東京デスロック『その人を知らず』

東京デスロック『その人を知らず』 in こまばアゴラ劇場(12/28)

作   三好十郎
演出 多田淳之介

片倉友吉さん(夏目慎也さん)は、人見牧師(佐藤誠さん)から洗礼を受け
キリスト教徒になりました。
ところが時代は、太平洋戦争まっ只中「なんじの敵を愛せよ。殺すなかれ」という
聖書の言葉を誠実に守ろうとする彼は、出征を拒否し続けます。
人見牧師は友吉さんに翻意を促しますが、友吉さんは
拒み続けます。牢獄に繋がれ酷い拷問を受けながらも意思を変えることが出来ません。
その為、非国民とされ友吉さんの家族まで迫害の対象に・・。
そして戦後、友吉さんは反戦の英雄となります。

今年の芝居納めとなりました。
以前ご紹介した、三好十郎さんの没後50年ということもあって
三好さんの作品を観たいなと、鵜山仁さん♪きゃー♪が過去に演出をされた作品だし
征矢かおるさんがご出演だし・・と、いう事で観たい、いや観なくっちゃ。
本来は家の事情で観れる状態ではなかったのですが、
無理を言っての観劇となりました。本当にすみません(とりあえず謝って・・)

えーっと、率直に言うと、え、え、え、えっと驚いて
その後には、がつーんとがつーんと、がつーんと衝撃が頭を打ち込んでいきました。
なにしろ舞台のアクの強さと俳優達のエネルギーの吐き出し方がハンパじゃなくて
言葉は三好十郎さんの本をそのまま忠実に使われているのでしょうが
それ以外は、すべて全く次元を越えた新たな世界の中で起こっているような気がしました。
ちょうど、スカパーのシアターチャンネルで寺山修司さんの作品の特集をやっていて
その当時の寺山さんの世界を彷彿とさせるような、同じ香りがしました。
とはいえ、寺山さんの舞台を生で観た事がないので、偉そうな事はいえませんが
でも、好き嫌いと好みの問題でなく、観ておいて良かったなぁと思いました。
始終、頭は混乱しっぱなしでしたが(笑)

磔にされたキリストをイメージさせるように、友吉さんは、始終両腕を竹刀で
括り付けられっぱなし・・
体の自由が利かない身でありながらも、穏やかに語る言葉は
戦争中は、信念による自由な心を持ちながら、自ら不自由な生きた方を仕いられ
戦後派は、周りの人からの意識に縛られ自由が利かない身になってしまったの
でしょうか?戦後、両腕を縛る布が、日・米の国旗になっているのが目を引きました。
マイクが空爆?神様?の象徴になったり、爆撃が赤い玉とお菓子とか
並べた机の上でひしめきながら国家を語る俳優達の世界がいかに小さなものかとか
ユニークを越えて怖くなったりもしました。

文学座からは、征矢かおるさんがご出演です。
私にとって征矢さんは、ユニセックス的な雰囲気がとても好きで
清潔感があって素敵だなぁと、いつも思っています。
今回もアンサンブルを中心に男女問わず演じておられますが、全く違和感がないのです。
逆に素のまんまの女性が男性を演じる事を演出の意図としているのかな?と
思う配役の方もいらっしゃる気もしないではないのですが・・
どう解釈していいのかわからないのですが、わたしは征矢さんの声や動きに
やっぱり惹かれました。

12/26(金)~1/5(月)まで in こまばアゴラ劇場
by berurinrin | 2008-12-29 20:53 | 観劇感想