『箱根強羅ホテル』千秋楽

シリーズ「笑い」③『箱根強羅ホテル』 in 新国立劇場 中劇場

掲示板の方にすでにUPしていますが『箱根強羅ホテル』の上演台本が
集英社「すばる」7月号に記載されています。
今日の観劇に備えて、がつーんと熟読して改めて
舞台を拝見いたしました。
井上さんの台本が本としてもとても面白いと、以前『円生と志ん生』が同じ「すばる」
に記載された時、コメントさせて頂きましたが
井上さんの台本は“細かい”ですよね。
ト書きやら役者の動きが細やかに書き込んであるので、
読みながら情景がどんどん溢れ出してきます。
また、たかがと役者の一行の台詞の中にどれだけの莫大な情報収集
の時間を費やしているのかと思うと“井上ひさし”さんの作品に出演したいと
熱望したがる役者が多いのも頷けます。が、・・・・と、
また同じ事を書いてしまいそうなので、気分を変えてっと

千秋楽、素晴らしい舞台でした。
今回の芝居の中で、一番内面の葛藤の多い役どころは
庭師の国枝さんことスパイとして侵入する陸軍大尉国木田さんの内野聖陽さん!
前半は粋な「庭師」を軽快に演じながらも、軍人の姿を垣間見せつつ
25年ぶりに姉(麻実れいさん)と対面してからは、
少しずつ柔らかな感情が、彼のエリート軍人としての鎧を溶かし始め
やんちゃな弟「治ちゃん」が彼の中から現れてきます。
そして、後半はキーパーソン的な存在の坪井さん(藤木孝さん)の言葉に
軍人として「「絶対だった」モノの崩壊に足元を揺さぶられ、
自信に溢れた彼の背中が、がっくりと弱々しい姿に変わっていきます。
そして、エピローグでは学生姿で弟の「*進ちゃん」に生まれ変わります。

その弟を常に優しい眼差しで見つめる智恵子先生(麻実れいさん)
キャラクター的には稲葉さん(大鷹明良さん)の困った陸軍少佐が好きでした。
陸海軍たちの入り乱れての「タララン♪」暗号歌も爆笑ものだし
岡軍曹(段田安則さん)の近眼の小芝居も絶妙。
役者同士の間のタイミングも最高!
いい芝居を観る事が出来て、本当に幸せな時間を過ごす事が出来ました。
出演者・演出家その他、この芝居に携わった方全てに感謝です!

ところで、内野さん以外にも文学座には素晴らしい役者が一杯います。
内野さんで文学座に興味をもたれた方!
ぜひ、次回は9月の劇団本公演を一緒に楽しみませんか?

   *国木田大尉(内野聖陽さん)には、4つの名前があるのです。
    幼児期の「小林進」。養子となっての「深瀬徹」
    関東大震災で孤児となった時、孤児院で付けられた「国木田進」
    スパイで潜入した時の「国枝茂」。
by berurinrin | 2005-06-08 22:20 | 観劇感想