6月アトリエの会『オトコとおとこ』交流会

6月アトリエの会『オトコとおとこ』交流会 in 文学座アトリエ(6/25)

この日は終演後引き続き、アトリエ交流会が開催されました。
アトリエ交流会は大抵アトリエ公演開始後、第一日曜日に開催される事が多いです。
今回は初日が土曜日だった事もあって、第2日曜日のこの日になりました。

ゲストはこの『オトコとおとこ』の書き下ろし作者である川村毅さんを囲んで
演出家の高橋正徳さんを中心に主演者全員(櫻井章喜さんは残念ながら欠席)の
華やかな交流会でした。

司会はアトリエの制作といったらこのIさん。
おだやかで柔らかい口調で開演前に毎回、諸説明をして下さいます。
前回『エスペラント』では、はっぴ姿で旅館の番頭さんのいでたちでしたね♪
今回は日の丸航空の組合員?鉢巻姿がお似合いです(笑)
お芝居を観る前の心憎いユーモアたっぷりの素敵なIさんです。

Iさんの絶妙な司会で進行され、まずは出演者による役柄&自己紹介が始まります。
『オトコとおとこ』は実在の人物を当てて書かれている方がいるので
知ってからまた観てみると、また違う視線で興味深い作品となっています。

この主演の二人の男性。
北川健三さん(小林勝也さん)→作家である川村毅さんのお父さんがモデルになっていて
芝居の冒頭の1シーン「組合員のビラを剥がすので徹夜した」は実際のお話しだそうです。
野崎夏男さん(岡本正巳さん)→映画監督の足立正生 (あだちまさお)さんがモデルです。
この足立正夫さんの写真を見ると岡本さんのように優しい雰囲気をもちながらも
この作品のようにカンヌ映画祭の帰路のパレスチナへ旅し、
越境のニュースフィルム『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』を撮影製作上映運動を行い、
パレスチナ革命に身を投じ、レバノンで逮捕拘留され三年の禁固刑ののち強制送還され
・・・っと、すごい半生を送られています。
その仲間、映画監督の植松さん(櫻井章喜さん)→足立正生さんとパレスチナへ
同行された映画監督の若松孝二がモデルだそうです。
中村彰男さん演じる瀬川さんも、前衛芸術家といわれた
赤瀬川原平さんがモデルだそうです。

川村毅さんから、作品の背景のお話がありました。
現在ブームになっている昭和という時代ではなく
自分が見た昭和を題材に大きな作品をやろうと思って、映画監督である足立正生さんの
過激な半生と普通の会社員である実夫の、昭和の過激派やハイジャックなどの事件を
やった側とやられた側の2つの視点で同時進行したのものを作りたかったそうです。
山崎豊子さんの小説「沈まぬ太陽」の主人公の恩地元さん(『オトコとおこと』では
高瀬哲朗さんが演じた労働組合委員長の大倉さん)がまさに同時代ということも
あって、大きな会社組織に翻弄される普通の社員という構図が鮮明でしたね。

また今回の演出は高橋正徳さん。
まだ20代の高橋さんは昭和の時代を殆ど知らずに育ったわけですが
一番鮮明に憶えているのは「御巣鷹山日航機事故」。
わたしも個人的にもこれは本当に衝撃でした。
彼は印象深いこの事件を踏まえつつ
太平洋戦争以降、靖国問題や自衛隊派遣、憲法改正など
平成と時代が変わっても、まだまだ沢山の問題を引きづっているということで
激動の昭和といわれつつも、時代に対し熱い人々もいる反面、冷めた人もいるはずで
今回60何役という登場人物たちが摩擦し合い、出たノイズを表せたらいいなあ・・
っと言う様なことを語って下さいました。

その後、質疑応答があったのですが
今回は本当にいつものアトリエの客層と違って主人公の男性に年齢が近い方が
多くいらっしゃるのが新鮮でしたが、やはりこの質疑応答の場面も男性の意見が
多くて興味深く拝聴しました。

また、山崎豊子さんの小説「沈まぬ太陽」の主人公の恩地元さんのモデルになった
東アフリカ研究家でもある小倉寛太郎さんは実は、高瀬哲朗さんのおじさんに当たる
そうですが、その小倉さんのお友達が客席にいらして感想をおっしゃった後、
素敵なエピソードをご披露してくださいました。

野崎夏男さんを演じた岡本正巳さんが、
「一生懸命何かをやっている人って素敵だなあって思いながら演じている」
とおっしゃった言葉が印象的でした。

約一時間程の交流会ですが、毎回素敵なエピソードをご披露して下さいます。
川村さんの次回作は『オンナと女』?ファミリー向けに『コドモとこども』(笑)なんて
おしゃっていたら、すかさず古川悦史さんが「『オトコとおかま』っていうのは」(爆笑)
当日のチケットをお持ちでなくても、交流会に参加できます。
ぜひぜひ作品の側面を理解するためにも、参加してみて下さい。
はじめて、交流会の様子をUPしたのですが、ちょっと固かったかな・・と、不安ですが
でも実際は本当に楽しいですよぉ!
by berurinrin | 2006-07-02 14:54 | 稽古場/舞台裏話