巣林舎第6回公演『『燦静胎内捃(ふたりしずかたいないさぐり)』

巣林舎第6回公演・紀伊國屋書店提携公演
『燦静胎内捃(ふたりしずかたいないさぐり)』 in 紀伊國屋ホール(10/18)

作      近松門左衛門
脚色・演出 鈴木正光
企画・監修 鳥越文藏

平家を滅亡した源頼朝(いわのふ健さん)は、義経(沢田冬樹さん)の謀反を疑り
義経を殺戮しようと土佐坊(高畠雅人さん)を向わせるが、義経が討ってしまいます。
これにより頼朝の敵となった義経と弁慶(城全能成さん)ら主従は、
追討の手から逃れながらの流浪の旅を続けることになります。
義経の愛妾・静(藤崎あかねさん)は、途中で義経と別れて身重の疲れを尼の庵室で
休息を借りている処に、梶原景時ら(青木勇二さん)に襲われ拉致されます。
臨月が近づいた静を連れた梶原は、偶然にも義経を慕う大津二郎(若松泰弘さん)と
妻・凛(金沢映子さん)の営む旅籠に宿泊することになります。
そして産気づいた静とその子を守る為に一計を巡らします。
その頃、義経一行は苦難の末に奥州・平泉への最後の難所・安宅の関所に到着しました。

この難しい題名。近松作品の中でも、一番難しい題名だそうです。
「ふたりしずかたいないさぐり」・・最後に「り」とありますが
これが「る」と解釈することもできるそうで、「り」と「る」とニュアンスが変わってきます
この「ふたり」・・「二人」静御前と同じく臨月を迎えた大津二郎さんの妻・凛さんの
壮絶で残酷な出産にまつわるエピソードが、一つの大きな柱になっています。

めちゃめちゃ憎たらしい(苦笑)感じの梶原氏が、静の生まれた赤ちゃんが
女の子なら無罪放免、男の子ならその場で首を切ると宣言すると
大津二郎の妻・凛は、
「もし静さんの生まれた赤ちゃんが男の子だったら自分のお腹を切り裂いて
赤ちゃんを取り出して欲しい」と夫に頼みます。
「もし女の赤ちゃんだったら、赤子の二人の命は救われ
もし男の赤ちゃんだったら、身代わりに・・」
それは、義経と共に奥州に追従する事が叶わなかった夫。
その上、主君である義経の母を殺戮した盗賊が大津二郎さんの父であり
いままで凛の2度にわたる死産が、義経の母の恨みによるものと解釈した
二、三重の責めを負った夫への妻としての務め。
夫を羽交い絞めにして無理やり酒を飲ませ、勇気を奮い起こさせ毅然とした凛の姿・・・。
そして静が生んだ赤ちゃんは、男の子。
そして命を捨てて凛のお腹から取り出された子も男の子。
最悪の結果を知って息を引き取る凛の無念さ。
自分の子を、静の産んだ子として梶原氏に差し出す大津二郎の地獄のような光景。
でもまだまだストーリーは許してくれません。
あっけなく首を切らた小さな我が子の胴体を抱きしめ血の涙を流しながら
一旦は梶原氏に復讐を誓いますが、恨みの復讐の連鎖は重ねてはならない理。
妻と赤ちゃんの亡骸を抱きしめて自ら命を落とす大津二郎。
大きな命の代償に静と赤ちゃんは逃げ延びていきます。
この若松泰弘さんと金沢映子さんの夫婦の情愛の激しさに
がつんと、がつんと、がつんと、心をぎゅっと・・あまりの痛さぽろぽろ涙が・・・
かわいそうな凛さん・・哀れな赤ちゃん。ふぇ~ん二郎さ~ん
色んなものを背負ってしまった静さんも可哀相で・・・。

と、押し寄せるように場面は、勧進帳。それも近松バージョンということで
一人先に安宅の関所に向う弁慶が、もし捕まったら、ほら貝を1回。
そおしたら自分の事は捨てて、即行京に戻って再興の時を待って欲しい。
成功したら3回鳴らすので追ってくるようにと、言い残し去って行きますが
残念ながら聞こえてくるのは1回のほら貝の音色のみ・・。
けれど彼らは、背を向けることなく弁慶の居る安宅の関所に向います。

そこには、関所を守る富樫左衛門(三木敏彦さん)と捕らえられ縄を掛けられた弁慶。
白紙の巻物をまんまと勧進帳とだまして読み上げた事がばれて捕まったのでした。
目の前にいるのは、大男の弁慶と義経に似た男。
変装がバレないように、弁慶は体当たりで義経を突き飛ばし、蹴り上げて倒します。
その激しく切実な弁慶の姿に打たれた富樫左衛門は、関所を通らせ通行手形を発行し
無事に奥州に入れるように、便宜を図ってくれます。

このシーンもすごくて隣の年配のおじさんが、顔を覆って泣いておられるほど
迫力のある場面でした。わたしももう大変なことになっていましたが・・・
手配書の弁慶の似顔絵は、ちょっと違う気が(笑)
でも、城全さんてこんなに大きくて骨太体型だったかなぁと思うほど
大らかで喜怒哀楽が激しくて、ちょっと、いやかなり口の悪い(笑)でも嫌味にならない
可愛くって男っコト前の弁慶を演じておられました。
いまだかつてこんなにかっこいい弁慶っていないんじゃないかなぁ♪
そして義経を演じた沢田冬樹さんも、かっこいいのは勿論ですが
明るくて人懐っこい・・でも、やる時はやっちゃう・・まさに愛すべきヒーローを
爽やかに演じておられました。
そんな義経に愛される静に藤崎あかねさん。
くったくなく大きな声で笑ったり、怒ったり・・無邪気で可憐な静を素直に演じておられました。
そっと義経に寄り添う姿は、とっても可愛いいです。
年長者だけど、暗くなりがちな流浪な旅の道中になくてはならない
明るいキャラクター温かい人物・梶尾十郎さんに岡本正巳さん。
どっしりとした風格、厳しい眼差しの中に義経主従への哀れみをたたえる富樫左衛門を
演じられた三木敏彦さん。
見ごたえ十分の娯楽大作に仕上がっていました。

実は、私は『炎立つ』(高橋克彦・著/講談社)が大・大・大好きなので
義経主従が奥州・平泉に到着してからのその後を思うと泣けてくるんです。
頼朝なんてだーい嫌いって(笑)
んぎゃ、前回『出世景清』で城全さんが・・確か頼朝役やってましたっけ・・あちゃ(><)

あっ、終演後ロビーで偶然お会いしたのは、頼経明子ちゃん。
最近綺麗になったなぁとつくづく思うヨリちゃんは
次回文学座本公演『口紅ーrouge』ご出演です。
そして、ヨリちゃんの同期のいつも元気な松山愛佳ちゃん。
愛佳ちゃんは外部出演『向日葵の棺』城全能成さんと共にご出演です。
うきゃうきゃ鵜山仁さん♪演出の『長崎ぶらぶら節』で、冒頭の蛍のシーンで小さなサダちゃん(のちの平淑恵さんが演じる愛八さん)を演じた研修科生の寺田ゆいさん。
寺田さんは、来年研修科卒業公演を控えておられます。
3人の頑張り応援していますよん(*^_^*)

一年に一回の公演を続ける巣林舎。地味ですが、毎回ながらダイナミックで面白いです。
次回は2009年9/7~13『世継曽我(よつぎそが)』です。

10/16(木)~10/20(月) in 紀伊國屋ホール
by berurinrin | 2008-10-18 22:23 | 観劇感想
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