文学座本公演『大空の虹を見ると私の心は躍る』その2

文学座本公演『大空の虹を見ると私の心は躍る』 
                       in  紀伊国屋サザンシアター(12/6、12)

作  鄭義信
演出 松本祐子
美術 乘峯雅寛
照明 金英秀


この『衛星劇場』の現オーナーは安田均さん。
演じられたのは清水明彦さん。
オーナーといえども土地は借地だったそうで残念!!(><)
再就職はパチンコ店の警備員さん。
映画の話を語る時は、夢見心地そうにとろける笑顔が魅力的でしたね。
亡くした息子・映都君の当時を振り返って激白するシーンは、
笑顔の奥にこんなに辛い思いを秘めて日々暮らしていたのかと思う程
本当に本当に見ていて辛かったです。
でも吐き出したあとは、お茶目さ炸裂♪素敵なおとうさんでしたね
そんな清水さんは、もうコミカルな役からシリアスな役まで何でもオッケーな
素晴らしい俳優さんです。前回『ガリレイの生涯』では、こわいこわーい異端審問総監を演じられたかと
思うと加藤健一事務所の『バカのかべ~フランス風~』では、
「ナポレオンのものまねをするオウム」をご披露する超変わり者の国税局員シュバル氏を演じられました。
あの体を張った(笑)「ぽ、ぽ、ぽなぱーると~♪」忘れられません(*^^*)
ちなみに演出は鵜山仁さんでした(^^)/

帰省して映画館の片づけを手伝っているのは均さんの息子・映一さん。
演じられたのは柳橋朋典さん。
心の中にマグマを抱えていつつも外に吐き出せない。優しいだけに自分を追いつめて苦しんでる
ずっとすっと苦しんできたんだなぁ~その上、ゲイという…
やなくんは、風貌はさわやかな体育会系好青年という感じで
最近は軽快ないい人的な役どころが多かった気がしますが、
研修科時代は、ちとダークな色合いが多かった気がします。
なので久しぶりにちょっと暗い二面性のある役柄で、
悩める映一さんの表情を見れたのはかなり嬉しかったです。
そんな、やな君は前回『エゲリア』で、岡本かの子さん(吉野実紗さん)に
翻弄される主人・一平さん(大滝寛さん)の仕事である漫画出版社の担当編集者を演じられていました。

均さんの父親で、映画館の前オーナーは善蔵さん。演じされたのは坂口芳貞さんです。
足が弱くなり耳も遠いのですが、なかなか頑固なお父さん。
普段、元気な坂口さんが演じられてるとなんか不思議な可笑しさで
ほわんと場を明るくしてる気がします。
坂口さんのアイデアだったという
花壇の草木に何気なく自分が飲んでいたペットボトルの水をそそぐシーンは
いつもの日常を慈しむ光景が見えました。
そんな坂口さんはアトリエの会『十字軍』で、倉野章子さんと夫婦でちょっとコミカルな
死者を導く幽霊の役を演じられていました。

映一さんが、父・均さんに「バイトの先輩」と言って紹介したのは、菅原太一さんこと木津誠之さん
東京で一緒に暮らしてる映一さんの10歳年上のカノジョ。
黙って帰省した映一さんを追ってやってきました。
ぴちぴちのTシャツ姿が艶めかしい(笑)自然なしぐさが可愛らしかったです。
(舞台が終わった後までオネエ語になっていたのは秘密です(笑))
いじられキャラの太一さんですが、口の悪さとは反対に優しい人柄で癒されました。
ラストはラブラブじゃんと云いたくなるほど乙女になってましたね(^_-)-☆
そんな木津さんですが、前回は『ガリレイの生涯』では、
どたどたと大きな足音を立てながらガリレイ氏(石田圭祐さん)に本を届けるガッフォーネ氏
出番が少なくても絶対印象に残る素敵で貴重な俳優のおひとりです。

『衛星劇場』の従業員は、浮気した彼氏と別れ話で揉めてる浜田福子さん。
演じられたのは頼経明子さん。
映画館が閉店した後は、駅前のスポーツジムのジムで働くそうです。
太一さんとは仲が良いのか悪いのか(*^^*)合えばお互い悪口でじゃれあう関係ですが
そこにいるだけで、柔らかい空気感を見せる女性らしさを感じさせました。
そんなよりちゃんは、最近は外部出演で大きな舞台でその存在感を魅せて下さっています。
文学座では初演からのメンバー『長崎ぶらぶら節』では
芸者さん♪艶っぽい歌声をご披露して下さっています。

自宅とスーパーの中間地点に映画館があって、このロビーで休憩していくのが日常なのは
佐々木須美江さん。演じられたのは、山本道子さん。
認知症の母からの暴力を受けながらの介護で、このロビーという場所が
須美江さんの憩いの場所…逃げたくても逃げられない日常の苦しさが、
元来明るくておおらかな性格であろう須美江さんの表情から伝わってきます。
介護はねぇ~もう近い将来他人事じゃありませんから・・切なかったですね
前回『ガリレイの生涯』ではガリレイ家の家政婦でアンドレア(亀田佳明さん)のおかさんを
愛情深く演じておられました。

ここの従業員の映写技師として働いているのは、大野守さん。
うさぎの着ぐるみを着て、寡黙な大野さんはうさぎの着ぐるみが体の一部のようです。
演じられたのは、山森大輔さん。
ただただ暑いらしいです…着ぐるみ(笑)
須美江さんから「暑い?」と聞かれて、パントマイムで木を切って、薪をくべてお風呂を沸かして
「ん~熱っ!!」を表現されてましたが、このパントマイムは山森君のオリジナル(^^♪
台本では「守、「暑い」をジェスチャーで表現」(悲劇喜劇1月号に掲載されてます)
としか書いてないのです。で、いくつか案を出してこの「お風呂」編(笑)が選ばれたそうです。
が、この着ぐるみの中に救いを求めた大野さんの悲しい事情…切なかったですね。
でも、須美江さんが、がっと無邪気に大野さんの心を開いてくれて
見ていて救われましたねっ!!素敵な歳の差カップル誕生でした。
山森君といえば『女の一生』の刑事。セリフはありませんでしたが、あの目力の凄味…。
今も忘れられないです。
地味ですが、とても雰囲気のある役者さんで、とても彼の芝居が好きなのです。
劇団の芝居でこんなにいっぱいしゃべってくれて嬉しかったなぁ~
そーいえばtvドラマ『遺留捜査』で刑事役だった山森君
はじめは微妙なガヤ的な映り方だったのに、だんだんセリフが増えて
最後は「山森刑事!」って呼ばれてました。(って、役名そのまんまですが!(^^)!)
きっと山森君の芝居に対する評価だったと思います。
噛めば噛むほど味わい深い、そんな山森君をぜひ今後もご注目下さいね。

今回のお話は誰もが主役になりえるバックボーンがしっかり作られた作品だと思いました。
この作品の素敵なところは、やっぱ登場人物の誰もが主役になりえる物語と
なっているところだと思います。
みなさん、もがき苦しみながら生きてる群像劇。
だからこそ素晴らしい人選のキャスト、座組のレベルの高さがうかがえました。
つまるところめっちゃ楽しかったです(^^)/






by berurinrin | 2014-01-03 21:35 | 文学座観劇感想