劇団昴公演『チャリング・クロス街84番地』

劇団昴公演『チャリング・クロス街84番地』 in 三百人劇場(4/1)

原作 エレーン・ハンフ
訳   江藤淳(ジェイムズ・ルース=エヴァンズによる)
潤色 吉岩正晴
演出 松本永実子

アメリカのマンハッタンに住む、イギリス文学と古本が大好きなエレーン・ハンフさん
(望木祐子さん)は、ある日新聞の広告で見つけたロンドンの古書専門店マークス社に
本の注文の手紙を送ります。手紙を受け取ったマークス社のフランク・ドエル氏
(牛山茂さん)は、丁寧な手紙と本をエレーンさんに返送します。
こうして二人は海を渡った手紙のやりとりが始まりました。
ロンドンは折りしも第二次世界大戦後の大不況の真っ只中、二人の手紙のやりとりは
次第にお互いにとって、かけがいのない二十年にも渡る心の交流になっていったのです。

これは実話です。
この作者が33歳頃から約二十年間、マークス社に送った手紙の経過がそのまま本に
なり、大ヒットを起こしたそうです。
始めはイギリス紳士然としていたフランク氏がエレーンさんのユーモア溢れた手紙や
ロンドンの戦後の不況の食料難の中、マークス社の社員達に卵やハムを空輸する思いやり
にフランク氏の戸惑いから、感動、親しみへと変化していく姿がとても素敵です。
そして心の交流のやりとりである書簡が、舞台の左右にしつらえた
エレーンさんの住まいのアメリカとフランク氏の居るロンドンのマークス社で
会話として取り交わされるのですが、お国柄の違いがはっきりしすぎて微笑ましいです。
そんな二人の周りにマークス社の社員達が暖かく絡みますが、これがまたまた素敵です。
こんな世界を見ていると、昨今のニュースに目を瞑り、また人を信じたくなります。
混沌と変わる社会状況に翻弄されつつ、二人の友情は穏やかに静かに・・・・
海を隔て、国を挟んで、時を重ねていくことになります。
穏やかな感動で客席を立つ事が出来る爽やかな素敵な作品でした。

初めての劇団昴・・・そして、最初で最後の三百人劇場・・・
文学座・・同じ劇団を応援しているファンとしては、劇団が専用の劇場を手放すという
決断をしたことの思いを他人事のようには、感じる事は出来ません。
演劇という形の無い芸術作品は、いつの時代にも私たちに笑いと勇気と感動を
与え続けてきてくれました。情報が先走る今の世の中には、
アナログの世界かもしれませんが
でも・・・でも・・
ぜひ一度、演劇というものに、劇場という場所に触れてみて欲しいです。
きっと、何か得られるものがあると思います・・・と、思う私です。

~4/9(日)まで in 三百人劇場(本駒込)
by berurinrin | 2006-04-02 00:02 | 観劇感想
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