文学座有志による自主企画公演・久保田万太郎の世界第9回公演・「坂部文昭一人芝居」

文学座有志による自主企画公演・久保田万太郎の世界第9回公演 
共同制作「坂部文昭一人芝居」   in 文学座アトリエ(3/26) 

作 久保田万太郎

『暮れがた』

演出 鵜沢秀行

浅草、三社祭の二日目。雨が降りそうなあやふやな天候夕方。
三味線屋さんが舞台です。
職人さんたちはお祭りムード。ご主人は寄り合いからお酒の席に流れていかれるようです。
留守を守る女房・おりゑさん(赤司まり子さん)の元へ、入れ替わりお客さんがやってきます。

お祭りの気分で、なんとも高揚しながらも二日目という、
気持ちの疲れというか余裕というか、祭りの終わりが近づいてくる一抹の寂しさとか
気合がありつつも、ぐたぁ~とした感じの男衆の匂いというか
体温が仄かに伝わってきます。
お祭りをバックに、下町の情緒が香る生活の一コマが描かれています。

ふっくらとして芯のある女主人おりゑさんは赤司まり子さん
着物姿の粋なこと・・美しいです。
どんな役柄もぴたっと嵌る素晴らしい女優さんです。
そんな赤司さんは『崩れたバランス』では、
雪の中を夫(岡本正巳さん)と、子育てを終え、
孫が生まれ人生を振りかえつつ歩く妻を演じられました。
子供のおみよちゃんにすっかり甘えられるお手伝いのおせんさんは、
増岡裕子さんが演じられました。
ふっくらした笑顔に鬘がとってもお似合いですね。
増岡さんは、『トロイアの女たち』滅亡したトロイアの悲劇の女たち・・コロスの一員でした。

おみよちゃんをおぶってお参りに行くおせんさんを
手伝うのは善次郎さんこと采澤靖起さんです。
今年、準座に昇格した采澤さん。とても綺麗な目をしています。
まだ着物に着られてる感はありますが、
これも回数を重ねていくうちに解決する問題だと思います。
きっと体が自然にしっくりくるもんだと思います。
次回作は、鵜山仁さん♪演出の(*^_^*) 『山羊・・・それって・・・もしかして・・・シルビア?
恵まれたスタートを後悔の無い様にチャレンジして下さいね
で、ぜひ采澤さんにご注目を~!!★

おりゑさんを「おばさん」と慕う祥太郎さんは、西岡野人さん。
以前は羽振りの良かった商売人のようでしたが、それは過去のこと。
ぽつり、ぽつりと苦労を語り」、好きなお酒を今まで我慢してして、
「お祭りだから」と、おりゑさんから勧められて頂く姿
「う~ん美味しいけど、いいのか自分?!でもしみるぅ~」と、葛藤しながら呑む姿
いいシーンですね。おりゑさんが、慈愛をもったまなざしが素敵でした。
今回は、なんていってものびくんの着物姿の美しくなった事に感動しました。
ここ最近は、久保田万太郎の会に毎回参加されています。
その成果がやっぱり形になって表れてくるもんなんですね(*^_^*)
劇団公演は『口紅~rouge~』の白塗りのチンドン屋さん以来のご出演。
次回のアトリエの会『にもかかわらずドンキホーテ』にご出演です。
観るたびにカッコ良くなってくる♪のびくんが楽しみです

お店に集う男衆は、源吉さんこと戸井田稔さん、美代蔵さんとこと岡本正巳さん
末吉さんこと木津誠之さん。
なんて贅沢な男衆たちの配置。台詞ではなく身振りやまなざしで情景が伝わってきます
穏やかで優しい雰囲気で犬派(笑)の戸井田さんは、自主企画『ピンクの像と7人の紳士』では
空き缶にたっぷりのお水を入れてのご登場(笑)紳士3を演じられました。
岡本さんは、『崩れたバランス』で赤司まり子さんのご主人を演じられました。
木津さんは『わが町』で、舞台となるグローヴァーズ・コーナーズの
歴史について語るウィラード教授を演じられました。

三味線の直しを依頼に来たのは、娘さん。可愛かったですねぇ鈴木亜希子さんです。
小銭入れからお金を出すしぐさが可憐でしたね。
あっこちゃんは、『美しきものの伝説』でサロメ女史こと
新聞記者の神近市子さんを演じられました。

女中さんは、金松彩夏さんです。
実は、金松さんについては、ちょっとまだわからなくて・・これからちゃんと見させて頂きます(><)

『一周忌』

演出 黒木仁

関東大震災後の浅草。
おきくさん(山本郁子さん)の元に川本さん(中村彰男さん)が訪ねています。
川本さんの死期が迫り病床にあったお兄さん(記憶がちょっとあやふや?!)の好物を
食べさせたいと、震災直後の物不足の中で苦心された話・・。
そこへ、お寺への行く為におきくさんの姉・おゑんさん(山崎美貴さん)が
迎えに来られます。
この日は、おきくさんのご主人の一周忌だったのです。

「うずらが食べたい」といわれ、苦心して食べさせたら
実は「ずずめ」で、食道楽だったお兄さんが
「うずら」と「すずめ」の見分けが付かなかったこと。と
でも見分けられなかったことで、兄の願いを叶えられたことの複雑さを語るのは
今は保険会社に勤める川本さんを演じられた中村彰男さん。
元は店を持つ商売人が震災により会社勤めとなった姿の居心地の悪さが
伝わってきます。
そんな彰男さんは、『ダーヴィンの城』不倫はするし、その不倫相手にDVしちゃうわ(><)
ちょっと怖かったニイミタケノリさんを演じられました。

ご主人の一周忌の当日に訪ねてきた川本さんの相手をされるのは、おきくさん。
山本郁子さんが演じられました。
自分を「すずめ」と表現したおきんさんの心情・・おとなしくて控えめなおきんさんの唯一の主張・・
郁子さんといえば『くにこ』のくにこさん(栗田桃子さん)のお母さん。
まさに温かくて優しい昭和のお母さん♪でした。
郁子さんの着物姿は、美しいですよね~。うんうん。
劇中、浴衣から外出用の着物に着替えるシーン。下着を見せることなく流れるように着替え
太鼓帯をするする~と、もう惚れ惚れしちゃいました。
着替えの手伝いをされる美貴さんの手つきも超自然!
美しいお二人の見せどころです。
あ~でもご自身は「まだまだなの」って・・・
おきくさんのお姉さんは、おゑんさんで、山崎美貴さんが演じられました。
おゑんさんは元芸者さんということで、粋な姉さん風でかっこよかったですね。
扇子の持ち方って色々あるそうで、手の角度とかあるそうですョ。
久保田万太郎さんの世界は、小物の所作も本当に細かいので
芝居だけではなくて、演技そのもの見どころ満載で、毎回とっても新鮮です。
そんな美貴さんは、『カラムとセフィーの物語』では、
セフィーのお母さんセレブなジャスミンを演じられました。
おゑんさんの旦那さまは、おきくさん贔屓の富蔵さん(笑)。人はこうまで笑顔を見せることが
出来るのでしょうか(笑)という位におきくさんに破顔されるのは関輝夫さん。
関さんは『くにこ』では「野ばら」を歌う校長先生他を演じられていました。


『草鞋をはいた』

作  福田善之

演出 鵜澤秀行

江戸で有名な鉄砲鍛冶職人が女性のことで、切傷事件を起こし
函館に逃げ、函館戦争に巻き込まれてしまいます。

エイコさんによる津軽三味線の音色と
坂部さんを挟んで、2面の切り絵によるさまざまな情景が加わって
紙芝居的なわくわく感と講談の迫力と、芝居のキレのよさ・・
あっという間の濃い1時間弱でした。
坂部さんというと『定年ゴジラ』では、企業戦士、各地の単身赴任で覚えた
様々な方言を使い分ける野村さんを演じられました。

この切り絵は、佐川和正さんの手によるものだそうです。
細やかで本当に綺麗でした。
ちなみにこの切り絵の照明のお手伝いは、中村彰男さん達でされたそうです。

終演後は、なんとなく自然な流れで、
いつもよく劇場で顔を合わせる皆さんとで文学座ファンの集いのような
親睦会のような、アットホームな楽しい時間を過ごさせて頂きました。
震災があって、演じる側、見る側・・いろんな考え、感想を交換できて
こんな時だからこそのとても貴重な時間を過ごせました。
こういう繋がりが、大事なのでしょうね

3/23(水)~27(日) in  文学座アトリエ
by berurinrin | 2011-03-27 17:00 | 文学座観劇感想