文学座4月アトリエの会『十字軍』

文学座4月アトリエの会『十字軍』in文学座アトリエ(4/16)

作  ミシェル・アザマ
訳  佐藤康
演出 稲葉賀恵


ぼろぼろの身なりをした二人の子供が人形で遊んでいます。
そこへ小さな箱が括りつけられたパラシュートが落ちてきます。
興味津々で手に取る子供達・・ここは紛争地帯。
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めんどりおっ母(山本道子さん)は、少年十字軍に参加した
14人の子供たちの後を追って村を飛び出しました。
道中、出会う人たちに子供たちの行方を聞きながら
何百年とひたすらエルサレムへの道を歩き続けています。

稲葉賀恵さんの文学座アトリエデビュー作でございます。
ご覧になりましたか?
チャレンジャーというか、すげかったですねぇ~
この『十字軍』という戯曲は、「現代フランス語圏演劇」というシリーズで、
すでに発売になっておりまして、このシリーズの第一回目の発売が、
今から2年程前で、フランス演劇の言葉のまわりくどさが好きでf(^_^;)
全部読もうと!その時にすでに購入して一度読んだんですが
さっぱりわからない(笑)ト書きがめっちゃ少ないし、言葉は詩的だし
でも、アザマさんの事、めっちゃ気になったのは、
鵜山仁さん♪が、新国立劇場の演劇部門の芸術監督を務めておられた時に
シリーズ同世代【海外編】のイベントとして『タロットカードによる十二のモノローグ』という
リーディング公演を上演されました。
それが5人のフランス人の作家による作品で、
その中の一人がこの『十字軍』の作家・アザマさんだったのです。
当時、大道芸的な演出で、小劇場を中心にロビーやクロックルームの前と
作品ごとにシチュエーションを変えてモノローグを演じられました。
その中でもよくわかないのがアザマさんのモノローグで、
だからよけい意識しちゃったのだと思いました。

で、公演を前に『十字軍』の稽古場を見学させて頂く機会がありました。
アトリエに入ったらあるのは四方向にある客席と唯一のセットでもある小道具の無数の鞄たち。
拝見させて頂いたのは、戯曲を読んだ時に「うっ」と思ったエグくて悲惨な理不尽な場面。
そう、クリム(沢田冬樹さん)とイスマイル(佐川和正さん)のシーン。
イスマイルの近所のおじさんのばらばら死体を見つけ
水汲みバケツを持つ老婆(中村彰男さん)をスパイだと撃ち殺してしまうシーンでした。
この場面を説明するだけでもちょっと引く感じですけど、
笑っちゃったんですよ稽古場で私f(^_^;)
吹き出しそうになっちゃって、思わず手で口を押えちゃったんですけど・・
(後から笑っていいんだよって、彰男さんに言われてホッとしました)
その時に、演出の稲葉賀恵さんの死生観というか
例えて、それは彼女のおじいさまの死にまつわるエピソードだったのですが、
それが悲しいけれどコミカルな出来事で、日常と非日常というか道徳というか
他人から見たら非道徳となるべく、なぜかうなずけちゃうお話だったのです。

現場というと、彼女よりもキャリアも年齢も先輩である出演者の俳優たちが
彼女の演出に対しては聴く姿勢を貫き、シーンで止まるとアイデアを持ち寄ったり(*^_^*)
ベテラン俳優の彰男さんが、稲葉さんに対して敬語で位置確認を聞いたりと
みんなで作り上げよう盛り上げようとしてる雰囲気がふあっと伝わって、
かなり感動しちゃったわけなのでした。

で、そんな事を思い出したりの初日。
開演前アトリエのロビーで戦闘態勢でがちんこ状態の稲葉さんと軽く会話していたら
翻訳をされた佐藤康さんがさりげなく
「もうやることはやったんだから、あとは俳優にまかせればいい」って、
稲葉さんの背中をポンと押すような優しい励ましの言葉をおっしゃって
ホントその通りですね♪みたいな(*^_^*)その口調の温かさに感動~!
そして女性演出家誕生の瞬間を立ち合う為に集まった
懐かしい顔や会いたかった人、文学座を応援する素敵なファンの皆様
そんな方々の姿を確認しつつ客席に向かいました。

今、まさに死んでいく人たちのお話。
子供も女性も人種も容赦ない世界です。
私たち観客と同じ目線同じ立ち位置で、彼らは生きて死んでいきます。
わたしたちは目撃者でもあり、被害者になりえるかもしれないくらいに
彼らと近く接して時に関わってしまいます。

初日を過ぎた数日後。
読売新聞の朝刊に「紛争生き抜く、子供の力」とういタイトルで
UNICEF大使である黒柳徹子さんのインタビュー記事が載っていまして
何気なく読んでいたのですが、ある文章に鳥肌が立ちました。
それは、旧ユーゴのコソボでの内戦の話の中にありました。
ぬいぐるみに地雷を仕掛けてあって抱いたら爆破したり、
ジュースの缶が畑に転がっていて開けたら爆破する・・
ぬいぐるみを抱きしめる子供の気持ちを知り抜いている
子供を対象とし狙った大人が作った兵器の話が載っていて、
まさにこの『十字軍』の冒頭のお話とそっくり・・
折しもマラソン会場でのテロ行為・・圧力鍋の話
今もなお、そこかしこにめんどりおっ母が、14人の子供をさがして、
今にも息絶えようとする子供たちに励ましの言葉を投げかけているのかと思うと、
あまりにも現実と非現実の世界の狭間が浅すぎて近すぎて
恐ろしくなってしまうのでした。

終幕、めんどりおっ母の子供たちの白い遺灰が、銀河系のようにきらめいて
シューマンの優しい調べとその情景の美しさに救いを見出したのでした。

挑戦的で過激な作品だけに賛否両論あると思いますが
最低限の小道具だけを武器にして、あえて挑んだ稲葉賀恵さんの度胸!
すごい演出家が現れた!って思いませんか(*^_^*)
まじ稲葉っちてば、めっちゃ頑張ったしぃ~
ぜひその目で観ておいた方が良いと思いますよん♪

4/16(火)~30(火)まで in 文学座アトリエ
by berurinrin | 2013-04-20 23:56 | 文学座観劇感想