『オットーと呼ばれた日本人』

『オットーと呼ばれた日本人』 in 新国立劇場中劇場(6/5、7)

作  木下順二
演出 鵜山仁

1930年代。
上海でジョンスンと呼ばれる男(グレッグ・デールさん)と出会ったのは、新聞記者で
上海に派遣されているオットーと呼ばれる日本人(吉田栄作さん)。
オットーは、一触即発状態の上海の状況をみるにつけ
なんとしても日本が戦争に参入する事態を避けようと、ジョンスンと手を組み
スパイ活動をするようになります。
その後、日本に戻ったオットーと再会するジョンスン。
世界救済を視野に入れて活動するジョンスンにとって、日本を守ろうとするオットーとは
考え方に大きな隔たりが出来ます。けれど、二人は友情という深い絆で結ばれています。

すんごい、すんごい大作です!!
久しぶりに緊迫感溢れる骨太の会話劇を拝見しました。
幕開きにどーんという、お腹にずーんと深く切り込んでくるような音が
芝居の最中にも何度が使われ、その度におおっと、と戦争の序曲のように緊張感を生み
美しいセットに目を凝らすと、椅子や机にポスターや新聞が貼られていて
妙な違和感を感じ、安心感=定住感を満たさない・・スパイ活動をする彼らの
不安定な生き方を感じ取る事ができました。

前回に、ゲネの感想をUPさせて頂きましたが
その中で、外国の方が、外国人の役で、英語でしゃべっている・・
日本人と外国人が英語でしゃべっている・・
そして流暢に話す外国人が、日本語をたどたどしく語る姿・・
英語と日本語での会話・・
今までにない新鮮で生きた言葉を使われているのです。
まさに、この芝居の見事な違和感の中の見事な融合。。

オットーを演じられたのは吉田栄作さん。
立ち姿よし、声よし、芝居よし・・って感じで、素晴らしい舞台人としての資質を
お持ちの方ですね。惚れ惚れしました。
オットーさんは、国というより民衆を救おうとスパイという裏の顔を持つ人なのですが
正義のヒーローというわけじゃない。
そこそこの遊び人だし、食道楽だし、人間味もある好人物なのです。
さらりと演じる吉田栄作さんのすごさを感じ入りました。
あんまり感動したので、売っていた栄作さんサイン入りピック買っちゃいました(笑)
500円なり~

文学座からは、『ダウトDOUBTー疑いをめぐる寓話』の怪しいフリン神父を演じた清水明彦さんが、
オットーの幼馴染の検事さん。
「奥さん、用心してないと巻き込まれちまいますよ」
清水さんのご登場は、最後の最後の最後f(^_^;)なのですが、
この台詞が劇中に何度かリフレインされるのです。
初めに聞こえた時は、ぞくっ(笑)としました。
髪の毛も短く刈られた黒いスーツ姿で固い表情の清水さんの表情。
だんまりをしてる栄作さんと2人だけのシーン。広い舞台なのに息遣いが聞こえてきそう・・
優しい笑顔を封印された演技はとっても残念ですが、怖っ~かっこいいです!

初めのシーンで、不意に鄭さん(吉田敬一さん)の事務所に現れる
ちょっとうらぶれた陰のある青年を石橋徹郎さん。
斜め目線の仕草が、かっこいいですっ・・陰のある悪びれた姿・・いいっす
その後、第2幕の酒場のシーンで給仕をされておられましたが
まるで別人のような笑顔が可愛かったです(*^_^*)

そしてもう一人・・今年準座員に上がったばかりの山森大輔さん。
準座のデビュー作が新国立劇場の舞台という、素晴らしいスタートを切った彼ですが
真ん中分けした髪型、ひょうひょうと歩く姿・・中華料理を食べに行くと
いるいるこんな感じの給仕さん!と、感じるほど・・いい味出してます。
台詞は一言もありませんが、するどい演技をみせる彼・・・今後も楽しみです。
中国人のボーイさんを演じられました。

また、文学座の研修科を卒業してその後は、新国立の研修所を卒業された
北川響さんの姿を久々に拝見しました。
流暢な英語を話し、その堂々とした姿・・うわぁーーって感じです。

ラスト・・青空を見上げるオットー。
何よりも美しい美しい音のない静寂なシーンです。
まさにオットーの切望した世界。このためにオットーは自己を殺して
戦っていたのでしょうか?!
平和というのは、何もない青い空を見惚れるゆとりの時間を持てる事だとしたら
現代を生きる私たちも、たまには空を見上げて深呼吸をする
一時の時間を楽しみたいものです。
その時は、一人じゃなく心許せる友達と・・・

新劇の財産と呼べるべき作品を蘇えらせて魅せて下さった鵜山さんの姿勢が
もう・・一番かっこいいです(*^_^*)

5/27~6/8(日) in 新国立劇場中劇場
by berurinrin | 2008-06-09 22:36 | 観劇感想
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