『夏の夜の夢』シアタートーク<その2>

質疑応答が始まりました。

<ラストに舞台裏が見える演出に感動した。日本人は、昔からしゃべる事に抵抗感を持つ国民
だと思うので、演出的に難しくありませんでしたか?>

実際のシェイクスピアの原本の戯曲よりも、日本語訳は約3倍の文章が追加されてるそうです。
例えば、英語では「We(ウイ)」→日本語だと「わたしたち」というような言葉の長さ。
シェイクスピアの戯曲は、滑らかなリズムで語っているので
翻訳者は「わたしたち」を抜いて訳すことを考えたりするそうですが、
言葉を抜くことで意味がわからなくなったり・・いかに効率的に短くするか悩み所だとおっしゃいます。
(『夏の夜の夢』の)上演時間は3時間20分(休憩込で)ですが、本来は15分は短くなるそうで
演出時にカットするか、翻訳時に文章をカットするか?
本来、重要なんだけれども言葉を抜いて文章を短くするそうで
そうするとシェイクスピアの台詞は、ぼんやりと柔らかな詩的な感じになってしまうそうです。
が、実際の原文は、そうではなくて、はっきりとした押えるところは押えた文章になっているそうです。
これは、特にミュージカルの翻訳の時に大きな問題になるそうです。
音符の上に日本語だと、一言しか乗らない言葉が、英語だと一行入る場合があるそうです。
そうすると言葉を抜くか、もしくは音符を増やしたりして言葉を入れるか・・するそうです。
でもそうすると音楽の流れが変わってしまうこともあるそうで、本当に難しい問題だとおっしゃいます。
ところが翻訳家の岩谷時子さんとか天才の方は、
そのままに英語と同じくらいの情報量を入れられるそうです。

麻実れいさんのファンの方?!でしょうか?
<シェイクスピアの作品で、今後やってみたいものはありますか?>

『マクベス』、『ハムレット』、『タイタスアンドロニカス』と演じて来られた麻実さん
つい最近、劇中劇で『ロミオとジュリエット』のジュリエットを演じられたそうです。
「できることなら(『ロミオとジュリエット』の)ジュリエット!やりた~い(笑)
『アンソニーとクレオパトラ』とかやってみたいです」
麻実れいさんのクレオパトラ・・・とっても似合いそうですね。
「ジュリエット!」とおっしゃった時に、「じゃあロミオは、村井さん!」とケアードさん(笑)
実際、ジュリエットを舞台で演じる女優は、大人の女優が定番らしいです。

10時から当日券を並んで購入してご覧になった方で
『レ・ミゼラブル』の初演のプレビューからご覧になっていらっしゃるケアードさんのファン?!
のお客様から<白い衣装に黒い靴に違和感がある>とのご指摘がありました。

ケアードさんからは、
妖精のイメージは美しい・・・だけど、この森の中は、本来は夏のイメージではあるけれど
自然界が狂ってしまっているので、水溜りやぬかるんだ場所があるし、
羽根がある妖精といえどもダンスのシーンもあるので地上を歩く為に、ブーツにしたそうです。
妖精といえども足が汚れちゃうのは嫌ですもんね★
とはいえ、質問されたお客さまは、やっぱりちょっと納得がいかないようで
ケアードさんがムキに言い返すパフォーマンスが面白い~
靴といえば、シェイクスピアは、自分の劇団の役者達に特別な靴を履かせていたそうです。
喜劇の場合は、木靴に布を張ったものを履いて
悲劇の場合は、柔らかい皮製の靴だったそうです。
なので、観客は、役者の足音で悲劇か喜劇か理解できたそうです。
面白いお話ですよね。
舞台は木製なので、音が響くのを抑える為に木靴に布を張っていたそうです。
ケアードさんが、ぼそっと日本語で「(『夏の夜の夢』の妖精たちを)原宿の妖精たち(笑)」

<チョウソンハさんのパックがハマリ役ですが、チョウさんとのめぐり合わせの経路は?>

実は、長いことパック役を探しておられたと、ケアードさんがおっしゃいました。
過去にも色んな解釈のパックがいたそうで、
中でも日本では女性がパックを演じていたこともあったそうです。
が、それは間違いの解釈だとおっしゃいます。
なぜなら「パックは妖精ではないから・・」
本来は、悪魔や小鬼に近い・・・どちらかというと迷惑な存在なのだそうです。
あ、でもそういえば、劇中でもパックと妖精たちは、一線分けた存在でしたよね。
名前も季節の名前や森の恩恵に繋がる名前じゃないし・・
「身体性を持って、イマジネーションも持っていて、フィジカルに動けて、ころころ変わる人
と、同時に社会を皮肉な目で見る側面も持ち合わせる人物」とおっしゃいます。
ケアードさんは、チョウさんを日本人で初めてそれらが出来る人物だとおっしゃいます。
チョウさんとの出会いは、オーディションだったそうですが
最初の印象は「気持ち悪い・・」(笑)
でも、チョウさんの初めの2行の台詞(動きではなくて)を聞いて決められたそうです。

チョウさんから
「どんな台詞でもいいからパックの台詞を覚えて来い」と言われたので
「竜の・・」を言ったら、これはシェイクスピアの重要なシーンだと
(ケアードさんに)文句を言われたそうですが
ケアードさんが英語でオーベロンの台詞をおっしゃり、二人で回りながら、台詞を言い合いしたそうです。

そのいきさつを「鵜山さんは、ご存知ですか?」と堀尾さん
「知らない(笑)」楽しそうに聞いていた鵜山さんです。

「(オーディション)楽しかった」とおっしゃるケアードさんに
「エアロスミスのスティーブン・テイラーのモノマネをしたから決まったんだと思う」
と、チョウさん。自ら墓穴を掘ったようで(笑)会場からは、拍手が・・・
チョウさんは、稽古場で皆を観察しておられるようで、演出家はモノマネされないように
お行儀良くしてなくては・・・と、ケアードさん(笑)

「某公演で『リア王』を観た時、冒頭のシーンで3.4分台詞を俳優が忘れてしまった場面に
遭遇した事がある」とおっしゃるお客さまからで、村井国夫さんに
<どうやって台詞を覚えるのでしょうか>

同じ新国立劇場で公演された『コペンハーゲン』(うふ♪鵜山仁さん演出でしたね!!)では
5ヶ月前から一日一回は、台本を読むようにされていたそうです。
この作品も3人芝居で、もんのすごい台詞の量でしたもんね!それも専門用語がいっぱいの(笑)
『夏の夜の夢』の初演時、江守徹さんの代役で村井さんが引き継いだ為、稽古期間が短くて
消化できない部分があったそうで、公演期間中でも一日一回は、全体の台本を読んでから
自分の部分を読み直すそうです。

「台詞を覚える方法というのがある」と、おっしゃったのはケアードさん。
稽古場で覚える。
舞台で台詞を忘れるのは、表面的な言葉でしか台詞を覚えていないから・・
役者がその台詞を言う時に、頭で考えていれば、もし忘れてても
似たような言葉が出てくるはず。思考を抑えておくのが大事だとおっしゃいます。
特に、ロングラン公演とかをやっている時に、起こりやすいらしくて
ちょっと違う事を考えてしまうと、忘れちゃうそうで(笑)常に緊張感を持つ事が大切だそうです。

村井さん「65(才)ですから、ヘビーですよ(笑)」

そこで、ケアードさんが、イギリスの名優・ピーター・オトゥール氏のシェイクスピア作品に
出演した時の台詞を忘れた時の対処の仕方を披露して下さったのですが、
言葉が早くてメモが追いつきませんでしたm(_ _)m

<アラフィー(笑)の星、麻実れいさんの常に日頃心掛けている事はなんでしょうか?>

「何事でも、食事もバランスよく暮したいと思っています」と、おっしゃる麻実さんです。
ストレッチとウォーキング、どうしても代役を立てる事は不可能なので
発声は日常欠かさず行なっておられるようです。

初演『夏の夜の夢』をご覧になったかたから、チョウさんに、<この人は、人間なのかな?と思った(笑)
初演の時より運動量が減っているのか?>と、いう質問でした

そう思って頂けると嬉しいと、チョウさん。
ご自分は運動していないといられないので、実際は、前回の倍以上消費量だそうです。

村井さんに<ダンスシーンは如何でしょうか?>と(笑)

「どうでもいいダンス(笑)よせばいいのにねぇ(笑)」とても楽しいとおしゃしゃる村井さんです。

最後にご出演者の方々が一言づつおっしゃいました。
チョウさん「まだまだ先があるので、どういう風に落ち着いて良くなるか・・」
麻実さん「この妖精の役を楽しみにしています。皆さんと一緒に素敵な夢を見たいと思います。」
村井さん「千秋楽を迎えるのがつらい・・いつまでも続けていたいし、素敵なカンパニーというか
皆が一つになって本当に素敵な仲間であり・それが最後の日を迎えることが辛い」
村井さんの言葉は、一言一言区切るように丁寧にゆっくりおっしゃいます。

すると堀尾さんが、鵜山さんに「再演も含めて、十分ね考えられますよね?!」
やっと久しぶりにお声が聞けた鵜山さん♪わーいわーい
「終わってくんないと、次が出来ないので(笑)」と
「僕、しゃべっていいですか?」と鵜山さん♪どーぞどーぞいっぱいしゃべって下さい!!ってうふふっ
「さっき、ジョンさんもおっしゃっていたけれど、死んだ人たちというか、
ここにはいない人たちの言葉を聞ける楽しみというのが、芝居の大きな楽しみの一つだと思いますので
そういう意味じゃ再演も心掛けますけど、おそらく再演のシステムとか
お客さまとの関係とかそんなにも成熟してない劇場かもしれないので、そういうことを
心掛けたいと思いますので、お客さまも何度も何度も観て頂きたい」

セットが壊されない限り、再演も夢じゃない・・堀尾さんが、村井さんにセットが無事に保存されているか
チェックをしたらどうですか?と(笑)
すると村井さんが
「最後にわかるんですよ。壊してるなぁとか、大事に運んでいるな(笑)って、わかるんですよ」
と、未練たっぷりな村井さんに、鵜山さんが
「村井さん、そこそこで止めて頂かないと、この秋に『ヘンリー六世』があるので(爆)
ねぇ、差し障りがあるかもしれませんからね」(><)
鵜山さんの言葉に、小さく「ハイ」と村井さん。堀尾さんからも「切り替えなくっちゃね」と
ちょっと寂しそうでしたね(苦笑)

最後に、ケアードさんから
丁度この日は、高校生達の団体がご覧になっていたのですが
「高校生達が、楽しんで観てくれた」
もし、シェイクスピアが面白いと思ったら、『夏の夜の夢』は、初期の作品で、次に書いたのは
『ヘンリー六世』なので、「ぜひ観てください!!」

他にも、アメリカで俳優をされてる女性から、『リチャード三世』の公演するために
三ヶ月前から、皆でテキストを読み込んで作っていくということで、演出にたいして質問が
あったりしました。ケアードさんは、一つ一つの質問に本当に丁寧に返事をされます。
最後は『ヘンリー六世』の宣伝も!!いい方だぁ~
村井さんが、おっしゃったように素敵なカンパニーなんだなぁと、ほのぼのと伝わってきました。

以上で、シアタートークのレポートはおしまいです。
秋の『ヘンリー六世』本当に楽しみですね(^_-)-☆
でも、その前に・・・7/2(木)に初日を迎える『鵺』!!うきゃうきゃ鵜山さん演出もありますよぉ~!!
by berurinrin | 2009-06-12 23:28 | イベント