久保田万太郎の世界 第十回公演『わかれ道』『通り雨』

文学座有志による自主企画公演
 久保田万太郎の世界 第十回公演

作   久保田万太郎
演出  黒木仁

久保田万太郎の会
祝十回公演おめでとうございます♪
続けて下さって感謝申し上げます。
この久保田万太郎作品、なかなか手ごわい
毎回、演じる俳優陣のみならず観客にも負荷のかかる作品で
集中度も半端ないのです。
と、いうのも大抵一幕物で、時間も短いだけに
切り取られた一つの場面から、フルに頭を回転させ前後の事の流れを推測し
役者の細やかな動き、衣装や持ち物で生活の匂いや季節を感じ・・
そして美しい俳優の所作と立ち姿にうっとり・・(*^_^*)
観客の私たちも舞台の見方の基本を学ばせて頂くような気持ちです。
終わると結構ぐったりしちゃうのですが
それがまたかなり気持ちがいいのです。
さて、十回目公演となる今回も素晴らしい二作品を魅せて頂きました。

樋口一葉 原作
『わかれ道』

一人暮らしのお京さん(山本郁子さん)が外出の為に、留守を預かっていたのは
身寄りがなく、お京さんを姉と慕う吉三さん(南拓哉さん)
そこへ同じ仕事仲間の文次さん(西岡野人さん)が訪ねてきます。
昼間、親方の息子と喧嘩した吉三さんに対して気遣う文次さんでしたが
逆に怒らせてしまいます。
そしてお京さんの帰宅・・
いつも違うお京さん・・そして昼間の喧嘩の原因が明らかにされます。

と、ある適齢期を過ぎてなお美しい身寄りのない女性の生きる術・・
いわゆるお金持ちの旦那はんのお世話になって第二の人生を歩むべきか
まだまだ女性の地位が男性と同列とはいえない時代です。
同じ身寄りのない吉三さん=きっちゃんと姉弟のような関係から
きっとお京さんは、違う感情が生まれてきたことを感じ取ってしまったのだと
思いました。自分の感情の変化にとまどいながら、二人の行く末を…
自分の未来をさとってしまったのかもしれません
う~切ない。
さっぱりした二人の会話から漂ってくる匂い。
必死にお京さんの決意を覆そうとするきっちゃんの訴えも、まだまだ幼い。
出て行こうとするきっちゃんの手を必死で掴んで、その手の熱さが
お京さんの言葉にならない思い。
「放せ」と言いつつ振りほどけないお京さんの手の中に委ねたきっちゃんの手。
あうあうあう・・
もう二度と元に戻れない二人の決別の時だったのですね。

幸せとは言い難い、けれど新たな人生を決めたお京さんは、山本郁子さん。
うわぁ~と匂う程の美しさでした。
紫の頭巾を被っての帰宅姿。普通の娘は、夜遅く外に出ないから
人目を避けるように被っていたそうです。
桜の柄の着物も美しかったし、そのお着物を着こなす郁子さんも美しい。
お針仕事を始めた時に、糸をピーンと這ってぴんぴんって、わかりました?!
当時の絹糸は、すぐよってしまってくしゃってなったそうで、
ぴん♪ぴんと指で弾くように伸ばしたそうです。
所作も見どころの一つなのですよね。

そんなお京さんを姉のように慕うきっちゃんは南拓哉さん。
この作品で、くぼまん(笑)デビュー♪
すごいプレッシャーだったと思いますが、
本当に頑張って吉三さんを演じられていました。
火種を起こす、おもちを焼く、食べる…
当時の普通の日常の光景を普通にみせることの難しさ
亡くなった祖父が、お醤油に砂糖をかけておもちを食べていたことを思い出して
懐かしさにほろっとして、おもちの焦げた香ばしい香りが漂う静かな時間。
熱さよりも嬉しさが伝わる食べ方に、
きっちゃんの幼さが現れて微笑んじゃいます。
幼さと男っぽさの魅力を垣間見せて、お京さんが想ってしまう気持ちも納得でした。
南さん…頑張りましたねっ(*^_^*) 素敵なデビューでした♪
あとは経験を積んで作り上げられることを楽しみにしています。

きっちゃんと同じ職人として働く文吉さん(西岡野人さん)。
昼間の争い事を気にして様子を見にやってきました。
結局きっちゃんとは喧嘩別れで、怒っちゃう文吉さん(笑)
大抵、くぼまんではノビ君が怒られ役が多かったのですが
怒る男も素敵でございます。かっと頭に血が上ってぼっと出て行っちゃう。
でもそこんとこのとぼけた味わいが、下町の愛すべき男衆代表な雰囲気を漂わせて
見事な職人さん振りでした。着物の着こなし方も様になって
なかなかの男っぷりです
そーいえば、くぼまんデビュー当時のノビ君ったら、声のみの出演とか、姿だけとか(苦笑)
演じ続けることの形が今につながっていくのでしょうね。
大事なくぼまんファミリーの一員として今後もご出演続けて頂きたいと思います。

低い声にぞぞぞっとしたのは、常盤津の師匠・おわかさんを演じられた高橋紀恵さん。
お京さんが、夜の人目を忍ぶ姿その声と対照的な華やかな雰囲気です。
違和感があるのは、おわかさんの人となりの生きた環境から匂い立つ
彼らと一線を置く空気感なのかもしれません。



『通り雨』

慶蔵さん(鈴木弘秋さん)の住まいでは、仲間内で無盡(むじん)が行われていました。
欠席している喜之助さん(細貝光司さん)の縁談話が新聞に載ったことで盛り上がる反面
新井さん(吉野正弘さん)のお子さんのお葬式に参列したという榎本さん(高橋克明さん)が
遅れて参加されます。
無盡が終わり、参加者が帰宅された後、訪ねてきた喜之助さん。
結婚が決まったというのに、なぜかその表情は曇りがちです。

たった30分程の作品ですが
幕が上がった舞台の上に
赤司まり子さん、鵜沢秀行さん、高瀬哲郎さん、大原康裕さん、鈴木弘秋さん
横山祥二さんというずごい面々!!居るだけで、わくわくしちゃう豪華な幕開きです。
彼らに不思議な緊張感があるのは、くじを前にしてのどきどき感(*^_^*)
そこへ遅れて入ってくるのは、第一声を兼ねて現れる伊勢喜の女中(鈴木亜希子さん)です。
これまた緊張しちゃいますね。 うきき(*^_^*)

さて当時『無盡(むじん)』という、くじ引きのような
組合の有志で一口いくらと金額を決めてお金を出し合って、
くじで当たった人が、そのお金で融資を受けたという仕組みの事だそうです。
前身が『無盡(むじん)』から始まったという、一部の銀行とか
当時の私たちの生活に密着していたのでしょう。
『無盡(むじん)』といえど、色々あって、お芝居を観に行ったり旅行に行ったりと
娯楽としての役割もかねていたそうです。
そんな久しぶりに集う場で、互いの近況やよもや話の中で出てきた一つの出来事が波紋を広げます。

ぴったり頭を撫でつけておしゃれな克明さん。
おしゃべりやまず・・という感じですが、なんと初くぼまんって伺ってびっくりです。
朗らかでにくめない・・むじゃきな大人な(笑)榎本さんが居るだけで
場が盛り上がるそんな好人物でした。
その榎本さんの表情に釘づけになってしまいつつも、
吉野さん演じられる新井さんの表情がどんどん厳しくなっていく姿。
もの静かな佇まいをみせる新井さんの苦悩の表情は、
恐怖というより哀しみの色が浮かんでみえました。
そして『無盡(むじん)』で集まった来客が去った後現れたのが、喜之助さんでした。
すべてを知っているのは、この家の主の慶蔵さん。
喜之助さんが色気があるなぁ~と思ったら、役者さんという役どころだったのでした。
憂いを含んだしぐさやまなざしの美しさと云ったら、
着物姿の肩の線がめっちゃ綺麗♪細貝さんの繊細な魅力が溢れていました。
今更、どうにもならない秘めた思い・・
慶蔵さんの「ふっきればいい」という言葉に
この一作目の『わかれ道』に通じる感じがして、
なんともじんわり胸に響くお話でした。

終演後は、恒例の飲み会(笑)
演出の黒木さんが登場されて、小道具やお衣裳の事や作品について
色々お話をして頂きまして貴重な時間を過ごさせて頂きました。。
くぼまんを観ちゃうと、色んな事を聞きたくなってしまうのです。
南さんには「おもち熱くないのですか?」とか(笑)
やっぱ熱いらしいですf(^_^;)
南さんからは、熱さよりも食べることの嬉しさが伝わってきました
それは子供時代の生活の厳しさからきたのかしら?!とかね。
ぷりぷり怒った文次さんのノビ君は、怒って引っ込んだ後は
着替えておしるこ作りに励んでいるとか(笑)
それも慶蔵さんの食べっぷりを毎回チェックしてたそうです。
そんなこんなで、ざっくばらんに出演者の方々やその場に居合わした
文学座大好きなお仲間との交流は時間を忘れるほど楽しいものなんです。
気になる方は、ぜひ次回のくぼまんで交流しましょうね♪
ん?と後ろを振り返ると、お酒を片手に克明さんと観に来られていた
加納朋之
さんが、お話し中★なにやら企んでいるようですョ♪うふふ

数年前に久保田万太郎全集を古本で購入した私。
戯曲はまだまだ沢山作られています。
演出の黒木さんは全作品を上演するとパンフに書かれていました。
わたしもずっとこれからも見逃さない様に全作品拝見し続けたいと思っています。
いいですよぉ~くぼまん♪

3/28(木)~3/31(日) in 文学座第1稽古場(新モリヤビル1F)
by berurinrin | 2013-04-03 23:04 | 観劇感想
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