こまつ座第117回公演・紀伊国屋書店提携
 『化粧』                              in 紀伊國屋ホール(4/29)

作   井上ひさし
演出 鵜山仁
美術 堀尾幸男
照明 中川隆一

10日後には取り壊しになるという寂れた感じが漂うこの小屋。
この「五月座」の座長であり看板女優の五月洋子(平淑恵)さんが、
むくりと起き上がり、これから上演される出し物『いさみの伊三郎』の
伊三郎に変身する為のメイクに取りかかります。

久しぶりの劇場…
思わず紀伊國屋ホールの香りを感じて深呼吸。
初めて淑恵さんの『化粧』を拝見したのは2011年。
再演、今回の再々演がファイナルとうかがって
気持ちを奮い起こして劇場に向かったわけでした…
なんか席に着いたらなんてことはなく
意外とあっさり気持ちが整っちゃうもんなのですね…不思議です

時に、五月洋子さんという実像なのか、幻なのかと
その時折、自分が感じたまま振り子のように思い巡らせていましたが
今回は、実像に一票(*^_^*)
洋子さんの心の動きに反応して、ブルトーザーやシャベルカーなどなどの
工事現場のような異音が共鳴してくるような、雑音が共鳴するなんて・・んんん?!
面白い!!

聞き逃しそうな音が、とてつもなく大きな存在になって
洋子さんを潰しちゃいそうな、ちょっとしたホラー
ひとつひとつのささやかな動きや着物のさららっとした衣擦れやお茶を飲む音だったりが、
流れるように洋子さんにまとわりついて絡み付いて、
ラストが蜘蛛の糸のような、お互いの名前を呼びながら
その先の見えないアンバランスな感覚と
客席とのせめぎあいというか、綱引きというか
どれもなにもが無駄なものがなく、砂をさらうように細やかに見えないものさえ
五月洋子を浮かび上がらせる見事なまでに…
素晴らしい舞台でした。
美しい舞台でした。
いい舞台でした。
楽しい舞台だったなぁ…
…また観たい(ポツリ)

ファイナルなんて本当にさみしいですが
平淑恵さんの五月洋子は、しっかり私の心に刻みました!
いつか『好色一代女』とか拝見したいなぁ~
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4/25(火)~30(日)まで  in 紀伊國屋ホール 



# by berurinrin | 2017-05-02 15:17 | 観劇感想

生誕150年正岡子規展 子規をつなぐ②『子規 最後の一年』
                           in 神奈川近代文学館(4/22)

子規作「仰臥漫録」「病牀六尺」漱石への手紙、絶筆三句 他

神奈川近代文学館で開催中の正岡子規展の一環で
この日は、瀬戸口郁さんの朗読会が開催されました。
たぶん、瀬戸口さんがセレクトされたであろう
正岡子規さんに関する様々なエピソードや自身の作品11篇を
都度、折々の子規さんの状況や時代の解釈を織り込んで下さって
約90分の朗読会でした。

情けない話…正岡子規さんについて、ほぼ無知な私…
食いしん坊万歳!』も拝見しておりませんでした(><)
なので、瀬戸口さんの体から発せられる姿、声が、私にとっての正岡子規さんとなって
ふわっと浮かび上がってくるのです。
正岡子規さん没後に、友人であった夏目漱石さんから語られる正岡子規像。
ずーずーしくて茶目っ気があって、愛すべき存在の子規さん
けれど実在の子規さんは、幼い頃より病弱で、結核にかかり
脊椎カリエスという恐ろしい病と付き合いながら、短い一生を生き走る…
自虐ネタのように、自分の現状をコミカルに言葉にしてしまう
その豪快さとしたたかなおおらかさに魅力されてしまいます。
けれど『病牀六尺』の中から、繰り返される
「誰かこの苦を救うてくれる人はあるまいか」
「誰かこの苦を救うてくれる人はあるまいか」
「誰かこの苦を救うてくれる人はあるまいか」
瀬戸口さんの絞り出す言葉に絶句してしまうのでした。
素晴らしいセレクトの朗読会でした。
今もまだ瀬戸口さんの言葉が、耳に胸に響いています。

朗読会が終わった後は、展示会を拝見させていただきました。
ちょうど、劇団の編集部のTさんとご一緒させていただき
贅沢にも解説をしていただけで(*^_^*)『食いしん坊万歳!!』の映像が流れる展示会で
想像と妄想が交差する中、目の前に正岡子規さんの生きた証の展示物の多さに
これまた大興奮、贅沢で素敵な時間を過ごすことができました。

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実は、この作品が1年5か月振りの観劇でした…
まだ落ち着いて語れませんが、愛猫りんりんを病とわたしの不手際で
亡くしペットロスに…
不思議と今まで大好きで大切にしていたものが、ぱぁ~と色あせて
手からこぼれていくような感覚でした。

15年前にりんりんと出会った、里親の会で
2匹の猫を引き取り、我が家の家族となりました。
先住猫の茶りん君を含めて3匹。とてもにぎやかです。
また猫たちの話は改めて…


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# by berurinrin | 2017-04-24 23:08 | 観劇感想

劇団銅鑼公演vol.47『父との旅』in 俳優座劇場

作  青木豪
演出 磯村純

桜の名所といわれてる・観光スポット桜山を有する温泉地。
この小さな旅館を馴染にしていた父・田渕鶴吉さん(山田昭一さん)が
ある決意を秘めて、すでに独立してる子供たちを呼び寄せての温泉旅行。
ところが、次から次へと騒動を持ち込む子供たちに父の思いとは程遠い旅行と…

蕎麦屋を営むお父さんは癌宣告を受け、手術の前に家族旅行を思い立ち
そこで自分亡き後のお店やら遺産相続についての話をしたいと計画が…
ところが娘婿・野堀賢介さん(三田直門さん)が入浴中に過呼吸で倒れたことを発端に
旅行に来ていたカップル(鈴木啓司さん、福井真紀さん)を巻き込んで
長女・西川和子さん(永井沙織さん)の夫・康平さん(館野元彦さん)の浮気疑惑に
跡継ぎの末っ子長男・田渕礼王さん(木下昌孝さん)が、勝手に蕎麦修行を止めていたとか
なんかわらわらして、お父さんおちおち病気で落ち込んでいられない状況に
いい大人が、どんどん子供になっていく姿は、とても微笑ましいもので
とはいえお父さんも意外とマイペース(^^)/

私たちの家庭でも大なり小なり問題抱えていると思います。
うちなんて大問題だらけですからっ
でもね。問題を抱えながらも明日も明後日も昨日と同じ日常を生きていくわけで
自然に解決していくことと、いかない事と天秤に掛けながら
常に頭の片隅に残しつつ、また新たな問題を抱え込む感じがします。
誰が悪いとか、答えを出せばいいって事でもないし、結局、仕方ないもんは仕方ない。
で、このお芝居
そんな昨日から続いている光景が、また明日に続く日常を感じることができる。
右往左往している日々の生活してる匂いが伝わってくる気がするのです。
一つの家族を温かく見守る観客がそこにいる
問題は解決していないけど、それぞれに光が差していて
それが救いとなって、もしかしてだけど
私たちの生活の中にもその光のきらめきが伝わってきた気がします。
なんか、自宅にお土産買って帰っちゃったし
久しぶりに穏やかな優しい時間でした。
心に寄り添える素敵なお芝居でした。

初めて劇団銅鑼を拝見したのは、今回と同じ青木さんと磯村さんのタッグで
上演された『流星ワゴン』。これが鑑賞会の例会作品となり担当させて頂くことになりました。
久しぶりの青木さんは、相変わらずキラキラな瞳を持つ面白い作家さん。
今は人気の大作家になってしまったけれど、あの頃と同じにほのぼのした空気感は変わらないですね。
「当時、猫のエコバックを持ち歩いていましたね」ってお話ししたら
「今でも持ってますよ」ってほら(笑)ホントだ~(#^.^#)
そんな『流星ワゴン』から劇団銅鑼とは深く濃いお付き合いをさせて頂いております。
なんか、とても元気で前向きでみんなで楽しみましょう!みたいなワクワクな集団。
その後に、まぁ、とりあえずのんどこ!って
本当にフレンドリー
おかげで今回も素敵な出会いと青木さんとの再会がありました。
呑みながら芝居の感想を語れるのは、本当に楽しいです。
なかなかそういうお誘い機会を作ってくれるところってないので
私的には、いつでもウエルカムなのですがね。
楽しくてついつい本音で話しちゃう。
で、良いお芝居を観て、美味しいお酒を飲んで、至福の一日を過ごしたのでした
実は、この日は、お芝居の前にもう一つイベントがありました。
それはまたのお話で(*^_^*)

2015/3/18(火)~3/22(日)まで  in 俳優座劇場
















# by berurinrin | 2015-03-22 10:54 | 観劇感想

3月~の主な外部出演

★今井朋彦『三人姉妹』3/5~15シアターBRAVA!(キョードーインフォメーション06-7732-8888)
★沢田冬樹『詩人の家』3/5~8座・高円寺1(後報)
★金内喜久夫、原康義、瀬戸口郁『十二人の怒れる男たち』3/25~3/31俳優座劇場(俳優座劇場03-3470-2880)
★西川信廣(演出)、荘田由紀『さくら色おかんの嫁入り』3/20~23三越劇場(三越劇場0120-03-9354)
★山谷典子(作)、山谷典子、田中宏樹『闇のうつつに我が我かは』3/28~4/5サイスタジオコモネAスタジオ(華のん企画03-5967-1217)
★森さゆ里(演出)、鬼頭典子『トーマの頃を過ぎても』4/15~19中野ザ・ポケット(
pal's Sharer)
★秋乃桜子(山像かおり)(作)、松本祐子(演出)、山像かおり『星の塵屑ペラゴロリ』3/11~15下北沢ザ・スズナリ(椿組03-302-1350)
★角野卓造『田茂神家の一族』3/7~8福島テルサFTホール(福島テレサ024-521-1500)3/13~29紀伊國屋サザンホール(劇団東京ヴォードヴィルショー03-3227-8371)
★上村聡史(演出)、永川友里、木場允視『マシューホール』3/6~11恵比寿エコー劇場(日本劇団協議会03-5909-4600)
★鵜山仁(演出)、大原康裕、川辺邦弘、植田真介、荘田由紀『小林一茶』4/6~29紀伊國屋ホール(こまつ座03-3862-5941)
上記作品東京公演のみ公演文学座支持会・パートナーズ倶楽部会員特別割引があります。詳細→こまつ座 TEL03-3862-5941へお願いいたします
★小林勝也『漂白』3/20~30吉祥寺シアター(オフィスコットーネ03-3411-4081)
★早坂直家(構成・演出)林秀樹、早坂直家、岸槌隆至『で.え.く』3/27~29浅草・木馬亭(で.え.く事務局)
★斎藤志郎『パパアイラブユー』4/15~4/20博品館劇場(SETインフォメーション03-6433-1669)
★鵜山仁(演出)、清水明彦『バカのカベ』4/24~5/3下北沢本多劇場(加藤健一事務所03-3557-0789)
★栗田桃子、亀田佳明クライムス オブ ザ ハート4/9~19赤坂レッドシアター(地人会新社
03-3354-8361)
★小林勝也『嵐が丘』5/6~26日生劇場(チケットホン松竹0570-000-489)
★鵜山仁(演出)『廃墟』5/29~6/1文化座アトリエ、6/7佐賀文化会館、6/12~23東演パラータ(劇団東演03-3419-2871)

*お問い合わせは( )までお願いします
# by berurinrin | 2015-03-09 23:10 | 外部出演

舞台芸術学院ステージアーティスト科6期卒業公演『キングオブハーツ』
                         in 舞台芸術学院内シアターTAC(3/7)

脚本 Steve Tesich
作詞 Jacob Brackman
作曲 Peter Link
翻訳 勝田安彦
訳詩 山内あゆ子・勝田安彦
補訂 鵜山仁
演出 高橋正徳
美術 乘峯雅寛

第一次大戦下のドイツ軍に占領されたフランスの田舎町・デュタン。
ドイツ軍とアメリカ軍が対峙している中、翌日には休戦条約が実行されることになります。
そんな中、この町にドイツ軍が爆弾を仕掛けられたことがわかり
一人のアメリカ軍人二等兵ジョニーが爆弾を見つけるために、この町に足を踏み入れますが
すでに住民たちは避難をしており、残ったのは聖アンナ精神病院の患者たち。
彼らは、誰もいない町で戦争をよそに楽しげに集っていました。

美術は、乘峯さん。
舞台にデコレーションケーキのような段差のある、回り舞台がでーんとしつらえ、
これが奈落があったり、一部階段が作られて、回す角度によって様々な場面に変化しています。
ビック箱みたいで、とても面白い仕掛けです。
客席には出演者の保護者の方が大半を占めつつ、卒業生らしきかたや若い人たちも
その中には、鵜山さんも(^^)/

ここ何年か続けて鵜山さんつながりで
拝見させていただいてる舞台芸術学院の公演です。
今回は、文学座の大演出家(^^)/ノリ君こと高橋正徳さんが演出されました。
とはいえ、鵜山さんもこの公演に深くかかわっておられたのでした。
それまでも、舞台で歌ったり踊ったりとお芝居の中でのシーンの一つとして拝見したことは
ありましたが、今回はザ・ミュージカル。
なんか感動した(^^)
なんかまだまだ足りないよちよち歩きの彼らですが
あの豊かな表情にはもう太刀打ちできない。
ひとりひとり今を懸命に演じて生きている姿は無垢なものだし
そこには計算がみえなくて、ただただ舞台を楽しんで演じてる姿しか目に入らない…
そんな彼らを目のあたりにしてしまうと、愛しくて可愛くて、ぎゅってしたくなっちゃう
目頭がじわっ~ですよ。
本当にみなさんキラキラで素敵すぎる!
力強いパワーを浴びて、また明日からの元気をもらいました。
卒業おめでとうございます
いい舞台をありがとうございました
夢を叶えられますこと、夢に向かって頑張ってくださいね
なんにでもなれます無限大の力で(#^^#)

この学院のことは、あまりよく知りませんが
雰囲気は彼らを通じて感じることができます。
清潔な校内。とても風通しのよさを感じるのは卒業生、後輩たち、職員や先生たちとの
深い交流があるんだろうなぁ~
もし、自分に子供がいてショービジネスの夢を持っていたら
まずはこの学院を目指してもらえたら安心できそうな気がします。


2015/3/5(木)~8(日) in 舞台芸術学院内シアターTAC









# by berurinrin | 2015-03-08 22:11 | 観劇感想