文学座5.6月アトリエの会『NASZA KLASA(ナシャクラサ)私たちは共に学んだ』その2

文学座5.6月アトリエの会『NASZA KLASA(ナシャクラサ)私たちは共に学んだ-歴史の授業・全14課』その2
                                        in 文学座アトリエ(5/18)

作  タデウシュ・スウォボジャネク
訳  久山宏一
演出 高瀬久男

演劇で歴史を語る・・特に陸続きの大陸で、近隣諸国から侵略を受け続けたポーランドという
国の歴史をこの作品を観て語るには、あまりにも無知な私なのゆえ
この10名の共に学んだ子供たち一人一人の生き様を追うことで、
作品をより自分の中で消化していけたらいいなぁと思いました。
あ~でも、これは思いっきり私の主観から見ています!

ネタバレたっぷりありますので、ご注意下さいね

幼少期の彼らは、ユダヤ人、ポーランド人と自覚しながらも
机を並べ一緒に学び遊んでいました。
自覚といいつつもそれはそれは幼いもので、
きっと両親や周りの大人の受け売りのような状態だったと思います。
成長すると共に、社会状況が悪化し、周りの環境が変化し、
彼らもまた自分達の両親がそうであったように自然に・・・または、保身の為に変わらざるおえなくなります。
でも真実なのは、同級生であったこと・・
それ以上に、わたし達には想像できないほど、人間の尊厳などと綺麗ごとに聞こえるほど
生と死が、あまりにも彼らの身近に存在していたのだと思います。
でも、それらは遠い昔の話ではなくて、つい昨日の・・私たちが、のほほんと聞き流したニュースの断片。
今日起こるかもしれない隣の国の話でもあるという恐怖が、リアルに伝わってきます。

10名の子供たち・・といえども、出演者のキャストは年齢層に幅がありましたね。
もしかしたら、彼ら一人ひとり通過する年代中での重きをなす世代に合わせての配役なのかしら・・と思いました。
この台本は、会話以外のすべては過去形で書かれているそうです。
死者たちが蘇って過去を検証する物語。
冒頭の彼らの姿は、亡くなった当時の扮装で現れるのでした・・
ふわっと、記憶を呼び起こそうとしているかのように席に座るヤクプ・カツ(藤側宏大さん)から始まって
みなさん懐かしそうに席につかれていましたね
その後はチチチ♪(笑)幼少期に~ぴゅ~ん!!

ユダヤ人(ユダヤ教徒)
ドラ(牧野沙也子さん)1920-1941
ラヘルカ(山本郁子さん)1920-2002途中でカトリックに改宗してマリアンナ
ヤクプ・カツ(藤側宏大さん)1919-1941
メナヘム(亀田佳明さん)1919-1975
アブラム(采澤靖起さん)1919-2003

ポーランド人(カトリック教徒)
ゾハ(佐古真弓さん)1919-1985
ルィシェク(川辺邦弘さん)1919-1942
ズィグムント(沢田冬樹さん)1918-1977
ヘニェク(中村彰男さん)1919-2001
ヴワデク(清水明彦さん)1919-2001
名前の後ろの数字は、生没の年代が表示されています。

ドラ(牧野沙也子さん)の場合
映画女優を夢見たユダヤ人ドラは、同級生のポーランド人ルィシェク(川辺邦弘さん)が好きだったようです。
ルィシェクも綺麗なドラが好き。。
ルィシェクがドラへのラブレターをカバンに入れたのが、メナヘム(亀田佳明さん)に見つかって
クラス中に知れ渡り、恥をかいてしまうルィシェク・・嬉しそうなドナ・・でも、その思いはルィシェクに伝わってはいない気がしました。
ポーランドにソ連が侵攻し、ユダヤ人にとって歓迎ムードな中、ドラはメナヘムと結婚します。
1941年独ソ開戦。今度はドイツがポーランドに侵攻してきます。
と共に、ソ連に対するユダヤ人の態度を良く思っていなかったポーランド人への非難と
ドイツのヒットラー総裁によるユダヤ人弾圧の嵐が、彼らを包み込みます。
いつしかぎこちなくなるドナとメナヘム。
メナヘムの留守中、ヤクプ・カツ(藤側宏大さん)を殺害したばかりの
ルィシェクとズィグムント(沢田冬樹さん)とヘニェク(中村彰男さん)がやってきます。
3人のポーランド人は、ドナを辱め去っていきます。
幼い頃、お互いを想い合ったドナとルィシェク・・暴力によって結ばれた二人・・悲しいことです。
ポーランド人によるユダヤ人の拘束が行われ、赤ちゃんを抱えながらドナは、広場へ
彼らユダヤ人周りには、熱にうかされたようなルィシェクとズィグムントとヘニェクの姿も・・・
ルィシェクに救いを求めたけれど、ルィシェクはドナを殴りつけ
民衆の中に、ゾハ(佐古真弓さん)を見つけ、子供を託そうとして断られ、
同じユダヤ人たちと一緒に拘束され広場にある納屋に押し込められます。
そこに火を放つポーランド人たち絶望のまま
ドナは、赤ちゃんを抱いたまま、彼らと運命を共にします。

いやぁ厳しい・・・胸が詰まる場面がこれでもかっ!ってな具合に続きます。
若くて美しい弾圧される側の女性として
ドナと同じように悲劇な運命をたどった女性が、どれほどいたことでしょうか
ルィシェクとの幼い初恋が実っていたら・・もしかしたら全然違う未来があったかもしれない
そんなドナを演じられたのは、普段はいつもにこにこっ笑顔笑顔の可憐な沙也子さん。
今回も音大出身の美しい美声を披露して下さっています
前回は『美しきものの伝説』ご出演。劇中劇「復活」の中で、赤いほっぺ(笑)で
コケティシュで可愛い女優さんを演じられていました。

ラヘルカ(山本郁子さん)の場合
医者になりたいと言っていたラヘルカは、とても聡明な女性。。
同級生からも一目置かれていたマドンナ的な女性だっと思います。
ラヘルカのお父さんの大切な大切な風車小屋は、ソ連軍の侵攻と共に搾取され、
そのショックからくる心労で亡くなってしまいます。
その後、ドイツ軍の侵攻・・・
ヤクプ・カツ(藤側宏大さん)の殺害に加担したヴワデク(清水明彦さん)は、
町の異変を察知し、自宅にラヘルカを匿います。
彼女を守る為にカトリックへの改修と結婚を申し込みます。
すでにこの町では、ラヘルカ以外のユダヤ人は居なくなってしまいました。
運命に従うようにラヘルカは、カトリック信者となりマリアンナと改名しました。
代理父はズィグムント(沢田冬樹さん)。ヘニェク(中村彰男さん)の采配で結婚式が行われ、
同級生達がお祝いしてくれました。
ある日、夫のヴワデクの留守中にルィシェクがやってきて、唯一のユダヤ人である彼女を捕らえます。
身重の妻・マリアンヌを救い出す為、ルィシェクを殺害するヴワデク。
二人は逃亡を図ります。
逃亡中に産気づきヴワデクが赤ちゃんを取り上げますが死産・・・。
戦争が終わり故郷に戻り、マスコミは二人を現代のロミオとジュリエットと騒ぎ立てます。
時が過ぎ、夫を看取りマスコミや世間の声、援助をしようとするアブラム(采澤靖起さん)さえも避け
彼女の関心事はテレビの世界・・

ラヘルカを演じられたのは、どんな役柄でもどんとこい(笑)バイブレーヤー山本郁子さん。
くにこ』では、ころころ笑う着物姿が美しいお母さんを演じられていました。
運命を受け入れて生き抜くラヘルカにとって、ヴワデクの存在ってなんだったろうかと思いました。
愛情と憎しみの狭間の中で、死ぬことの方が容易かった時代。
それでも生きぬくラヘルカの強さ・・見事な女性だと思いました。

ヤクプ・カツ(藤側宏大さん)の場合
どちらかというと学級委員長タイプで真面目な彼。
彼の元にはアメリカに渡ったアブラム(采澤靖起さん)からの手紙が定期的に届きます。
ある日、兵士に捕らえら連れて行かれた先に居た男性を
何も知らずルィシェク(川辺邦弘さん)と認めたヤクプ・カツ。
実はルィシェクは、ズィグムント(沢田冬樹さん)とヘニェク(中村彰男さん)
ヴワデク(清水明彦さん)と共にソ連軍侵攻に対抗する地下組織を作っていたのでした。
ソ連軍に変わってドイツ軍が侵攻してくると、ユダヤ人への迫害が起こります。
率先してユダヤ人の迫害を行い始めるルィシェク達。
メナヘム(亀田佳明さん)から、身を隠すように勧められた彼が自宅を出たとたん
ルィシェク、ズィグムント、ヘニェク、ヴワデクと出会います。
彼らにイブラムから最新の手紙が届いたことを知らせようと思いヤクプ・カツの思いとは
裏腹に、彼らにとっては密告者として恨みの標的となるヤクプ・カツ
彼ら同級生たちに虐殺されてしまいます。

「生きることには意味がある」そう言っていたヤクプ・カツが一番最初に命を落としてしまう・・
人生の皮肉を感じてしまいます。
同級生を何よりも大切に思っていたからこそ命を縮めてしまったのかもしれません。
そんなヤクプ・カツを演じらたのは、岸田國士傑作短編集『明日は天気』
めちゃめちゃ笑顔が美味しかった(笑)無口な風呂番さんを演じられていました。

言葉・・言葉の洪水に溢れそうになるかもしれませんが
見逃すと後悔する作品になると思います。
彼らの汗と涙と熱に溢れんばかりのアトリエの空気感。
ぜひ体験してみて下さいねっ

5/18(金)~6/1(金) in 文学座アトリエ
by berurinrin | 2012-05-25 23:50 | 文学座観劇感想