6月アトリエの会『犬が西むきゃ尾は東』

6月アトリエの会<別役実のいる宇宙>ー新旧書下ろし連続上演ー
       『犬が西むきゃ尾は東』 in 文学座アトリエ(6/30)

作   別役実
演出 藤原新平

一本の電信柱の元に一人の男性(小林勝也さん)が、リヤカーを曳きながらやってきます。
青いビニールシートを広げ腰を下ろすと、看板を背負った男性(田村勝彦さん)が現れます。
そして一組のカップル(角野卓造さん、吉野佳子さん)
・・・最後に一人の赤い口紅を塗りたくった一人の女性(倉野章子さん)
この5人の初老の男女達の浮浪者。彼らの周りを季節と記憶が巡り回ります。

彼らを“流浪の民”というのでしょうか。
自分のパートナーの事さえも、一歩でも歩み始めた途端にその記憶は彼方に
飛んでいってしまう彼ら。
そんな彼らの意識が、定かであろうはずもなく(苦笑)
こんがらがった会話の糸口から、糸がばらばらにほぐれてしまいます。
で、観る側もまるで狐につままれたような気持ちにさせられます。
彼らが年老いて、長年の放浪の生活から体も健康ではないから?
う~ん。
きっと人間誰しも思い出したくない過去ってありますよね。
そんな思いがこの5人は、人一倍強いのかもしれません。
あまりにも強烈な出来事すぎて、自然に頭の奥底に消し去ってしまうのでしょうか?!
だって彼らは、うそを言ったり、ごまかしたりしてるとは、思えないんですもの。
とは、いうものの、素直に彼らに共感できるか?といわれると
微妙です。

さて前作品『にしむくさむらい』の後日譚とうたわれてはいましたが、
あのぞぞぞっくぅとした悲惨な出来事を、そのまま映し出している舞台では
ありませんので、初見の私でも問題はありませんが
心にざわわわぁ~とくる衝撃的なドラマである事には間違いありません。
・・・深い・・・人間の業というか本能というか・・・すごいです。
共感できないだけに、理解できない物語の怖さを感じました。

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画像については事前に劇団の許可を頂いています。無断転載はなさらないで下さいね★
by berurinrin | 2007-07-05 22:56 | 文学座観劇感想