巣林舎第5回公演『佐々木先陣ー天に向かって撃つ男』

巣林舎第5回公演『佐々木先陣ー天に向かって撃つ男』 in
紀伊國屋ホール(10/13)

作      近松門左衛門
脚色・演出 鈴木正光
企画・監修 鳥越文藏

時代は源平合戦の真っ只中。
平家は備前の児島に陣をとりますが、兵船のない源氏は手足もでません。
誰が先陣を取れるか?
そんな中、ひょんな事から佐々木盛綱さん(沢田冬樹さん)は、塩焼籐太夫さん
(世古陽丸さん)から、馬でも児島に渡れる浅瀬を教えられ、先陣を果たし
その功により備前の国主となり、塩焼籐太夫さんの娘・曙さん(山本郁子さん)を
妻に迎えます。
そして13年後・・・

本編が始まる前に、評論家の渡辺保さんが
作品についてのレクチャーをして下さいました。
近松作品として本人の署名のあるもので現存する最古のものと
されているのがこの『佐々木先陣』だそうです。

戦乱の世から、江戸時代・庶民の時代に移り変わっていくと
戦争物よりも、ホームドラマ的なものが好まれたそうで
この作品も戦乱をベースに佐々木家の家族・兄弟のお話を中心として
盛綱さんの妻となった曙さんの家族の葛藤も加わり、時代を超えても
共感できる素晴らしい作品として描かれています。

佐々木家は、戦乱の世の因果か?!
4人兄弟のうち、2人は源氏に味方し、すでに戦功を挙げていますが
父・秀義さん(三木敏彦さん)と兄・広綱(岡本正巳さん)は、平氏方についています。
父は、二人の息子を前に
自分の首を持って源氏に寝返るように、そして「功名を挙げよ」と言い残し
盛綱さんの手を借りて自害をします。
その出来事が、その後の盛綱さんの心に暗い影を落としていきます。
当時、功名を挙げることがどんなに重要なことか
それが出来ない武将の惨めさが、兄弟の対比からして切実に伝わってきます。
運良く、功績を挙げることが出来た盛綱さんですが
その為にしてしまった行為は、彼自身の心の闇の部分を広げてしまいます。

そんな辛い影を持つヒーローは、沢田冬樹さん。
沢田さんの立ち姿が、かっこいいいぃ~!
白い衣装が良くお似合いで、背中に薔薇をしょったようなりりしさでした♪
清廉潔白な爽やかな好青年が、最後に心の闇の部分を吹く出す痛々しい姿・・
壮絶な場面でした。。あまりの違いにびっくり・・すごかったですね。
ほのぼのとして繊細で優しいイメージの役柄が続いただけに
沢田冬樹さんファンは必見!の舞台でした。

盛綱さんを誰よりも大きな愛情で支えながらも時折寂しげに見えるのは
愛する夫の心の闇を知っていながらも、どうすることも出来ない
やるせなさからだったのでしょうか?!内面の美しさが染み出てくるような
山本郁子さん・・気高く美しい女性でした。

ワルに徹したのは、盛綱さんの兄を演じた岡本正巳さん。
4人兄弟のうち、一人だけ何の功績も持たないと
こうも人間やさぐれちゃうの?!と、いう位ひねくれちゃいましたね(笑)
でも、こういう役柄にもぴったりハマってしまうのが、さすが岡本さんです。

一場面のご出演でしたが、壮絶な姿を魅せて下さったのは、三木武彦さん!
息子の盛綱さんに首を切られる・・戦乱の悲劇・・・
激しいだけに息を飲んでしまう、ものすごいシーンでした。

曙さんの母は、双葉さん(金沢映子さん)
夫を殺され、殺した相手は娘の夫?!後半は、盲目となり狂女といわれ
散々な目にあってしまいますが、夫を慕う一途な姿は凛として美しく
魂を絞り出すかのような、歌声の見事さ・・・ずんときました。

綱盛さんを温かく厳しく見守るのは、醍醐貢介さん演じる畠山重忠さん。
派閥のライバル的な北条時政さん(竹本淳平さん)は、義理の父になるそうですが
二人の対比が、ハッキリしてとてもわかりやすかったですね。
裏で計り事を企てる北条氏と違い、源氏を盛りあげていこうとする姿勢は
真っ直ぐで、それゆえ双葉さんの殺害を命じても自己の為でないと、言い切れます。
深い声の穏やかさ、どっしり構えた姿はとても穏やかで
その豪快な笑い声からしても、品の良さの中にも潔さが・・まさに武人の笑いです。
(後日談として、北条氏に謀殺されるという悲劇が彼を待っているのです)

10/12(金)~10/16(火)まで in 紀伊國屋ホール
by berurinrin | 2007-10-15 22:06 | 観劇感想
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