだかぁ~」壁どんどんっと、リア王の騎士とエドマンドの告発者を名乗らせるために
告発文を読み上げ、ラッパの音に「もう一度!」「もう一度!」と
伝令使いを演じられたのは、去年、準座員に昇格された萩原亮介さん。
彼の芝居は一見地味な感じがするのですが、今回改めて彼を拝見して思ったのは
とてもとても細やかな繊細さ。しなやかな動き、邪魔にならず、そこに生きてる人物を
キャッチして共に生存してる確かな存在感を感じるのです。
研修科時代『血は立ったまま眠ってる』のヒリヒリするようなテロリスト良さんを演じられていたのが
すごく印象的でした。なんか怖かったなぁ~、拝見した日の夜、悪夢を見たっけ…(^^ゞ

…と、だらだらは相変わらず、脈絡なく書いてしましましたが
各自、どの配役でも見どころがあってポイントがあって、そんな面白さが
なんで今まで気にならなかったのか?!
今回は、より新鮮に作品を楽しむことができた気がします。
アトリエという場所の素晴らしさも!
そーそー人物のアナザーストーリーを想像するだけでも面白そうですよね
そんなこんなで『シェイクスピア祭』とうとう終了ですね。
ほーーーーんとに楽しい一年間、シェイクスピアを堪能する事が出来ました。
今更ながら、感謝と共に感想を終わらせて頂きますぅ(#^.^#)

2015.1/6(火)~1/22(木)in 文学座アトリエ



# by berurinrin | 2015-01-24 23:59 | 文学座観劇感想