文学座アトリエ60周年記念シンポジウム『時代とアトリエ』その3

集客を考えるより空間を共有する場所・・・
東京は、世界で一番芝居をしている都市だと、小田島恒志さんはおっしゃいます。
その中でアトリエは、商業系と小劇場系が同居しあっていると
例えば、1982年鵜山仁さん訳・演出作ヴァーツラフ・ハヴェル作『プラハ1975』(112作品目)
を上演したというのがすごい!と小田島さん。
このハヴェル氏という人。当時は、反政府運動の指導者だったそうで、本国では上演禁止という
かなり過酷な状況下での企画だったと聞いたことがあります。
ちなみに鵜山さんのアトリエ初演出作品です♪

アトリエ60周年記念ということで
それぞれの作品の紹介を各演出家の方がお話して下さいました。
トップバッターは『トロイアの女たち』
演出は松本祐子さん。
「他者が自分より、良いものを持っていたら妬む」
「自分の子の方が可愛いと思った時点で争いが起こる」と、祐子さん。
なんと日常の中で争いの種が、撒き散らかされているんでしょうね。
お話は、まさに戦争に負けた敗戦国の女達が理不尽なままに翻弄されていく姿を描く作品ですが
祐子さん曰く「現代でどう響き合うか?きっと力強い作品になると思う」とおっしゃいました。

第二弾は『カラムとセフィーの物語』
演出は高瀬久男さん。
原題は「Noughts and Crosses」という、○×ゲームを意味してるそうです。
近未来のお話で、黒人と白人の人種差別。黒人が支配し、白人が奴隷という
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』がモチーフの作品だそうです。
人種差別が主流にありますが、「社会的アピールだけでなく、芝居の醍醐味がある」と高瀬さん。
差別など、どこから生まれるか?作品としては力強い想像力を要求されるそうです。

そこで、翻訳家の中山夏織さんがお話してくださました。
この作品は、本国では、中高生向けに絞られた作品だったそうです。
お話も2バージョンあって、最後まで仕上げられなかったという・・
シェイクスピアの現代版であり、彼らのスピードをどう表現するか?!
日本の中高生もそうですが、イギリスの中高生達も迷える世代なのかもしれませんね。
でもって衝撃作であるそうです。
一番大事なものを大きく捉える。
今の時代に必要な事かもしれません。

人種差別・・という事で、小田島さんから
以前『欲望という名の電車』をイギリスからのお客さまとご覧になったそうで
その時に、顔を黒く塗っている俳優の姿をご覧になって、すごく違和感を持たれたそうです。
でも日本人が演じているんですから、黒人の役であれば・・と思うんですけど
イギリスでは、そういう事はしないと。まぁ黒人の方がいらっしゃいますから・・
これも人種差別的要素を含んでいると思われても仕方ないことかもしれませんが・・

その流れで、小田島さんが翻訳された『GHETTO/ゲットー』
この作品は、ユダヤ人収容所での過酷な状況中でギリギリに生きる人たちのお話でした。
で、ご覧になった方が
「日本人はいつまで被災者的視点でみているんだろう・・」と言われたそうで
ちょっと作品が素晴らしかっただけに、ちょっとショックでもあったんですが
でも見方の違い、感じ方の違いに、面白いエピソードを伺いました。

第三弾は、『ダーヴィンの城』。
演出は、高橋正徳大演出家。
ロスジェネ世代とか就職氷河期とか、日雇い労働者や阻害されてネットに逃げ込んで
暴力に走ったり、秋葉原で起こった無差別殺人など
リアルが充実して、“リア充”というよくわかんない(笑)ノリ君ですが
小さな世界を守る為に戦う・・
まさに今の時代の諍いが、作家の鐘下辰男さんとノリ君のタッグで観れることは
本当にラッキーというか「楽しい話にならないでしょう」とゲストの鐘下辰男さん
ノリ君の世代と60.70年代のヒロイックな戦いをウチゲバ世代を同世代とか
様々な世代の中でどう対立していくかが楽しみだとおっしゃいます。

年齢層が90代から10代まで居る劇団は、日本には殆ど無いそうで・・そうですよね。
紀元前から21世紀の東京?!という3つの作品の時代設定。
演じる幅が80歳の中で、いろんな議論が出てくるのが楽しみであり
やはり作・演出が別々、もしくは翻訳あって
様々な視線がぶつかり合うことを楽しみにしていると高瀬さん。

以上で、レポは終了です。
なんか相変わらず上手くメモが纏まらなくてすみません。
最後の質問コーナーで、欧米の批評と比べて甘いのでは?と山口宏子さんに質問がありまして
山口さんからは、批判するには、筋立てをきちんと載せる責任があるし、
その為には、掲載する文字数が確実に少ないとおっしゃっていました。
そして10年後50年後を経て、誰かが過去を調べた時に記録として残る事を念頭に置いているとも
おっしゃっておられました。
わたしも微弱ながらも同意見でありまして
もし好きな俳優さんが現れて、ネットで調べていく内に、わたしのブログが引っかかって
その無責任なわたしの文章で、その方の心が乱されたら申し訳ないと、それはいつも
気にするように心掛けています。
改めて心します。

終了後は、金内喜久夫さんの音頭で決起大会が催され
アトリエにご出演される座員の方々と楽しい交流会がなされたのでした。
いやぁ濃密な時間でした。楽しかったぁ~!!

あ~参加したかったとおっしゃる皆様!!
まだまだアトリエ60周年記念のイベントはまだまだ続きますよ!!
by berurinrin | 2010-08-08 22:33 | イベント