新国立劇場『山の巨人たち』シアタートークその2

夢の中で首吊り自殺を図る植本潤さんは、舞台の究極の八百屋セットのお話。
太鼓橋風の作りなので、下(舞台前方)に行けば行くほど、
急斜面になって足場が悪く見るからにキツイので、役者は上に上に(緩やかな傾斜)
行きたがるそうで、立場上(年齢的に若い?!)、下で下で演技していたら、
そのまま立つ位置が採用されてしまったそうです。

その反対に上で楽していると笑っておっしゃるのは、いつもかばんを抱えている久保酎吉さん。
「わからないので質問しないで下さい」・・面白いお方です。

背が高くて、いつもドゥッチョ・ドッチャ(久保酎吉さん)を後ろから抱え込んでいる
背の高い細見大輔さん。
劇中に紙切れを高々と見せているのは何だろう??と思っていたら
実は恋人の写真だったそうです。恋人を探してるという設定らしいです。
「何で?(恋人の写真を見せてる)それをやっているか?
と、聞く前にラヴォータンさん帰っちゃった(笑)」
細見さんは、イルセ似の恋人と勝手にイメージして演じているそうです。
植本さんと逆に上の緩やかな斜面にいる事が多い細見さんですが
劇中に不思議な雰囲気をかもし出す人形を担当されているようで
それもアコーデオンを持ってる人形を動かすのが大変で、あのアコーデオンは
中身はとっているものの、本物なのでけっこう重いそうです。
そしてラストのイルセの人形も細見さんが支えていて、
それも後ろから顔(笑)で支えておられるそうで大変だ。と、おっしゃっておられました。

当初参加の予定が無かった田根楽子さん。
「なんで急遽参加されたんですか?」と堀尾さんからの問い掛けに
「いやぁ、麻実さん一人じゃ可哀想かなぁと思って」優しい田根さんです。
私は田根さん演じるズグリーチャがとても好きです。

ここからは質問コーナーになっていきました。
「あらすじには、イルセが狂気と正気の間を行き来している?とありましたが
本当にそうなのか?狂気という感じがしない」
という質問に対して、麻実さんは
「まだら狂気」という言葉で話されました。
今で云う“うつ”状態。詩人の詩によって精神不安定になったのではないか。
身振りでそういう(狂気めいた)仕草を注意して演じておられるそうです。

「(ラストで)イルセを人形にした意図は?」
「今回演出ではなくて、演出補です(笑)」とおっしゃる鵜山仁さんが、
ラヴォーダンさんの代弁をされておられます。
台詞の中に「ぼろぼろの人形・・」とあるので、そこからイメージしたんじゃないかと
鵜山さんご自身、獅子舞が子供の頃とっても怖かったそうで
後ろにちゃんと人間が控えてるからこその怖さもあるのではないか?!と
これって、すごくわかります。
わたしも子供の人形劇が怖くて怖くて・・人形だけだと動かないのが理解できるので平気。
でも後ろに人がいると、突然人形が歯を剥いたり、動き出したりと
想像のつかない動きをしますよね。それも不自然な・・確かに不気味な怖さを感じます。
そのイルセ人形の登場するラストの字幕のシーンは、新国立オリジナル初台バージョン★
なんと稽古の現場で考えられたそうです。
新国立劇場の5階にある情報センターに『山の巨人たち』の台本が閲覧できるように
なっていますが、途中から白紙になっているんです。なんでかな?って
この白紙の部分が字幕の場面・・。初台オリジナルってことなんですね。
終幕の部分は、演出家によってまちまちな演出をされているそうですが
中には、ピランデルロの息子という名の役者が出演するバージョンも上演されたそうです。

「百一天使って?」これは、百一天使といえば、田根楽子さんにとマイクが渡されましたが
「そんなぁ知らない」とおっしゃり爆笑。
鵜山さんが笑いながら「きっと、百で収まらない(多分普通の人でない?型にはまらない?!)
人たちの守護天使だからこうなったんでは?」と・・あ~なるほど(*^_^*)

芝居よりも映画に詳しいお客様が「何かしら『旅芸人の記録』や
ギリシャ悲劇に繋がる感じがする」とおっしゃると
「きっとテオ・アンゲロプロス(『旅芸人の記録』の監督)が、(『山の巨人たち』)
パクったんじゃないか?(笑)」と鵜山さん。
話は映画に移って、ラヴォーダンさんがことあるごとに
よき時代の映画が好きで、フェリーニが好きとおっしゃっておられたそうです。
特にフェリーニのチープさがお好きだそうです。
「メイク・・・怖かったでしょう(笑)」と田根さん。
メイク、髪型とすべて衣装のブリジット・トリブイヨワさんのからの指定があったそうです。

「海外の演出家との違いは?」という質問に対して
「平(幹二朗さん)にいっぱいダメ出しすることかなぁ」
「(ダメ出しで)同じこと僕が言ってもダメ(笑)」鵜山さん
「平さん、すごく素直だったよね」田根さん。
もう、皆さんぽんぽんと、ざっくばらんに話が弾んでいきます。
「偶然、平さんと二人になった時、平さんが「僕、下手かなぁ・・」って」手塚とおるさん。
「ラヴォーダンさんて、すごい神経質だよね。
(他の役者に)ダメ出し中に、音を立てたり、ちょっと話したりすると目線が来る(笑)」田根さん
「それは(田根さんの)声が大きいからだよ(笑)」と鵜山さん。
平さんが欠席でしたが、質問が集中したら答えられない(笑)とおっしゃっていたそうです。

そこで、堀尾さんが
「動きはいいとしても、微妙な台詞まわしとかの演出は?」と
みなさん一斉に「それは鵜山さん(笑)」
ラヴォーダンさんが何日か不在で、その時には鵜山さんが演出をされたそうですが
「これ何とかしなきゃ。と、思う部分は(ラヴォーダンさんと)一緒なんだけど
やり方が180度違って(苦笑)」鵜山さん
「かえって2度手間でした(爆笑)」植本さん

「巨人とは?」という質問に対して
皆さんそれぞれ違う回答で、観客とかコトローネさん達を追い出した人たちとか
この芝居を観に来ない人達とか・・
中でも面白かったのが、田根さん「リーマンブラザーズ(笑)」
「だって、自分たちのわかならい所でなんかやっちゃって世界をひっちゃかめっちゃかに
しちゃったじゃない」
おおおっと、納得してしまいました。

この橋のセットの何で出来ているか?と構造を質問されたお客さまがいて
舞台監督の藤崎遊さんが、材質の説明をして下さったり
次の仕事の為、欠席だった田中美里さんが急遽、お顔を覗かせて下さいました。
田中さんの為に椅子を譲って、つつつっ、と後ろに下がって
橋の欄干の上にちょこんと座った鵜山さん♪かっこいい(*^_^*)
それを見て堀尾さんが「どこに座っているんですか(笑)」

彼らの会話のテンポや鵜山さんへの突っ込みなんかをみていると
すごくいい座組み、プロダクションなんだなぁと感じました。
作品が不可解で不思議なだけに、稽古場ではきっと沢山の時間を使って
素敵なコミュニケーションがとれたのではないでしょうか?!

長々と書いてしまいましたが、楽しんで頂けたら良いのですが・・・
あくまでも勝手な解釈だらけなので斜め読みでお願いしますm(_ _)m
あ~また『山の巨人たち』観たいです。
でも、これから今まで好き勝手にしていた自分の時間が取れなるのが必須。
観劇の量が激減することは確実・・・今は、手持ちのチケットでガマンガマン(><)
by berurinrin | 2008-10-31 23:11 | イベント