巣林舎第4回公演『出世景清』

巣林舎第4回公演『出世景清』 in 紀伊國屋ホール(8/26)

企画監修 鳥越文藏
台本演出 鈴木正光
美術    石井強司

平家滅亡後、熱田神宮に落ちのびた悪七兵衛景清(若松泰弘さん)は、熱田大宮司
三木敏彦さん)の娘、小野姫(北村由里さん)を妻にしますが、源氏に一矢報おうと
その時期を狙っていました。
そして五年後、頼朝(城全能成さん)が奈良の大仏再興工事の際に上洛することを
知った景清は、京に向かい愛人の阿古屋(吉野佳子さん)と子供達の住む場所に
一旦は身を隠すことにします。
その事を知った阿古屋の兄十蔵(浅茅直樹さん)は、“賞金”目的で景清を訴人
するように阿古屋に申し出ますが、断られます。が、そこに景清の妻と名乗る
小野姫が熱田から訪ねてきます。。

やはり今回は主演の景清を演じた若松泰弘さんと
最近はコメディー路線もOKな城全能成さんの
文学座誇る超2枚目競演ということで、本当に楽しみにしていた演目です。
そして文学座から8名ものご出演!いやぁ、近松の世界に酔いました。

前回『曾我会稽山』では、悲劇に向かって突っ走る若々しいヒーローを演じられた若松さん
でしたが、ひげを生やして、どっしりとした立ち姿の美しいこと・・
風格のある大人の香りが漂う姿もまた素敵です。

話はわかりやすくて展開がドラマティック・・
忠誠と愛と欲に翻弄された人間の性が景清を中心として、
おろかにも悲しく描かれた作品でした。

お互いが唯一無二の景清の妻だと信じた二人の女性の絶望と嫉妬の結果、
愛人の裏切りにより、密告され牢に繋がれた景清の元に
許しを乞いにやってきた愛人とその子供達を許す事が出来なかったばっかりに
目の前で愛人と自分の子供達が自害をする場面。
子供達の哀れでけなげな姿と自ら招いた悲劇に苦しむ阿古屋さんの痛々しい姿・・
目の前で起こる惨劇に首、手、足を鎖でつながれて、身動きできずに
血を吐き出すような景清の慟哭・・・
すさまじいばかりの場面・・

死を覚悟している景清の前に現れた頼朝を演じたのは城全能成さん。
この二人の対決の場面も気迫せまる素晴らしい場面でした。
天下を取った頼朝の度量の大きさで丸ごと景清の心を絡め取る場面。
城全さん、見事でしたぁ
でもその後の若松さんも凄かったぁ・・・。鳥肌が立つほど感動した私です。

いやぁ、登場まで待ちましたよぉ。。城全さん♪
お芝居はもんのすごい展開をしているので、後から登場する(それも2幕の終盤)
きっと城全さんご自身、舞台の裏では一人重圧の中での孤独な戦いがあったのでは・・
と、思いきや芝居の冒頭の場面での雪が舞うシーン・・
裏で雪を降らせておられた裏方♪頼朝さまでした(笑)

8/23(水)~8/27(日) in 紀伊國屋ホール

次回は2007年10/10~16日『信州川中島合戦』(紀伊國屋ホール)
by berurinrin | 2006-08-26 21:47 | 観劇感想