TPT『醜い男』

TPT『醜い男』 in BankART Studio NYK(3/23)

作 マリウス・フォン・マイエンブルク
訳 松岡泉
演出 トーマス・オリヴァー・ニーハウス

レッテ(池下重大さん)は、この日まで特別に自分の顔について気に留めた事がありませんでした。
ある日、上司(小谷真一さん)から、その顔について指摘をされます。
そして妻ファニー(武田優子さん)の視線が、いつも自分を避けていたことに気づき
整形手術を受ける事を決断します。
彼は、自分の唯一のモノを捨て去り、この世の中の一番「美しい」顔を手に入れます。

新国立劇場から発信された、シリーズ・同世代[海外編]の第一弾は
ドイツ現代演劇『昔の女』でした。怖かったですねぇ~面白かったですねぇ~
ということで、ドイツ文化センターでのイベントやシアタートークなど盛り沢山な企画があったりと
ちょっと他にも観たいなぁ・・
おおっ地元で上演してる。それも会社から徒歩圏内(笑)
これは行くきゃない・・うふっ
時間が有り余る程あったので、近くのワールドポーターズで時間を潰してっと
横浜の夜景を見ながらのんびり~贅沢ですね。

コンクリートむき出しのがら~んとした倉庫の中、元々ある太くて大きな支柱が高い天井を
突き刺すように何本も立っていて、「こりゃ影になって観難くなっちゃうかなぁ」とか
足音や声を発すると、ぐぁわわ~んと、音がすごく共鳴しちゃって「どうなっちゃうんだろう??」と
不安の中、ベニヤで作られた即席の客席に座っていると、
4人の出演者達が、椅子を持ってきて、客席のすぐ目の前に座り
まるで対面してるような、ちょっとこそばゆい感じの雰囲気の中で芝居が始まりました。
台本を持たないリーディングのような感じです。
ほとんど椅子に座った状態で、最低限の動きで魅せてくれます。
演じる彼らの後ろは、照明の無い薄暗い自然な光と支柱の暗い影のコントラスト・・
吸い込まれそうな程にがら~んとしたスペースが広がっていきます。

レッテの顔を真っ直ぐ見る事を避け続けたファニーは、「彼の顔以外はすべて好き」と言っていました。
手術を受けて美しくなったレッテを見て、妻は「顔が好き」と言います。
“醜い顔”を誰よりも“一番美しい顔”に施術した医者は有名になり、
患者達は“一番美しい顔”を求めて、医者の元にやってきます。
美しい顔になってから仕事も順調、女性達からもモテモテのレッテですが、
ある日妻が“一番美しい顔”になった助手のカールマン(田村元さん)と浮気をしていることがわかります。
妻は「貴方の顔が好きなんだからいいじゃない・・それは貴方だから」
街に溢れた“一番美しい顔”の男たち・・それはレッテなのかカールマンなのか、他の誰か?
レッテは、自分を求めて昔の“醜い顔”を取り戻そうとしますが、医者は拒みます。

テンポ良く進んでいく会話のなかに皮肉がたっぷり詰まっています。
自分のオリジナリティって何だろう?
見てくれだけじゃないと思いながらも、すごく不安になってしまいます。
人と同じ事をして、安心感を得ることの後ろめたさ
個人として生まれてきて、自身の本当の大切な事って何だろう??
誰が作ったか知れない流行に煽られ、流行ものに弱く
春の流行は「緑のスプリングコート」と、とっとと購入してる自分が言うのは、
全くの筋違いですけど・・(は、恥ずかしい・・だって、可愛い色なんだもん)
でも、ぐさっと胸に突き刺さる確かな事・・・学んでいかなきゃなっと思いました。

3/22(日)~29(日)まで in BankART Studio NYK 
by berurinrin | 2009-03-24 01:20 | 観劇感想

文学座本公演・紀伊國屋書店提携<北村和夫追悼>『花咲くチェリー』のお知らせ  

作   ロバート・ボルト   

訳   坂口玲子   

演出 坂口芳貞 


日時 5/22(金)~31(日)

出演 渡辺徹、石川武、大原康裕、植田真介
    名越志保、佐藤麻衣子、吉野実紗 
     
於  紀伊國屋ホール   

前売開始予定  文学座:4/18(土)
           

入場料  5,500円    

チケット取り扱い   文学座チケット専用0120-481034(11:00~17:30日祝除く)
              電子チケットぴあ0570-02-9988 
              キノチケットカウンター紀伊國屋書店 新宿本店5F
                (店頭販売のみ10:00~18:30まで)
             文学座H.P http://www.bungakuza.com(Gettiiより)

問い合わせ:文学座  TEL.03-3351-7265(11:00~18:00日祝除く)
by berurinrin | 2009-03-23 23:46 | 文学座公演情報

卒業公演『なぜか青春時代』を最後に研修科生達はそれぞれの道へと別れていきました。
皆さん個性的なのに、なぜか大人しい・・チームワークはとても良いのに・・
芝居に対する姿勢はすごく真面目だし、でも一つに括れない面白さがありました。
不思議な人たちでした。

そして毎回思うのですが、査定をされる方々の大変さ・・本当に頭が下がります。
そして・・つくづく・・やっぱり演劇の世界は狭き門・・厳しい世界です。

今年は7名の方が入座されました。
演技部は、高塚慎太郎さん、永川友里さん、下池沙知さん、千田美智子さん
演出部は、佐藤大祐さん、西本由香さんです。

また、21名の方々が研修科に進級されたそうです。
改めておめでとうございます。
by berurinrin | 2009-03-22 22:23 | 日常

シアター・ブロック公演30 第6回杉並演劇祭参加
すぎなみ文化芸術活動助成基金助成事業『オイディプスの娘』 in 明石スタジオ(3/20)

台本・演出 新城聡

オイディプス王は、そうと知らずに父である先王を殺害し、王位に就き、先王の后(実母)を
妻として迎え、エテオクル、ポリニス、イスメール(野水左記子さん)、アンチゴーヌ(佐藤麻衣子さん)
の4人子供をもうけますが、出生の真実を知ったオイディプス王は、自ら両目を抉り取ってしまいます。
オイディプス王の死後、息子エテオクル、ポリニスは一年交代で国を治めていましたが
互いに相争い、刺し違えて死んでしまいます。
王位を次いだクレオン(大渕浩さん)は、良き兄エテオクルは盛大な葬儀を行い
反逆者ポリニスは、墓は不要・・そのまま打ち捨てるように。そして埋葬の礼を施そうものは
誰であれ容赦なく死刑と、国民に厳命をいたします。

アンチゴーヌは、打ち捨てられた兄の死体に砂を掛け、それを衛兵に見つかり
クレモンの元に連行されます。
クレオンの息子エモン(西岡野人さん)に愛され、婚約している姪であるアンチゴーヌ。
自らの命令を破ってでも助けようとするクレオンと死を覚悟したアンチゴーヌへの
果てしない説得の対話。
クレオンがアンチゴーヌへの説得を諦めた時、新たな悲劇が始まります。

以前、劇団四季『アンチゴーヌ』で、クレオンとアンチゴーヌの緊迫した対話のシーンで
かつて無いほどの爆睡してしまい全く記憶がございません・・と、いうちょっとトラウマを持ちながら・・
自分頑張れ~!と気合を入れながらの拝見!と、思いきや
この日は超満席!それも顔見知りの文学座の座員の方々が沢山?!わぁおです。
遠くから「ヨリちゃ~ん!!」と頼経明子さんを発見したり
でも、もっともっともっ~と!びっくりは、目の前の席に座られたうーさまのお姿!うがぁーです(><)
目線の先の鵜山仁さんの姿を通しての芝居・・寝ちゃうなんてそんな罰当たりもんです。
そんなこんなで緊張しながらの観劇となりました。

タイトルロールを演じたのは、アンチゴーヌを演じた佐藤麻衣子さん。
同じハナタレでも今度は、女の子。
どんな事があっても自らの信条を曲げずに生きていこうとするアンチゴーヌを
時に弱々しく、女の子らしい微妙で繊細な心の揺れを感じさせながら
頑張って演じておられました。
そしてアンチゴーヌの婚約者エモンは、西岡野人さん。
育ちのよさそうな王子様。無邪気な笑顔を魅せる・・のび君です。
でも、死んでゆくアンチゴーヌを追って自ら死を選ぶ程に彼女を愛していたのか?と
ちょっと疑問を感じましたが、父クレオンにどんなに哀願しても恋人を救えない無常感と
失ってしまう喪失感との戦いの結果なのかと・・。
麻衣子とのびくんのカップル・・お似合いの可愛い二人です。
これがハッピーエンドだったら・・と思うと切ない(><)
でも研修科の時から、見守ってる彼ら二人の姿を見てるとその成長振りに
色んな意味でじーんと胸が熱くなるもんです。

3/18(木)~22(日) in 明石スタジオ

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本は、アヌイ名作集「アンチゴーヌ」芥川比呂志さんの翻訳によるものです(白水社)
苦手意識をもちながらも好きなんですよ私f(^_^;)
ちなみに同じく白水社から出版されてるベストオブコクトー「声/恐るべき親たち」に
コクトー版「オイディプース王」が記載されています。うきゃくきゃ鵜山仁さんの解説つきですよぉ★
by berurinrin | 2009-03-22 13:08 | 観劇感想

シリーズ・同世代[海外編]
番外連続リーディング『アテンプツ・オン・ハー・ライフ』 in 新国立劇場小劇場(3/18)

作   マーティン・クリンプ
翻訳  平川大作
演出  北澤秀人

ドラマのような、エピソードのような、独り言のような、情報発信のような・・
バラバラの17篇のジグソーパズルのそれぞれのカケラ達が見せてくれるモノは
アンという、アーニャという、アーニーという何かの象徴。

ベルは、女の子。もうおばあちゃんですが、黒目がちの目はキラキラしているし
ふくよかな真っ白なお腹は柔らかくて、ふあふあ。
そのお腹に顔を埋めると、ほのかな体臭と温かい体温のぬくもりが伝わってきます。
耳と長いひげは、ぴんとして理知的。
左右にゆっくり揺れるしっぽは、優雅だし(先っぽは、子猫の特にドアに挟まれて曲がってますが)
怒ってうなる声は、演歌歌手のこぶしよりも響くし。逆に甘えた声は、アムロちゃんみたい・・
わたしにとっては母であり、姉であり、妹になったり赤ちゃんになったり・・愛しい存在であります。

ベル・キューブというチーズ。ご存知ですか?小さなキュービック状になったチーズ。
最近では、普通のスーパーに売られています。
私はペッパー、トマト、ハム味のセットになったものが好きです。
あとオリーブ味とかもあって、お酒のおつまみに相性ばっちしです。

もともと、愛猫ベルの名前は、ディズニー映画『美女と野獣』のヒロイン・ベルから。
野獣とベルのダンスのシーンは、アニメといえどもうっとりする位素敵でした。
初めて対面した時、その場に居た姉妹の子猫2匹の内、
やんちゃに遊ぶ子とは対照的に、隅っこで、じっとこちらを見つめてるのがベルでした。
初めて飼う猫だったので、おとなしくてお姫様みたいなイメージで名前を付けたのですが
実際は、かなりのおてんば猫で、何度も脱走を計り、
下に止まっていた車のボンネットめがけて2階から飛び降りたり、
屋根の上に登っては腰を抜かして動けなくなったり・・と、その都度大騒ぎをしたものです。
年齢と共に今やすっかり落ち着いちゃいましたが・・・。

ニナ・リッチのベルLES BELLES DE RICCI という名前の香水のシリーズがありまして
容器の形がクリスマスツリーみたいでユニーク。
香水好きな私にと、グリーン容器に入ったものを友人から頂きました。
とはいえ、10年ほど同じ香水したつけてないんですけどね・・・
でも、ちょっとつけるには私的には甘くて・・・母の香水コレクションの中に一緒に飾っています。
実は母も香水好きなのでした・・。

っと、ベルにまつわる私的なエピソードをいつくか並べてみました。
愛猫ベルを中心に関係のある話、全く関係のない話。
動物、食べ物、香水、アニメのキャラクター・・でもすべてベルです。
このお話『アテンプツ・オン・ハー・ライフ』17個のかけらの中で、頭を働かせてアニーの
正体を暴こうと思っても、それは無茶なことかもしれません。
一つ一つのかけらの中にある、その場に生きてるアニーを楽しむゆとりを持って
構えることなく、目の前の展開に身を預けてみるのも楽しいことかもしれません。
それは、耳を塞ぎたくなるようなエピソードであっても・・・

初日に拝見したこの日、客席は残念ながら空席が目立っていました。もったいない・・。
脈略の無いストーリーに何役も演じ分ける研修科生の姿の中には、
迷いも見え隠れしましたが、果敢な彼らは、客席のわたしたちにその思いを挑戦的にぶつけてきます。
おおおっと、その鋭い眼差しに刺される心地よさ、なんかこっちも喰らい付いて観てやるぞ!と
思いながらも、やっぱ難解な作品に打ちのめされて悔しくなってしまいました。
頭でっかちになってしまった私「もーわかんない!!」と、怒ったシーンもありましたがf(^_^;)
そんな・・時に眉間にシワを寄せるエピソードや、めちゃめちゃ笑える面白エピソードの数々・・
おもちゃ箱の中の、目に眩しいたくさんの色彩の一つとして同じ形のものがない17個のドラマたち・・
ジグソーパズルの断片なら全部揃えば一つのものになるのに、なぜか一個足りない(><)
きっとその最後の断片は、作家のポケットに入ったままかもしれませんが・・・(笑)
そんな刺激的で新鮮な作品でした。
なかなかこういう作品に触れる機会ってないですよね。
貴重な体験でした。

もう一回観たいなぁ・・・観ちゃおっかなぁ・・・

えへへ、この日は客席に鵜山仁さん発見!!きゃー★きゃー!!かっこいい!!
もう、これは運命かもしれません(軽~く、流してください)
あの鵜山さんの笑顔だけで十分幸せ・・・・な、はずが・・・
今回は、終演後すぐだったので(難解さに)眉間にシワを寄せたまま
無愛想にそそくさと帰る自分にばかばかばかぁ・・ぶあかぁ、えーん(><)
色んな意味で、刺激な作品です。

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3/18(水)、20(金)、21(土) in 新国立劇場小劇場
by berurinrin | 2009-03-18 23:57 | 観劇感想

3/14(土)昼公演終了後に小劇場にて特別シアタートークが行われました。
司会は、新野守広さんと・・・にやけてしまいそうですが、うふっ♪鵜山仁さん
そして演出をされた倉持裕さん、翻訳をされた大塚直さん
作家のローラント・シンメルプフェニヒさんがご登場されました。

今回もせっせと書き書き&メモメモ状態なので
自己解釈&誤読たっぷりでもご容赦下さいね。
そしてやっぱ鵜山さん中心ですからぁ~、念のため★

新野さんから、まずはご紹介を兼ねて、今回の<シリーズ・同世代[海外編]>の企画者
でもある芸術監督の鵜山さんに、この企画の主旨について聞かれました。

発足は2007年4月。まだ鵜山さんが芸術監督就任以前からのスタートだったそうです。
海外現代戯曲を読んでみたい、情報を収集して共有してまた広く発信していきたい・・という思いから
演劇制作部を中心に外部から小田島恒志さん、佐藤康さん、新野守広さん、平川大作さん
(以上、あいうえお順です。と、わざわざおっしゃる鵜山さんがお茶目さんです♪)
英独仏の現代演劇の精通する方々のご協力を頂き月一回は研究会を行なっていたそうで
先生がたのお眼鏡に適った作品を月一で読んで頂いて、2回に一回は、翻訳をして頂いたり
かなり慌しい作業をされていたそうです。
今回のシリーズで3本並んでいて、次回作は『シュート・ザ・クロウ』
5月には、同じドイツの『タトゥー』が公演されますが、2年間の成果で3本が選ばれたそうです。
本来は、イギリス、フランス、ドイツとしたかったそうですが、残念ながらフランスの作品が
浮かび上がってこなかったと、鵜山さんはおっしゃいました。
その埋め合わせって事ではないのですが、所詮3本を選んだだけでは
本来の目的には遠いので、色を付けたような形で番外編としてリーディングを計画されたそうです。
研究会の成果として観て頂きたいとおっしゃいました。

次に、新野さんから今回の『昔の女』の演出をされた倉持裕さんをご紹介されました。
わたしは全く初めての方なのですが劇団ペンギンプルペイルパイルズを主宰され
2004年にはご自身の『ワンマンショー』で岸田國士戯曲賞を受賞されるなど多彩なお方・・。
不条理からウェルメイドまで幅広く、他の書かれた作品も演出されるなど大活躍されおられる
そうで、中でも渋谷パルコ劇場で上演された『開放弦』が素晴らしかったと、
そんな倉持さんに新野さんから、『昔の女』の演出について感想を聞かれました。

「率直に面白かった」と、倉持さんがおっしゃいました。
ご自身の作品である『ワンマンショー』も時間軸がばらばらになるストーリー展開なので
構成が似ているともおっしゃいます。
時間軸の変化を使うようになって「はじめは勇気がいったけれど、慣れたら面白かった」そうで
シンメルプフェニヒさんとは、面白いと思うところや興味を持った所が似ていると感じたそうで、
その理由として、無駄なものをそぎ落とし、最低限の情報で物語を作っていこうとする姿勢が
自分に似ていると思い、共感できると思われたそうです。
実験的でありながらエンタティーメント性を持っている。ともおっしゃいました。

日本バージョンの『昔の女』の感想をシンメルプフェニヒさんが答えて下さいました。
「素晴らしく良い印象」をもたれたそうで、「問題なく日本の文化に置き換え、
日本固有の美学、さまざまな色彩を描いてくれた」と、絶賛されていました。
「悲劇でもあり喜劇でもあり、メロドラマの要素を持つこの作品を、平行に描いて
くれたことは、とても素晴らしい」と、シンメルプフェニヒさんはおっしゃいました。
この作品は、パリ、ロンドン、ポーランド、ハンガリーで上演。
いずれも異なる解釈だったそうで、特にパリとロンドンは全く異なったそうです。
パリでは、アルゼンチンとポーランドの血を持つユダヤ人の女性演出家の作品。
活気ある気質の描き方に対して、まさに生粋のイギリス紳士が演出したイギリス版は、
伝統的に控えめで慎重・・・冒頭の場面、妻が夫に3回の平手を打つシーンは、
イギリス的には、よろしくないと受け止められたそうです・・・(笑)
演出家にしては、この作品が喜劇とみたり、悲劇として真摯に受け止めたりと多種多様だそうです。
今後、目指している事は、短い時間に沢山の感情を出せるか?作品を加速させて、
なるべく沢山の感情を盛り込み感情が押し出される・・そんな作品を作りたい。。そうおっしゃいました。

どこの国も言葉の乱れがあるようで、それはドイツも同じ傾向にあるらしいのですが
シンメルプフェニヒさんの翻訳をされた大塚直さんは、
シンメルプフェニヒさんの書かれるドイツ語が「とても綺麗」とおっしゃっていました。
「翻訳するうえでは、そんなに難しい作業ではないそうですが、シンプルな言葉こそ難しい」
と、おっしゃいます。
また、大塚さんは、70年代から80年代のドイツ演劇にはボート・シュトラウスさんという方が
おられたそうです。彼の特徴が3つあって
①何げない日常を詩学で描く。
②空間の使い方(例えば、『昔の女』での扉を開けた時のシーンや時間のバランス)
③映像メディアの影響(時間軸の錯綜とか)
そんなシュトラウスさんに興味をお持ちだった大塚さんが90年代に
映画『ベルリン天使の詩』のような詩学を継承する
劇作家を紹介しなくてはいけないと思われたそうでシンメルプフェニヒさんに出会ったときに
「シュトラウスの持ってる美学はこの人だ」と、すごい惚れこみようでした。
そんな大塚さんが居なかったら、この作品は出来なかったと新野さんもおっしゃっておられました。

倉持さんが、小劇場について、従来は自腹で本来自由にやってきたものが
最近は商業的になってきたと思われるそうで、危機感を感じながらも引っ張られる
作家主体のドイツ演劇の世界を羨ましい、初心に帰りたいとおっしゃいます。

新野さんが「商業主義をやりながらも、例えば新国立劇場小劇場の様な機構とセットにして
自分の創造活動を並行して出来たら良いですね」
商業主義でやりながらもリセットして自分を表現できる場所は必要で
すべてが商業主義で流されるのではなくて、儲かれば良いとかではなく
違った場所は大事と。その違ったもう一つの場所が新国立劇場ではないかとおっしゃいました。

しばし黙って聞いておられた鵜山さんが駄目押しのように
「ちょっとへそまがりにやっていくべきだと思っています。
新しい感情、(鵜山さん風に言うと)新しい音を探っていく事は、言葉のアスリートが必要なわけで、
新しいことに挑戦していく事は大事で、新しい言葉に出会う為には
へそまがりな新しい音の広がりの可能性を見つけるためにも、
リスクと共に楽しんで頂けるといいな・・・と
元々素直な劇作家とか素直な演出家はいないんじゃないか
それはアート、新しいコミュニケーションの定義に反すると思う」
最近、体育会系な言葉を使われる脳内筋肉もりもり★鵜山さんです。

「ドイツでは芸術とは、あえて傷口に手を触れる事」そうシンメルプフェニヒさんがおっしゃいます。
鵜山さんの言われる「音」という言い回しが素敵だとおっしゃり、
その上で「エコーという言葉を付け加えたい。
今、会場に来られてる皆さんの物語を構想しています。エコーとして何か物語をお返ししたい
それは全員がシェアできる気持ちを表現した物語です」
いやぁ~すごく素敵な言葉を頂いた気分です。

表現活動ということで、書くという作家の立場。そして演出する立場として
作家演出を兼ねた倉持さんは、自分の作品であれ誰が書かれた作品であり
まずは「疑ってかかる」とおっしゃいます。
また新野さんは、鵜山さんに演出家として戯曲を読む作業について
「普通は「こう言わんだろう」と言うのが大前提で、「じゃあどうしてそんな事いうんだろう?」
むしろその言葉が無かったら、どうやっていただろう?と
例えば「ちょっと待って」っていう台詞がなかったら、どう行動していたのだろう?と、
書き付けられた言葉の感情やその音の世界の周辺を探すのは、
自由であり、そういう点では、台詞を信用して、倉持さんとは違って、疑いを持たない(笑)」と
また「複雑な音の世界・・作家を出し抜いてやろうと思う。
信頼に値しない人を出し抜いたりしない
なので、作・演出をする倉持さんは、信頼ならない(笑)というか許しがたい(笑)」
そんな風に語る鵜山さんの表現は、本当に面白くて、吹き出しそうになりました。

シンメルプフェニヒさんのご自身の作家の世界は、翻訳でしかわかりませんが
と新野さんが、演出の倉持さんと翻訳の大塚さんは、どこまで打ち合わせられたましたか?と
聞かれると「1日だけ大塚さんと打ち合わせした」と倉持さんが答えられました。
ただ汚い日本語が少ないので「くされ***」(><)という台詞については、話し合ったそうです。
すごく気に入っていると倉持さんがおっしゃいました。
「翻訳に関しては、全く問題なし」と、大塚さんに対して、絶対の信頼をお寄せのようです。
そんな大塚さんも、倉持さんの『ワンマンショー』と『昔の女』は似てるとおっしゃり
倉持さんにサインをして頂いたそうです。
また、読み合わせに参加された際に語尾とかは、変更されたそうですが
後はそのままだったそうです。

最後にいくつかの質疑応答がありまして、その内一つだけ・・・
「『昔の女』での、同じ場面が繰り返されるシーンがありますが
演技に変化があるのは?」という質問で
台本の指定はないそうです。同じ事を繰り返す・・ライブなので
どうしても少し変化が起こるのは当たり前、同じ変わるんだったら
変えちゃってもいいかと・・すごく素朴な倉持さんのお答えでした。

前日のドイツ文化センターでは同時通訳だったこともあって判りづらい言葉が多かったのですが
今回の翻訳の方の言葉は、とてもわかりやすい言葉で表現されていて面白かったです。
鵜山さんは、オブザーバーみたいな役割で、
静かに周りに気配ってる姿は、やっぱりかっこいいです。
最後の締めに、鵜山さんが話す素振りを感じたのですが・・・
話をされずにちょっと残念(><)
イベント終了後、昨日と同様にロビーで、著書のサイン会をして下さるシンメルプフェニヒさん
優しいですね。もしかしたら一生出会わない方かもしれないので、
本当に貴重なサインです。
それにしてもシンメルプフェニヒさんって、呼びずらい・・・(苦笑)
by berurinrin | 2009-03-17 02:03 | イベント

ドイツ現代演劇 ヴィデオ上映シリーズ
ヴィデオ上映&トーク『今、ここで』 in ドイツ文化センター(3/13)

主催 GOETHE-INSITUT JAPANドイツ文化センター
協力 新国立劇場

ゲスト ローラント・シンメルプフェニヒ
解説  新野守弘


行ってきましたドイツ文化センター!やっぱり迷いました(><)
初め19時開始となっていましたが、一時間繰り上げの18時開始と変更になって
もうまず遅刻は覚悟していたんですが、迷う時間を入れてなかった(笑)トホホ・・・
ところが、ちょうど会場に辿りついた時、ビデオ上映中に画像が止まるという
アクシデントの真っ只中。ほんのり明るくなった会場にそっと紛れ込みました。

上映されていたのは『今、ここで』というシンメルプフェニヒさんの最新上演作品。

設定は、野外での結婚式のパーティ。横長のテーブルには花婿・花嫁を始め数人の招待客。
黙々と飲み食いしているかと思うと、二人の男性が大きな剣を持ち出し決闘を始めます。
泥だらけになって、息を切らし・・決闘が収まると、ワインを飲んで吐き戻したり
何事もなかったかのように音楽が演奏され、ダンスタイムに入ったり・・
どうやら、結婚式の最中らしいのですが
花嫁が突然、ある男性が好きになってしまい
花婿を捨てて披露宴からいなくなってしまうそうです。
花婿はショックのあまり森に籠もってしまいます。
結局、花嫁は花婿の元に戻りますが、花婿は花嫁に拳銃を向けますが撃てない。
その間、季節は秋から冬に移り変わり・・
場面はそのまま・・そして時間も過去と未来を交差しながらドラマは展開していきます。

頂いた解説を読むと、さまざまな人間関係が終末に向って徐々に崩壊していくそうです。

終わって凹みました。もう、とっちらかっちゃって唖然呆然(><)
観てるわたしが崩壊しました(爆)
一生懸命理解しようと努めましたが、観ている内に気持ちが悪くなりました。
こういう作品を短縮しちゃダメですよ。思いっきり拒否反応がでちゃいましたもん。
そんな苦手意識から拝見したので『昔の女』は、すごく面白かったです。
裏切られた~(笑)って、うふふっ

短い休憩をはさんで
司会進行の新野守広さんとローラント・シンメルプフェニヒさんが舞台に登場されて
トークセッションが行なわれました。
先程拝見した『今、ここで』は、実際には2時間半の作品でしたが、それの45分の短縮バージョン。
このシリーズでの短縮版上映は初めてなので「ちょっと物足りなかったですね」と
東京や横浜の倉庫のようなところで上演して欲しい・・と
新野さんがおっしゃていましたが、わたしは十分お腹が一杯になってしまいました(><)
そんなところから『今、ここで』のお話から始まりました。

この作品は、チューリヒにおいて2008年4月25日に初演されたそうです。
これは演出家のユルゲン・ゴッシュさんが、チューリヒ・シャウシュビールハウスで上演するために
劇場側がシンメルプフェニヒさんに依頼をして、書き下ろしされた作品だそうです。
8週間で書き上げたそうで、この空間の為に作られたそうです。
このチューリヒ・シャウシュビールハウスというのは、元々は造船所だったそうで
壁はそのままで、音響等は最新設備ということで機構を最大限に生かそうと思われたそうです。
どうりで、倉庫のようなスペースで、横に長い演技スペースの床は泥だられ
真ん中に一段高い舞台が設えありましたが、
そのスペースに雨や雪や泥んこ、食べ物や飲み物でぐちゃぐちゃ・・
衣装も床もぐちゃぐちゃ・・
ま、普通の舞台では不可能ではありますね・・・

次に、新野さんから「書いてくれ」という要請について、どういう経路になっているかという質問と
井上ひさしさんの新作で現在上演中の『ムサシ』は
初日2日前に完成されたそうで、その話を例にとって質問されました。

今回(『今、ここで』)については、通常よりも早い以前に決まっていて
現場と一緒に作り上げられたと、シンメルプフェニヒさんはおっしゃいました。
通常は、大抵劇場から依頼されるそうで、その時点では
「コメディを書いてくれ」とかは言われずに、シンメルプフェニヒさんご自身の思考の時間があって
それからアイデアが浮かび、そのアイデアに対し、OKが出れば4,5週間で書き上がる。
書き上がった時には、すでに完璧な状態なので直す事はしない。。。と、きっぱりおっしゃってから
ご自身は乙女座だそうで、乙女座は「厳格に納期を守る」とおっしゃっていました(笑)
わたしも実は乙女座の女ですが・・・どーだろ??(笑)
で、書き上がった作品は、演出家に任せられるそうですが
その後、演出家から「あーだ、こーだ」とか、言われての戯曲の変更は不本意であると
何週間も掛けて書き上げたのだから・・おっしゃっていました。

「言葉に対するこだわりというのは、劇作家として表現活動の核心だと思うので
おっしゃるとおりだと思います。」そう、新野さんは続けられて
シンメルプフェニヒさんの本を読んでいくと、ある日突然に積み重なれた男女の関係が
なんの前触れもなく過去の出来事になってしまい、新しい関係を求めてしまう。
本当は、何かの出来事があるのかもしれませんが、戯曲ではそうは書かれずに
ふと、冷めた瞬間が起こる・・・「『今、ここで』でも花嫁と花婿の間に起こる感情に対して
シンメルプフェニヒさんの作品の核心に触れているのではありませんか?」と

「ぱっと冷める瞬間」・・このテーマに、ここ数年入り込んでいると
シンメルプフェニヒさんはおっしゃいました。
年を重ねたからかも・・・ある特定の年齢に至るまでは、失敗や挫折
特に権威・・・誰が誰を支配するのか?という事を概念に置かれたそうですが
「自分は、自分の人生を計画することが出来るのか?」と考えられておられるそうです。

新野さんから、話の中で「自分が、自分の過去の姿にどのようメッセージを伝えていくか」という
シンメルプフェニヒさんの言葉に引き込まれるテーマとおっしゃいます。
シンメルプフェニヒさんの作品のスタイルの特徴として、
同じ言葉、場面を使われるそうで
新国立劇場で上演されている『昔の女』を例えにされました。
(この時点では、わたしもまだ『昔の女』を拝見していませんでしたが・・)
この作品でも、同じ言葉、同じ場面が繰り返し登場しながらも時間が動いていく
非常に揺らぎがあって、アイデンテティの揺らぎというかが客席にも伝わってきて
微妙なニュアンスが入ってくると思われるそうで
今後もシンメルプフェニヒさんの昔からの作品のスタイルとして、今後も
中心的な書き方をされるのでしょうか?と

同じ言葉や同じ場面(同じ音とも表現されていました)を繰り返すことによって
様々な時間軸、時間の認識をイメージで作っていく・・描くことによって
叙事を思い起こす・・そうシンメルプフェニヒさんはおっしゃいました。

ドイツの演劇界の話が出まして
ドイツの演劇界は、非常に生産的だとおっしゃいました。
さまざまな劇場があって、どんな小さな都市でも必ず劇場があって
劇場が抱えている役者がおられるそうです。
特に、ハンブルグ、ベルリン、ミュンヘン、ディッセルドルフは演劇都市なんだそうです。
演劇都市といえる事が素晴らしいですね。
はたして日本には、演劇都市という場所があるのでしょうか?ふと思ってしまいます。

先程上映された『今、ここで』の演出家ゴッシュさんは、かなりお年を召した方なのだそうですが
蜷川幸雄さんよりも年齢的に上じゃないかな・・と新野さん。
そのゴッシュさんについてシンメルプフェニヒさんは
作品に忠実で、カットしたり、場面を入れ替えたりせず、言葉に対して
真摯に向う方だとおっしゃいました。
作家が書いた言葉をそのまま使い、作品そのものに真摯に向き合う・・
そんな絶対的な信頼をされるゴッシュさん演出で
次回作品であるザルツベルグフェスティバルの『バッカスの寝所』の新訳をされるそうで
古代ギリシャ語を翻訳されたものを改定されるそうです。
内容には全く触れずに言葉を変えたいとおっしゃり、5日程で完成できると思ったそうですが(笑)
一日掛けても半ページも進まなかったと。。(笑)
7月半ばの初日で、5.6月がリハーサルとのことで、この先4.5週間で仕上がりたいと
おっしゃり、帰りの飛行機の中でもお仕事されるそうです。
飛行機の中は意外と仕事がはかどると笑っておられました。

話は、シンメルプフェニヒさんご自身の経歴などのお話になり
ドイツには兵役義務があるそうですが、シンメルプフェニヒさんは兵役に就く代わりに
社会活動を選び、ジャーナリストとしてイスタンブールで生活の後、演劇学校で演出を
勉強し、演出助手を経て書くことに専念されフリーの作家に転向されたそうです。
その後、アメリカで生活を経てドイツに戻られたそうです。

さて最後に質疑応答タイム。
「作品を書かれる時に構成を練っていかれる時に気をつけられる事
その際に気に留めてる事があったら教えて欲しい」
そう真後ろに座って居られた男性からのご質問??なんか聞いた事のある声だなぁ
と思ったら文学座の演出家・中野志朗さんでした(笑)ぜんぜん気がつかなかった(笑)
大きな足の人だなぁと思ったくらいで(笑)
ふと何げなく横を見ると長い足が目に入ったので!(* ̄m ̄)プッ
中野さんといえば、ドイツに去年まで留学されておられました。
そして今年アトリエでドイツの作品『崩れたバランス』を上演されます。
うふふっ、これもまた楽しみですね♪今は、台本のチェックをされてるそうですが
「頑張ります!!」とおっしゃっておりました。
中野さん・・見た目は爽やかだし、伸びのある素敵な声をされています。
でも、作品は結構マニアック系(笑)おもしろいお方です。
おおっ、質問の答えっと
シンメルプフェニヒさんより「まずアイデアとして一つか二つのイメージを浮かべる」そうです。
『今、ここで』を例えるなら、「披露宴」「屋外」「決闘(サムライをイメージ)」をまとめて
自分で何に興味があるか?新しい人生の為に出発していく為に生まれてきて、
方向を達成するときにあえて、変化を望むキャラクターを見つけ出すそうです。

「日本人の演出家で日本人俳優で上演された『昔の女』を観てどんな感想を持たれましたか?」
非常に気に入ったと、シンメルプフェニヒさんはおっしゃっておられました。
とても感動されたそうです。感動した理由として、他の国に移しても機能できると思われたそうです。
面白いプロダクションだし、役者も素晴らしく舞台美術が素晴らしいとおっしゃっておられました。
(後日、わたしも「うんうん」と納得しました★)

「劇場を与えられてから戯曲を書かれるそうですが、空間と戯曲について
どう考えておられますか?」
空間というのは、舞台の大きさ。ドイツでは、スタジオが小さいのが普通だそうで
何人の客が入るか?100人の人、1000人の収容に対して
おのずと作品は違ってくる。演劇とは世論との対話なので
人数が多ければ多いほど大きな対話となるそうで、空間の大きさはとても大事であり
その空間を持つ都市の大きさも大切だと、シンメルプフェニヒさんはおっしゃいました。

他にもいつくか質問がありましたが、この辺でf(^_^;)
今回もノートにカキカキ状態なので、ちょっと誤読やニュアンスに隔たりがあるかもしれませんが
お許しください。
冒頭の『今、ここで』を観て凹んだ私ですが
会場でシンメルプフェニヒさんの戯曲『前と後』が販売されていまして
購入したらシンメルプフェニヒさんのサインを頂けるということで、パラパラと戯曲を手に取ったら
これが最初の文章がユニークで購入してしまいました。
もちろんサインも頂ました★
読み進んでいくと、一つの場面が繰り返されて登場した男女それぞれその場面の心理描写が
モノローグとして語られたりして、小説のようにプロットが緻密・・。
明日拝見する『昔の女』が違う意味で、すごく楽しみになった私でした。
だって、明日は『昔の女』終演後、特別シアタートークがあるんですもん(*^_^*)
鵜山仁さんがご出演なんですもん(*^_^*) うれしぃ~★★

次回は、新国立劇場で上演されている『昔の女』と同じシリーズ・同世代[海外編]の
『タトゥー』の作家・デーア・ローアさんのトークが5/16(土)に予定されるそうです。
ぜひお時間のある方はご参加されてみたら如何でしょうか?
せっかくの機会だし、よりいっそう『タトゥー』が楽しめると思いますよん♪

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by berurinrin | 2009-03-15 22:22 | イベント

新国立劇場『昔の女』

シリーズ・同世代[海外編]vol.1
『昔の女』 in 新国立劇場小劇場(3/14)

作   ローラント・シンメルプフェニヒ
翻訳 大塚直
演出 倉持裕

すでに引越しの準備も最終段階。この住み慣れた家から明日は出て行く
フランク(松重豊さん)とクラウディア(七瀬なつみさん)夫妻。
二人の間には一人息子アンディ(日下部そうさん)。
アンディは、恋人ティーナ(ちすん)との最後のデート中。
そんな彼らの前に突然現れる一人の女性。
名前はロミー・フォークトレンダー(西田尚美さん)。
フランクの24年前に別れた恋人であり、今も恋人同士であると名乗ります。

今年初の新国立劇場主催の新シリーズ「シリーズ・同世代[海外編]」開幕しました♪
いやぁ、怖かったですね。
結婚生活20年を積み重ねた夫婦、平凡な家族の悲劇。
これが上演時間約1時間半の間にどどどっと完結してしまいます。

私は結婚をしていないので、年月を重ねた夫婦間の愛情についてはわかりません。
けれどロミーを前にすると、そんな積み重ねは不毛のような気さえしてきます。
ロミーは、フランクを手に入れるために、恐ろしい犯罪をおかします。
彼女にとって忘れられない思い出だけど、彼にとって24年前に愛していた頃が蘇えっても
その月日はフランクにとって過去であり、今ではないはずなのに、
なぜロミーの伸ばした手を取ろうとしたんでしょうか??
そんなロミーは彼を置いて出て行くと、またフランクは、クリアにして今の世界に身を置くことができる?!
えー男の人って??そうなんですか?
また来週の会社の飲み会で、これをテーマにコイバナしなきゃだわっ
ま、実際はもっとびっくり仰天な展開でしたが・・・
大人の三角関係ともう一方では、一組のカップルの存在があります。
「愛してる」と言いながらも、別れは簡単なアンディと割り切れないティーナ。
若い恋人達の男女の愛情の温度差も引っかかります。
確かな愛情って、愛は積み重ねる事が出来るんでしょうか?
もし出来るのならば積み重ねる度に、小さなひびが刻まれそうです。
ホワイトデーだからかな?なんか愛というキーワードにハマってしまいました。

平面だけど、立体的な舞台装置がとても素敵★
最前列で拝見しましたが、最後は押し潰されそうな恐怖を感じてしまいました。
心臓どきどき・・もし再見できるとしたらC列以降の方が観やすいかもしれません。
中央の扉が開くたびに、なんか起こりそうで(笑)ゾクゾクしちゃいました。

作家のシンメルプフェニヒさんの戯曲を公演するのは、日本初!
という事で、昨日はドイツ文化センターにおいて、ビデオ上映会とトークセッションがありました。
そして、この日の終演後は特別シアタートークもありました。
それらの様子については、また後日UPさせて頂きますね。

それにしてもシンメルプフェニヒさんは、何度もリフレインを使われるかたで
場面を前と後の時間を自在に入れ替えたり、巻き戻したり自由自在に操ります。
独自の時間軸で、うごめく登場人物達。
それらは傍目に観てると笑っちゃう程おかしいものですが
たった数分の出来事で、友好だった関係性が崩壊していくさま。
無駄なものがない分、滑稽で心に深い恐怖を与える気がします。
笑いながら味わう恐怖・・新鮮な驚きがあります。

3/12(木)~22(日)まで in 新国立劇場・小劇場
by berurinrin | 2009-03-14 23:27 | 観劇感想

新たに旅が始まる『ゆれる車の音ー九州テキ屋旅日記』の舞台稽古(ゲネプロ)見学に参加してきました。
             ↑(リンクは初演のバージョンです)
場所は吉祥寺にある前進座劇場です。
去年の夏の終わりに尼崎のピッコロシアターで地方巡演の幕が上がった『ゆれる車の音』は
東北、北海道と巡って来られました。
そしてまた季節は変わり旅立っていかれます。

前回のゲネの時もそうでしたが、なぜかタイミングが悪く
今回は前日から、大事件が勃発し一睡もしていない上に、前の日の昼食から食事もとれず
そのうえ早朝からハードボイルドな出来事に遭遇してきたので
精神的にもガタガタ・・動悸が治まらず・・という最悪な状態。
ともあれひとまず解決したので、拝見することができました。

かなり神経が高まっていたのか、懐かしい音楽が客席に響きわたった途端
涙がぽろぽろ・・・・いやぁ参った参った。
可笑しくて泣いて、切なくて泣いて・・・・本当に泣き笑い(笑)
自然に泣かせてくれる優しいお芝居・・。
わたしは泣きたかったんだな。泣かせてくれる優しさが欲しかったんだなぁ~と
前回は、気がつかなかった乱暴な言葉の中にある優しさや
ほのぼのとした彼らの昔語りに、確かに伝わってくる体温のぬくもり・・
緊張したままの心を、柔らかな音楽と油津ブラザーズの弾けた明るさが
じわじわと自然にほぐしてくれました。
生きていれば色々あります。ホント。
最後は、背中をぽんっと押された感じ・・・もう大丈夫です。

今回は、一人キャストが変わって
テキ屋に憧れるスーパーの店員・大田川宏君が
植田真介さんから松尾勝久さんにバトンタッチ。
生真面目★真面目キャラだった植田さんと、
どこか抜けたような、癒し系ほのぼの松尾さんとのギャップを感じつつも
また、いつも一緒に居る田畑千代子さん(太田志津香さん)のキャラと
ちょっと被る感じがしなくもないのですが、ほのぼの天然カップルも面白くなりそうな
予感を感じられたお披露目でもありました。
皆さんキャラが濃いから・・つーか、濃すぎるから(笑)

ゲネだけに、客席の中央には大きな演出卓が設え
前回同様に、演出される鵜山仁さんとお隣にはいつもキャップを被っておられる
演出補の露田俊哉さんが座られていました。
舞台を観ながら鵜山さんが、身振り手振りをされながら、ぽそぽそおっしゃる言葉を
やはり、ほーほーとうなずきながら、パラパラと台本を見ながら書き込みをする姿・・
鵜山さんに聞き返したりしなくても、分かり合えてるような・・
後姿でしかわかりませんが、同じ呼吸でそこにいる。
そんなお二人の姿でした。

やっぱね。うふふ♪かーっこいいんですよ!鵜山さんのお仕事姿ってば!
相変わらず、斜めに座ったり、頭に手をやったり、髪をくしゃくしゃいじったり、ぽろぽろ頬を掻いたり
ふと、じっと舞台を観てる姿は、本当にヤバイ位(笑)素敵なのです。
鵜山さんといえば、新国立劇場の海外戯曲シリーズが今日初日を迎えます。
『ゆれる車の音』の初日には、新国立劇場の特別シアタートークの司会があってと
あっちゃこっちゃでお忙しそうです。
それでもお茶目な鵜山さん・・・かっこいいです。

さて今回は、3/14に北九州からスタートし、九州、静岡と約3ヶ月の地方巡演となるそうです。
その中には、舞台となる宮崎県も!!今回の旅もきっと各地で盛り上がる事でしょう!!
どうぞ皆様、お体に気をつけていってらっしゃいませ~!!
面白すぎる制作のYさん!旅ブログ楽しみにしています!!
by berurinrin | 2009-03-11 22:52 | 稽古場/舞台裏話

この日の受付の手伝いは、『トムは真夜中の庭で』で、トムの弟ピーターを演じられました。
優しい語り口がとっても素敵だった椎原克知さんと『口紅』では銭湯を営む小林勝也さんの
表情豊かな孫・桜庭遥さんを演じられた吉野実紗さん。
物品販売のコーナーでは、TVドラマ『ゴンゾウ』で刑事さんを演じられていた清水圭吾さん。
毎回、たくさん画面に映っておられましたよね。
ちょっとワイルドでかっこいい清水さんでした。

終演後、バックステージを拝見させて頂きました。
案内をして下さったのは、演出部の寺田修さん。
めがねを掛けておられますが、その眼差しは穏やかでとても優しい~目をされたお方です。
まずは、
1幕は、中華料理店の一室
2幕は、荒らされた事務所
休憩15分間の間にすごい場面転換になっていましたよね。
びっくりのその仕掛けは、舞台の上に・・。
なんと中華料理店の壁が、吊られていました(笑)
舞台の後ろは、すでに事務所のセットがあって
1幕の中華料理店の壁の裏では、2幕の出番を待つ事務所のセットが待機していたのでした。
その中華料理店では、美味しそうに食べていましたよね。
きっと、芝居を観た後にご飯を食べるとしたら
迷わず中華が食べたくなります。
で、何を食べていたか?伺ったところ
「かた焼きそば」と「杏仁豆腐」だったそうです。
実は、芝居中にマーロウさんを演じられた坂部文昭さんがパクッとお口にいれたのは、
「杏仁豆腐」だとすぐわかりました。へへへっ

めちゃくちゃに荒らされた事務所のシーン。幕が開いたとたんびっくりしましたね。
目に入るスチール机とロッカー・・・これは、実際に文学座の事務所で使われたものだったそうです。
新しい事務所に変わって、廃棄せずにとっておいたそうです。
リサイクルですね。エコですね。
さすがに味わい深い色合いになっていましたね。
舞台からは見えない、机の上においてあるスチール製の引き出しには、長年事務所で
使われていたのが分かっちゃう印があったり・・近くで拝見すると微笑ましくなります。

同じようにロッカーも・・使っていないロッカーの中に、むしろ発見(爆)
怒ったモスが、事務所から出て行く時にロッカーからコートを取り出す時に
内側に貼っていた写真気が付きましたか?
なんとマリリンモンローの写真でした。
モスさんったらモンローさんのファンですかね♪

正面の扉・・ベイレンが事情聴取するためにおっかない顔をして出たり入ったりしていましたね。
客席から見えるところには、スチールの衝立がありますが、その上手奥には
パイプ椅子が3脚並んでいました。
そこにベイレンさん始め、順番に事情聴取される方々がちょこんと座って
出番を待ってる姿を想像すると、なんか面白いですね。

事務所には大きなポスターが張ってありましたが気が付きましたか?
販売する土地のPR用ポスター。
この2枚のポスターは初演の時からのものだったそうです。
近くで見ても本当に綺麗なポスターで、劇団のものを大切にする姿勢がほのぼの伝わってきます。

ウィリアムソンのお部屋は、ちゃんと机と椅子がおかれていました。
几帳面そうなウィリアムソンさんだけに、ちょっと殺風景かな(笑)
ドアの上のガラスは、壊された後がくっきり・・ギザギザの割れ目が超リアルです。

乱雑な事務所に散らばったタバコの欠片・・・これすべて作りものでした。
ちゃんと焦げまでついて、すごい細かーい♪
ファイルと思いきや中身は、台本だったり
シビヤなお話だけに、客席からは見えない部分で色んな遊び心いっぱいな工夫が
見え隠れしていて、なんか癒されますね

このバックステージの最中に、ひょろっとお顔を見せて下さったのは
この事務所のボスで、スーツをかっこよく着こなすウィリアムソンを演じられた押切英希さん。
かっこよかったですよね。あの冷たい眼差し・・流し目・・もうバチンバチンと
きゅあ~!!とういう感じでした。
キラービーム炸裂してましたね!!まさに男の色気!
くらくらしました(笑)
初演は大出俊さんが演じられたウィリアムソンさん。
初演を拝見した時、最後に大出俊さんがゲイっぽい仕草をするシーンがあって、
思わず「えええっ」ってびっくりした記憶があったのですが、
今回、押切さん演じるウィリアムソンには、そんな仕草は見えませんでしたが
彼を罵倒する言葉の中にあったように、やっぱりゲイなんだそうです。
直接的な態度や言葉としてみせずとも、漂う雰囲気はかなり色っぽかったですよね。
華々しき一族』でも姉妹に愛されるモテ男・須貝さんを演じられておられました。

そしてもうお人方は、強面警部さんを演じられた石橋徹郎さん。
いやぁ怖かった・・出番は少ないながらもそのインパクトは抜群でした。
正面の扉から出たり入ったりその都度威嚇のまなざし・・・ひぇ~
最後は、レヴィーンを演じられた清水幹生さんの襟をチョンと摘まんで
「はいはいはい・・いいから」みたいに奥のお部屋に連れて行っちゃいました。
前回『口紅』では、売れない漫才コンビ・ツービールたけしさんを演じられた方とは思えない(笑)
でもそのギャップが素敵なんですよね。
石橋さんとお話していると、その大きくて真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうな気が・・・。
いやいや・・わたしは一途な女ですから(笑)
by berurinrin | 2009-03-10 23:02 | 稽古場/舞台裏話