文学座公演『女の一生』

文学座公演『女の一生』 in 長岡リリックホール(10/11)

作 森本薫
補訂・演出 戌井市郎による
演出補 鵜山仁

母を亡くし、父を先の戦争で亡くした布引けいさん(平淑恵さん)は、
ひょんな事から、堤家に身を寄せるように事になります。
けいさんと堤家の次男・栄二さん(上川路啓志さん)は、互いに好意を持っているようですが
堤家を守る母・しずさん(赤司まり子さん)から、長男・伸太郎さん(大滝寛さん)との
結婚の話を勧められます。恩義と思慕の感情の狭間でけいさんの選んだ道とは…
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長岡で初日を迎える『女の一生』を3月の東京公演まで待てずに拝見してきました。
拝見したのは10月…だいぶ時間が開いてしまいました(´艸`)
長岡リリックホールは『長崎ぶらぶら節』に次いで2回目。
ここもとても素敵な劇場空間を楽しむことのできる場所です。
そして“満席”(^^)/

今回は、実際の演出は鵜山さんなのですが、あくまで演出補にこだわり、
亡き戌井市郎さんの演出を継承するという企画。
とはいえ、戌井さんの演出をコピーするということではなくて
その次代への継承、受け渡し、バトンを託すというそんな意味ではなかろうかと
思ったのでした。
言葉や立ち振る舞いは変わらなくても、俳優が異なる事により、その人の雰囲気から醸し出される
匂いや声、そんな少しずつ環境やさまざま感情の変化を繊細に形を整えていく
そしてノスタルジックに故人に心をはせてみたり
キャストもバランスよくベテランと若手の方々のコラボもよくて、特に若手のキャストが年齢を重ねて
演じ分けていかれる姿は、今の固定されがちな姿を超えてとても新鮮
なんて素敵な企画だと思いました★

と、それらは後追いで、
その言葉の美しさ、所作の美しさ、彼らの一歩引いたところで動く感情の切なさに
胸が詰まるほどの大きなうねりを感じて、ただただ感動してしまったのでした。
人間というのは、そんなにやわにできていないんだなぁ~って
それなりに生きていける
そう、明日も生きていける

天涯孤独な娘・けいさんは、平淑恵さん。
戦中戦後を翻弄されながら、堤家を守りたくましく生き抜く女性を演じられていました。
少女から女性、老いと年を重ねて変貌する姿は圧巻!
特に手の動きに年月の経過というのが重ねて見えるものなのですね。

けいさんの初恋は、栄二さん。演じられたのは上川路啓志さん。
けいさんとのたすきの引っ張り合いのほのぼのした微笑ましいやり取りから
時に敵対するけいさんとの関係、そしてラストシーン。
クセのある芝居をする人だと思っていましたが、クセのある人物を演じる機会が多かったという
本来の上川路さんは、きっと栄二さんのような真っ直ぐした素直な人物なのでしょうね。
とても新鮮な気持ちで上川路さんの栄二さんに出会うことが出来ました。

栄二さんのお兄さんで商売が苦手な学者肌の伸太郎さんは、大滝寛さん。
堤家の長男として家業を継ぐために、けいさんと結婚します。
穏やかな佇まいで、一歩引いたところに居場所を確保しながら
けいさんとの見えない感情の激しいぶつかり合いを感じました。
でもそれは愛情があるからこそ、その愛情の上にけいさんがけいさん自身として生きていられた
のではないかと思える深い情愛を感じることが出来ました。

けいさんと栄二さん、そして伸太郎さんの三人の運命のキーパーソンとなるのが
伸太郎さんと栄二さんの母・しずさん。
清国との貿易により繁栄した堤家の当主を亡くしてなお、家業を守りつつけている
凄腕の女性です。
きりっとしたすきのない着物姿、美しい立ち振る舞い
赤司まり子さんが演じられました。

堤家の長女・聡子さん(松岡依都美さん)は、今で言うと、こじらせ女な女性?!。
いかにもお嬢様で可愛らしい癒し系な女性。
「困ったわぁ~」と、あんまり困ってなさそうな姿が可笑しい(笑)
どんな役でもまるごと自分に受け入れられる、
いづちゃんの新たな一面が垣間見れた聡子さんでした。

歌が好きな堤家の末っ子・ふみさん(松山愛佳さん)
着物姿のお嬢様というと『殿様と私』の雪江お嬢様のイメージが強くなるのですが
この作品では、けいさんともども同じように年齢を重ねて生きていきます。
十代、二十代後半となったふみさんの落ち着きとその静かな変貌振りには驚きました。

しずさんの弟・章介さん(石川武さん)。
お酒が好きで陽気な人物。しずさんの仕事を助け、しずさんから引き継ぎ仕事に満身する
けいさんの良き理解者でもあり
けいさんの叶わなかった恋心を知ってる人物。
彼自身、けいさんへの想いを秘めつつ献身的にささえる姿には胸を打たれます。
石川さんの声がまた軽やかだけに、言葉の重さとの屈折した感覚にどんと切なくなるのです。

けいさんと伸太郎さんの間に生まれたのは知栄さんこと演じられたのは藤崎あかねさん。
前半では子役さんが演じられて、後半第四幕で二十代に成長した姿で登場します。
甘えたい盛りの幼少期に、仕事追われ忙しい母。その母の姿を厭わしく思う父に挟まれて
屈折しした孤独な影を背負った知栄さん。
あかねさんは、いつも心に潜む底知れないパワーを感じる役柄が多い気がしますが
今回は静かに耐える女性をひたむきに演じられていました。

聡子さんに料理でツリながら、音楽でふみさんと結婚しちゃうのは野村精三さん。
演じられたのは鈴木弘秋さん。
ぶきっちょそうで純朴そうな青年から
どっしりとした実業家に変貌する後半にかけての姿は
目を見張るものがありました。
そしてラストに入る刑事さんの姿は、同一人物とは思えない緊迫した空気
色んな姿を見せてくれる鈴木さんですね

職人の井上さんは、今村俊一さん。
美味そうに羊羹を半分食べて、半分は大切に半紙に包んでお持ち帰るしぐさが
粋な感じその表情の温かさが素敵でした。そして、目深に被った帽子から除く目の怖い刑事さん姿!
出番が少なくても印象に残ります。

堤家の女中、清ちゃんを下池沙知さん。
職人、井上さんのとのやり取りは、ほのぼのムードで観ていてほっこり★
やわらかくて無邪気な笑顔が輝く沙知さんなのでした。

と、久しぶりのUpでございます。
ほんと言葉のボキャブラリーがなくて、お恥ずかしい限りです。
ともあれ、開演のやわらかい音楽、言葉、衣装、しぐさ、どれも愛おしく
楽しくて、あっという間の3時間。
まだまだそのまま座って観て聴いていたい…そんな状態でした。
そのお芝居が3月、東京日本橋三越劇場で開演です。
長い旅公演を経て、どう変わっているのか?!とても楽しみです!

えっ3月まで待てない?
そんな皆様は1/18(日)13:30八尾プリズムホールにて公演がありますよ(^^)/
(問い合わせ先:八尾プリズムホールチケットカウンター072-924-9999)
なんとアフタートーク付!!素敵ですね~

10/11(土) in 長岡リリックホール

by berurinrin | 2015-01-02 23:57 | 文学座観劇感想
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