文学座有志による自主企画リーディング公演『輝く街ーシャイニングシティー』

文学座有志による自主企画リーディング公演『輝く街ーシャイニングシティー』
              in 文学座新モリヤビル1F(6/13)

作  コナ・マクファーゾン
訳  鈴木小百合
演出 望月純吉
主催 「シャイニング・シティ リーディングの会」
協力 文学座企画事業部


カウンセラーのイアン(采澤靖起さん)のオフィスに現れたのは
妻を交通事故で亡くしたジョン(佐川和正さん)。ジョンは数日前から恐ろしい出来事により
自宅ではなくホテルで生活していると語ります。
それは、ある日の夕暮れ、車で移動するアイスクリーム屋さんの音楽が聞こえ、違和感と共に死んだはずの妻が現れた・・・
対するカウンセルングを行うイアンも自身の悩みに苦しんでいます。

今年の1月に長野県は安曇野公演が行われたこの作品
モリヤビルでの凱旋公演です♪
安曇野で一回こっきりの公演という事でしたが、あまりの感性度の高さに感動!
ぜひ東京での再演を熱望していただけに、嬉しかったぁ~
それも今回も一回こっきり(笑)で、ちょっと短縮されてすっきりした感じがします。
今回は、亀田佳明さんの代わりに采澤靖起さんがカウンセラーのイアンを演じられました。

この日は、昼間は鵜山仁さん♪演出の俳優座劇場で公演されている劇団昴公演『危機一髪』を拝見。
そのまま歩いてモリヤに向かう予定でした。
六本木交差点で、鵜山さんから信濃町への方向を教えて頂いて
東京ミットダウン方向にずっと真っ直ぐ、てくてくと20分位で到着!
坂道は無いし、お天気だし楽しいお散歩コースでした
鵜山さんにも会えたし最高~!!

一回こっきり公演だけに、いつもの文学座ご贔屓仲間と某場所でお会いしたり、客席で遭遇したり
長崎ぶらぶら節』ツアーが無事千秋楽を迎え、戻ってこられた座組みの皆さんとの再会★
すっきりした笑顔満載お顔がちらほら(*^_^*)
賑やかに挨拶を交わしつつの華やかな客席でありました。

現代に生きる人たちは、多かれ少なかれ、人に語れない問題を抱えていると思います。
なかなか深刻な問題を身近な人に相談する事って抵抗ありますよね。
逆に身近だからいいツライ・・・
モチロン同じように親しい友人もそう・・親しいからなお更いいツライ。
結果が出たり、過去の悩みならば、気軽に話しちゃうんだけど
わたしは、自分で考えて結果を出したい派で、途中過程は言えなくて・・
ほーんと可愛げない(笑)
でも、一度カウンセリングを受けた事があります。
以前UPしたことがあったけかなぁ・・

数年前の出来事ですが、会社帰りで帰宅すべく最寄駅からの夜道を歩いていたえら
正面から歩いてきた作業服姿の男性に突き飛ばされて転ばされて、殴られそうになりました。
怖くてびっくりして、悔しくて泣きながら帰宅したら
その姿に母がびっくりして110番通報し、パトカーと白バイ2台が来て、そのまま警察署で被害届を出すことになりました。
擦りむいた膝や内出血した部分に自分の指をさして写真を何枚か取られました。
事件現場に行って、白いチョークで○印をしたりの現場検証とか
なかなか貴重な体験をしたもんです。
で、怪我は労災になるから会社に報告するように警察から指示されまして
事故報告として報告書を人事部に提出したら「それは事件報告です」と、事の大きさに動揺しちゃって
会社指示で、カウンセリングを受けるように半ば強制的にカウンセラーを紹介されたのでした。
まずは状況をメールで2、3やり取りしたのですが、
直後だったし、その話をされること自体が嫌で、わづらわしくなっちゃった
おかげでトラウマがなかなか消えませぇ~んf(^_^;)
相変わらず、暗い道を歩く時は、手が自然にグーになるし
思い切り幅を広げてすれ違うし、その人が作業服姿だったらキャーって感じ
事件以来、最寄駅を避けるようにバス通勤をしていますが
一時期、今は亡き愛猫ベルの介護で一分一秒でも早く帰宅したかった期間は、 
夜道でも半ダッシュで、その道を使うようにしていたら
その時は、すっかりトラウマが消えていました。
今は、またちょい怖いので暗くなると無理ですけど・・f(^_^;)

でも、思ったんですが、結局カウンセリングしても治らない
カウンセリングしながらも、所詮は自分の気持ちを、解放して
自分で立て直していくしかないって思いました。
・・人間ってぶきっちょですよね。誰かの手助けがないと前に進めない
今まで誰にも言えなかったジョンが、初めてイアンに語る時の緊張感と同時に信頼感の不安定さから
心の開放に変えていく姿。
妻の亡霊に怯える事をジョンの嘆きをイアンは黙って聞いているだけで安心と信頼を与えてくれる。
そんなイアンも、恋人ニアサ(松岡依都美さん)に言えない苦しみを抱えています。
そのイアンの心の開放は、招かれて現れる青年(植田真介さん)とのつかの間の一時。
そしてニアサもイアンに隠している出来事でずっと苦しんでいます。
誰もが抱える苦しみをどう自分の中で折り合いをつけて生きていくか
苦しさや悩みは、大なり小なり解決したらまた生まれてくるもの
一生無くなることは事はないのだから、、、

そんなこんなで、前回言えなかったラストのシーン。
夕刻、引っ越しをする準備をしているイアンの耳に、アイスクリーム屋さんの音楽が聞こえ
イアンの前に現れた赤いコートの女性・・そうジョンの亡き妻の姿。
安曇野で拝見した時は、ジョンがイアンに感情をむき出してすべてを語る事に対して、
ジョンではなくてイアンの前に現れた妻が、イアンに嫉妬にも似た悪意を感じたのですが
今回は、真逆にジョンの立ち直りに対する感謝の気持ちにも似た優しさを感じました。
ちょっと怖いけど、普段見えない世界と私たちの世界、二つの世界に何か通じるその先の姿を存在を
信じたくなる。
心の安らぎを感じました。

さて、妻の死とその亡霊の影におびえながら、少しづつ前に向かって生きて行こうとする
ジョンを演じられるのは、佐川和正さん。
ジョンの妻に対する恐怖と苦悩と愛情に引き裂かれた心の激しい感情の変化は圧巻。
思わず手に力が入ってしましました。
そんな佐川さんは、『MEMORIESテネシー・ウィリアムズ[1幕劇一挙上演]』の『ロング・グッドバイ』』で
亀田佳明さん演じるジョーの友人シルヴァーを演じられました。
また多彩な才能を持ってる佐川さん。
ササ・モンゴロイド氏として今回のチラシデザインもされています。

カウンセラーで元聖職者で、すでに子供を持ちながら同棲中の恋人ニアサとの関係に悩むイアンは、
采澤靖起さんが演じられました。
その立場やしょってるものだけでも難解な人物。
また年齢的にもなかなか複雑な人物だけに、かなりな難役だし、一人後から加入というプレッシャーもあったと思いますが
果敢にチャレンジしていた所が、逆に好ましく、亀田さんとはまた違うイアンを作り上げた気がします。
そんな采澤さんは『山羊・・・それって・・・もしかして・・・シルビア?』で、ゲイの息子ビリーを演じられました。
あっ今回もf(^_^;)

イアンの恋人ニアサは、松岡依都美さん。
イアンからの別れ話に対して女性の感情をむき出して、イアンの心を戻そうとしながらも
どこかあきらめの気持ちも見えている。彼を失うと、ニアサの生活のベースから全てが失なわれてしまう・・
そんな恐怖と今までイアンに言えなかった隠し事に対する負い目。
たったワンシーンの中で、感情の波にのまれそうになるニアサの姿は、痛々しくて苦しいのですが
それでもイアンから離れていく時のニアサの姿は凛とした美しさをも感じてしまいました。
愛を失うことは辛いけれど、失うことに怯える方がもっと辛かったのかもしれません。
そんな松岡さんは、『MEMORIESテネシー・ウィリアムズ[1幕劇一挙上演]』では『話してくれ、雨のように…』
外は雨の降るアパートの一室で、乾ききった男女二人・・
前にも後ろにも進めない彼女が語るモノ悲しい憧れの将来の姿・・そんな女を演じられていました。
同じく『ロング・グッドバイ』ではジョーの妹マイラを演じられていました。

ト書きと後半にイアンに招かれて現れる青年を演じられたのは、植田真介さん。
淡々と語るト書きを語りながら、移動して舞台中央に座って照明を照らされた瞬間スイッチが入っての佇まいは、
前回同様すでにその香りが漂う妖しさを醸し出しておりましたね。
今回は、イアンをリードする感じがより強く押していた感じがしました。
ランニング姿がセクシィ♪(笑)
そんな植田さんは、私は拝見することが叶わなかったのですが『父帰る/おふくろ』にご出演されていました


で、最後にジョンの亡き妻として現れたのは、永川友里さん。
えへへっわかりましたか?
『ボーング=ボーイング』でのアメリカ人ジャネット役で金髪を生かしての姿。
恐怖の対象であったはずの彼女・・なんか笑顔に見えたのです。
その笑顔が、作品全体の明日に繋がる救いに思えたのでした。

6/13(水) in  新モリヤビル1F
by berurinrin | 2012-07-21 23:38 | 文学座観劇感想