文学座+青年団自主企画交流シリーズ第一弾『卵』

文学座+青年団自主企画交流シリーズ第一弾『卵』 in サイスタジオ(5/14)

作   李康白
訳   金承福
演出  藤原新平


原始時代の博物館が舞台です。6人の市民代表の中から王様(安部健太郎さん)を選び。
うち一人は博物館長(林秀樹さん)になりました。
彼らは日夜、森からやってくる恐ろしい恐竜と戦っています。
そんな毎日で市民たちは疲れ果てているのです。
ある日、博物館長が大きな卵を持って逃げようとした所を取り押さえられます。
王様に詰問された博物館長は言います。
「王様の為にやった事です。この卵の中には偉大な王様が入っています。」
王様は苦悩して決断します。王様はただ一人です。自ら死を選びます。
市民の代表者たちは、落胆しますが、偉大なる王様の誕生に心が躍ります。
すると博物館長は彼らにギャンブルをしようと提案します。

韓国では、歴代の王様は「卵からお生まれになった」という言い伝えがあるそうです。

あなたの目の前に卵があるとします。
一人の人が言います。「この卵の中には可愛いにゃんこが入っています。」
よく見ると、今にも殻を破って出てきそうです。
あなたは、嬉しくってわくわくしています。
ところが、同じその人の口から
実はこの卵の中身は、「可愛いにゃんこ」ではなくて
「クマンバチの巣が入っています。」と言い出しました。
・・何万匹ものクマンバチが卵から飛び出してくるとしたら
あなたはびっくりして、卵を処分しようとします。
するとまたその人が「やっぱり、可愛いにゃんこだった。・・・・いやクマンバチの巣」
卵は今にも孵化しそうです。
あなたはどちらかを選択しなくてはいけません。あなたはどちらを選びますか?

・・・って、たとえ話の幼さに頭を抱えたくなる私ですが
ペテン師のような博物館長に踊らされる、あわれな王様、市民達の滑稽さ。
あまりにも今の社会における情勢の縮図を表現された寓話の世界に
のめり込んでしまいました。髪をかきむしり、苦悩に体を捻じ曲げる
あわれな市民代表者は私たちの姿です(><)

さて、この悪魔のようなベテン師の博物館長を演じた林秀樹さん
身のこなしの軽いこと、林さんの芝居口調わたし好きなんです。
流れるようなの声の抑揚さや飄々としていながらも、独自の世界感があって
観ていて心地が良いんです。今回はその独自の台詞回しが
博物館長の不気味さをより際立たせていて、かなりユニークでしたね。
真面目な市民代表者戸井田稔さん。
その実直さが仇となり、真面目すぎて自ら窮地に陥ってしまいます。
気の毒な人でした。。。

また、市民代表者の一人の神野崇さん。
アトリエ公演『アルバートを探せ』では、一筋縄ではいかないようなスリの役でしたが
今回は髪は茶髪でいまどきの若者風のいでたちが、
より市民代表者として身近に感じられて
控えめに演じられる姿が、見た目の姿とアンマッチなのですが
逆にとても好感がもてました。

でも、この舞台で最初から気になる人物と言えば、
同じく市民代表の一人を演じた反田孝幸さんです。
研修科生の卒業公演以来、久々に舞台で拝見しましたが、
めがね&スーツ姿のサラリーマン風の風貌からは、社会に生きるしたたかさを感じ
何かに掴みかかろうとする弱さ・・うまく表現が出来ないのがもどかしいのですが
怒りと怯えがミックスされたような彼の姿に感動しました。
これからも目が離せない役者の一人です。

この不思議なお話は、韓国では長い間上演禁止となった作品だそうです。

舞台が博物館ということで、たくさんの小物(美術品?)が飾ってあるのですが
ものすごーく気になりました。近くで見たかったです(笑)
美術は藤野級井さん!05年に第10回ニッセイ・バックステージ賞を受賞されました。
去年のアトリエ公演『ぬけがら』のあのリアルで、きも可愛い“お父さんのぬけがら”も
藤井さんの手によるものでした。

この日、終演後
作家の李康白(イ・カンペク)さん、別役実さん、平田オリザさん
藤原新平さんをゲストに司会進行で坂口芳貞さんご出席で
シンポジウムが行われました。
かなり高度なお話で難しかったのですが、大御所の作家の方のお話を
生で聞ける事が嬉しくて・・・。楽しくて濃密な時間を過ごせました。

~5/17(水) in サイスタジオコモネAスタジオ(小竹向原)
by berurinrin | 2006-05-16 23:56 | 観劇感想
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