H.H.G公演vol.9『冬のサボテン』

H.H.G公演vol.9『冬のサボテン』 in サイスタジオコモネ(12/24)

作   鄭義信
演出  高橋正徳
美術  乗峯雅寛

古びた野球場の控え室に集うのは、野球部OBの彼ら・・
彼らは、共通のある悩みを抱えているのです。。。。

『愛しのメディア』では、目の前の動きに、身を委ねて五感で感じられる作品と
例えさせて頂きましたが
『冬のサボテン』は、目の前の彼らの言葉、動き、眼差し。。一つ一つを受け止めながら
拾い集め、でも零れ落ちて消えてしまう・・・・氷のカケラ
そう・・消え入りそうな声で叫ぶ、溢れんばかりの行き場の無い想いのカケラが
すっと溶けていく瞬間を、瞬きをせずに目を凝らし見ていたい。
そんな繊細で細やかな情景を描いた作品です。

同じ作家の作品とは思えない程のあまりの違いを感じる作風ですが
共通しているのは、挫折感、絶望、偏見、手を伸ばしても届かない想い・・・
それでも夢を抱こうとする愛すべき彼らの行方・・・
愛への渇望・・・
だからといって、固いお話ではありません。
思う存分笑って、思う存分泣いて、好きなだけ・・・泣き笑いを許してくれる
温かさを持ち合わせています。

H.H.Gの今回の3つの物語・・・
生きていくのが苦しくなるくらい、切ないさまざまな思いに、
やっぱり人って、相手を傷つけながら愛していくのか?
愛しながら相手を傷つけてしまうのか?
そして自分も傷つきながら・・・・

狭いサイスタジオの役者達の心臓の音さえ聞こえそうな空間の中で
確かに、想いのカケラの落ちた音を聞いた気がしました。

~12/30まで in サイスタジオコモネ
by berurinrin | 2006-12-27 22:08 | 文学座観劇感想