京楽座公演『破戒』

京楽座公演『破戒』 in 俳優座劇場(10/14)

原作 島崎藤村
脚本 中川小鐵
演出 西川信廣
美術 石井強二

長野飯山。小学校教師瀬川丑松さん(中西和久さん)は、故郷を離れるとき
父親より「部落出身者であることを隠し通せ」という、戒めを守って生活をしていました。
ところが、部落出身であることを隠さずに社会運動を展開する猪子連太郎さん(森山潤久さん)
に強く引かれていきます。そんな折、丑松さんの父親が急死され、帰省していた丑松さんが
飯山に戻ってきてから、少しずつ丑松さんの隠していた過去が、噂となって人の口から
口へと広がって・・・。

重い内容です。
同じ平民なのに、なんで??
「平民」「新平民」と区分けしたんでしょうか?ばかばかしい。
差別って一体なんでしょうか?同じ国に住んで、同じ肌の色を持って、同じ言葉をしゃべって
同じものを食べて・・見た目一緒なのに。そんな私たちが、ただ生まれ育った場所だけで
差別される事自体わたしにとって衝撃でした。

実は去年、拝見した舞台『激情』の底辺にも、この問題が含まれていたのですが
言葉「差別」=「いじめ」という方程式が、わからなかった。。。わからなかったんです。
その方程式の理論が解らず・・・わたしは、無知です。根が深すぎて・・・なので
『激情』のラストが、どうしても消化する事が出来なかったのですが
やっとこの差別ということが、おぼろげながら見えてきました。
でもこの出来事は、今現在も起きているという事に驚きを隠せません。
芝居を観る事によって、今まで知りえなかった現実の出来事を知らされます。
先日もニュースで「同和地区問題」について報道されてました。
わたしは、無知です。
もっと知らなくてはいけない事があります。

話を戻しますが、丑松さんは下宿先で「部落出身者」が追い出される姿を目撃して
逃げ出すかのように引越しをします。引越し先は、蓮華寺。
そこには志保さん(山本郁子さん)が、養女としてお寺に引き取られていました。
『ゆれる車の音』では、しっとりとした小料理屋の女将さんでしたが、志保さんは
可憐な女性・・あの美しい声ときりっと着物を着こなす姿も本当に美しかったです。
また、丑松さんの同僚の土屋銀之助先生(石田圭祐さん)♪
この方が、豪快な役を豪快に演じる姿・・たまらなく大好きです。お顔も豪快ですが(笑)
戯曲・赤い月』のお父さんの壮絶な生き方も愛し方も大好きでした。
この人が出ると芝居が引き締まるのは、校長先生の関輝雄さん。
いやぁ~素晴らしい役者さんです。
そして、カッコいい若松泰弘さんは・・う~ん、今回は丑松さんの出生を
校長先生にばらしちゃったり、志保さんにちょっかい出したりとちょっと嫌な役ですが
かっこいい姿だけに、本当に嫌な感じに演じてくださいました(笑)
外部の作品ですが、文学座の俳優達がしっかり脇を固めて重力級の芝居を
魅せて下さいました。やっぱ、すごいっすよ。文学座の役者って~☆彡

さて、ラストは丑松さんが、先生・生徒達を前にして、自分の出生を明らかにして
飯山を離れ、東京に旅立ちます。そして丑松さんの後ろには、「差別」を超えて
結ばれた志保さんの姿。

果たしてハッピーエンドなのでしょうか?
このお話はこのまま引き継いで、今の現実のストーリーとして存在しています。
いつかきっと近い将来「部落差別」という言葉が、死語になって初めて終わるドラマ
になるかもしれません。
わたしのようなものが軽々しく述べていい内容だとは思ってもいませんが
このような物語の中だけでなく、現実に起こっている出来事は
無知では済まされない問題だと思って、激しい言葉を使ってしまいました。
どうぞ目を背けずに他人事だと思わすに知ってください。そして過去を悔やむように
おろかな風習、出来事は未来に繋げてはいけません。
そして「***出身です」といわれたら、普通に「ああ、そうですか」と言える
ありふれた普通の会話ができるますように。

ちなみに脚本の中川小鐵さんという名前は、西川信廣さんと中西和久さんの
共同ペンネームだそうです。

10/11~15迄  in 俳優座劇場

参考として、ゴーマニズム宣言「差別論スペシャル」(小林よしのり氏)お勧めです。
by berurinrin | 2006-10-22 17:34 | 観劇感想