Happy Hunting Ground vol.12『リビング・ウィル尊厳死の宣言書』

サイスタジオ公演 vol.28
Happy Hunting Ground vol.12
『リビング・ウィル尊厳死の宣言書』 in サイスタジオ(8/23)

作  加納朋之
美術 乘峯雅寛
音響 栗原亜衣
主催 サイスタジオ/ Happy Hunting Ground


重度の心臓疾患で入院中のカトリさん(中村彰男さん)は、すでに余命宣告を受けている身。
助かる為には、心臓移植のみ・・・ところが、未だ日本ではドナーが圧倒的に少なく、
絶望的な状態です。
そんな生きる気力をなくしかけていた時に、
担当医タナベ先生(高橋克明さん)の親友・脳外科医ミヤタ先生(加納朋之さん)の
励ましに希望を見出し始めた時に、カトリさんの体調が急変し
自宅から駆けつけたミヤタ先生が、見舞うべく車で病院に向かう途中に事故にあってしまいます。
そんな中、ミヤタ先生は妻・ヨウコさん(山崎美貴さん)に宛てて
「リビング・ウィル」と呼ばれる宣言書を託していたのでした。

「リビング・ウィル」というのは
自分で意志を決定・表明できない状態になったときに受ける医療について、
あらかじめ要望を明記しておく文書。
たとえば、持続的植物状態になった場合に延命医療を希望しない、などの意思を伝えることができる。
生前遺書。LW。→事前指示書
(大辞泉より引用させて頂きました)

一年ぶりのH.H.Gです。

今回は、脳死を人間の死として括ってしまっていいものか?と臓器移植に対して疑問を投げかける医師・オオキ先生を
演じられた演劇集団円の井上倫宏さんを迎えてのユニットです。

死の定義ってなんなんでしょうね
心臓は波打っていて、体は温かいぬくもりが残っているのに脳死と判定される違和感。
ここんところのボーラ―ラインが、残されたものに委ねられることの判断の大きさ
脳死の体から臓器を移植して、一人の苦しんでいる患者さんを救うことができる・・
それも医療現場に携わっている家族だから、より苦悩と葛藤に悩まされることになります。
このお話は、一つの一例として
とても真剣に受け止めて考えさせられました。
そんな自分も臓器提供意思表示カードを携帯している身ではあります。
まだ健康でいるうちに家族と、何かあった場合の意思確認をしておきたいと思いました。

今回、初書き下ろしされたのは、ミヤタ先生を演じられた加納朋之さん。
作家デビューですよ!過去に書かれたものを手直しされたそうですが
構成が素晴らしい!上から目線でなく、命の尊厳を観客の私たちと共有して一緒に考えさせてくれる・・
問題を問題として提示してくれた気がしました。
ちょっとミヤタ先生が、イイ人過ぎた気が・・(笑)それは作家の独断もありですよね~
ミヤタ先生の誠実で穏やかな励ましの声が、最後まで印象的でした。

ミヤタ先生の友人で、カトリさんの担当医であり、患者と友人と医師の立場で苦悩するタナベ先生は
高橋克明さん。いやぁ~カッコ良かったですねぇ
白衣の袖をまくって、サンダルをずっこずっこ擦りながら歩く、ちょっと不良な感じもナイスです。
喧嘩っ早くて乱暴だけれど、波打つ感情の豊かさに、思わず泣いてしまいました。
克明さんったら、なんて優しい笑顔をみせてくれるんでしょうね★

心臓疾患で生きる気力を失いがちなカトリさんは、中村彰男さん。
嘘だと見破りつつもミヤタ先生の誠実な人柄に心を打たれ
心臓移植に望みをかけます。提供者および提供される側の個人情報は互いに伝えられないので
カトリさんの心臓提供者がミヤタ先生であることは知らないままに、手術が行われます。
彰男さんの死を目前とした姿と、快活に歩く終幕の表情を見て
何が正しいがわからないながらも、確かに救いが見えた気がしました。

ミヤタ先生の妻ヨウコさんは、山崎美貴さん。
夫の意思と自分の感情の中で苦悩する難しい役どころでした。
どう判断を下しても後悔してしまいそう・・自分だったらどうなるか?!
でもやはり夫の意思を尊重することを選ぶことを決めたからには
毅然として運命を受け入れる・・そんな姿に清々しさを感じました。

山谷典子さんは、ミヤタ先生の妹さん。
実の兄の事故、脳死、そして移植・・混乱の極みの真っ只中
どうにもやるせない姿が、そのまま直球にわたしの中に入ってきました。

美貴さんの妹は、佐古真弓さん。
冷静で姉を支えようとする妹。
山谷さんと佐古さんの二人の妹の姿を通して
私たちの立ち位置というか、冷静な第三者的な考え方が生まれた気がしました。
色んな立場で、答えの出せない大きな問題をどう答えを導きだしていったら
いいのか・・本当に大事な事なのですね。

医師と患者の間をつなぐ看護師の存在も大きいですね。
看護師を演じられたのは、鈴木亜希子さん。
その患者が、共に仕事をしていたミヤタ先生だったら・・
仕事の枠にはめられない彼女の苦悩もあるのです。
控えめに淡々と演じる亜希子さんの姿もまた知的で素敵でした。

さて、この日は初日!
終演後の初日乾杯で、いつもにもまして快活な彰男さんの手をみたら
あららぁ~手の平に、小さな字で台詞が書き込まれています(笑)
「見ないけどね」な~んていらずらっぽく笑う彰男さん(笑)面白い方ですね☆

もう色んな話を伺いたくなっちゃったのは、やっぱし加納さん。
初書下ろしってマジですか?!どうしてこのお話?とかね★
きっと色んな情報を入手しての執筆だけに、きっとあれもこれもと
押し付けがましく書きたくなっちゃうはずなのに、最低限の言葉で伝えようとする
謙虚さとラストの優しさ・・
H.H.Gの皆様に、「ザ・ミヤタはいい奴物語」と揶揄されながらも
共同作業で人間の尊厳を重々しく、軽々しく扱わない。温かい目線で描かれた
統一した姿勢にとても共感を持ちました。
すげーなH.H.G!

パンフに役名が載っていなかったので、ごめんなさい実名で書いちゃいました。
てか、すごい時間が経てっのUPですみません。
部署の異動があって、なんだかもう~って感じの忙しさで
まともに家のPCの前に座っていませんでした。
まだちょっと忙しくて、どこまでできるかわかりませんが・・お許し下さい。

8/23~8/30 in サイスタジオ
by berurinrin | 2012-11-04 15:09 | 観劇感想