劇団わらく公演『壁あまた、砂男』

劇団わらく公演『壁あまた、砂男』 
                     in SPACE雑遊(1/31)

作 佃典彦
演出 勝俣美秋

土の民と呼ばれる人たちが住むこの町では、軍事練習がいまや始まろうとしています。
彼らが住む先に長く伸びる壁が広がり、その壁の向こうから彼らを襲ってくるらしいのです。
そんな彼らが住み町に、二組の旅人たちが現れます。
バケツをたたいて歌う女性とその姉妹。そして風の民と呼ばれる男性二人。
姉妹たちは『つきもの』を探して、旅をしているのでした。

すごくすごーく気になっていた劇団です。
おととしの秋に西岡野人さんが客演した作品ZOOLI LA PONTONCO vol.8「Gift」というのを
拝見したのですが、これがめちゃめちゃ面白かったのです。
コンポラリィダンスというか、男性3人と女性たちで
女性たちはクラッシックも踊れちゃう見事な人たちと相反するメンズ達(苦笑)
銭湯をテーマにしたいくつものオリジナルのシチュエーションからなる作品でした。
作品も面白かったのですが、衣装と小物使いがこれまたユニークで、そのハイセンスさに
とても気になっていたのです。

で、今回の作品。
作家の佃さんといえば文学座公演『ぬけがら』と『タネも仕掛けも』を書かれたお方です。
ちょっと不思議な作風でほのかに香るきゅんとしたお話かと思えば
いやぁ~ずんと落ちる、絶望的な厳しいオトキバナシでありました。

グレーのパーカーを着た男女が思い思いに舞台に上がって、雑談しています。
いったい何人登場するの?と思うほど、気が付くと狭い舞台にわらわらとした人の輪が出来上がりました。
すると静かな前説が流れてきます。
「…と、いうこと」と、妙に耳障りな観客への呼びかけ…

一つの家族が焦点になります。
母親(井内ミワクさん)は圧倒的な力を持ち。夫(勝俣美秋さん)も妻には逆らえません。
母親に反抗する息子(救仁郷将志さん)を砂に埋めて反省を促します。
次女(大迫綾乃さん)も母の言うなり・・
反政府運動に走った長女(長橋佳奈さん)とは全く問題外。
お金やステータスのために、夫と息子を軍隊に入れようとしています。
嫌がる夫は、人間であることを拒否し犬になろうとします。

元は自分たちの国を持っていた風の民と呼ばれた二人の男性。
いつしか隣国に土地を奪われ放浪する身に…。この二人の関係かなりゆがんでいます。

反政府運動に身を投じる長女も、信頼すべき仲間たちを信頼できずに
仲間たちとの間にいざこざが…

目が不自由な次女の背中に乗る、足が不自由な姉は、話すことができず
バケツを叩いて唯一歌を唄う三女に首輪を付けて歩く姿…
不幸を売りにする彼女たち

そんな風に、見た目ににも相反する感情がぶつかりあう姿は、意外と陰湿でなく
コミカルな様相で、これまた観ていて相反する感情が生まれていくのですが
人を信じられなくなって生きていくことに、その先に幸せな感情が生まれるのかと
祈るように思っても、人を疑って生きていくということは
自分否定にも繋がっていくことになりえるという静かな恐怖が、じんわりと伝わってきて
ぞくぞくと絶望的な気持ちになっていきました。

始めの『…ということ』は、劇中の放送で「幸福」を全否定するシュプレキコールの語尾。
舞台の中に砂男は出てきません。
母親の中での砂男=希望という表現をしていました。
それが、みんなにとって希望なのか、絶望なのか
全編を通して、俳優たちは舞台を囲み、自分の出番が終わるとパーカーのフードをかぶり
作業を続けます。
山のように積まれた軍手を一枚一枚、丁寧に同じ向きに広げ
乱れると直し、ひたすら黙々と並べていきます。
その手は、壁に向かって戦う手なのか守る手なのか
でもいえるのは、その先に希望の光が見えないという…
悲しい未来のおとぎ話でした。

軍手にしても思った通り小道具の使い方が、とてもユニークで
バケツには「火の用心」って書いてあったり、砂に埋められた長男の姿を俳優たちの身体
を使って砂を表現したり、また個性的な俳優たちが揃っていて
とても楽しいユニットで今後も観続けたい劇団になりました。

1/31(金)~2/7(火)まで in SPACE雑遊 








 
by berurinrin | 2014-02-09 21:58 | 観劇感想
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