『千に砕け散る空の星』

『千に砕け散る空の星』 in シアタートラム(7/21)

作 デヴィッド・エルドリッジ/ロバート・ホルマン/サイモン・スティーヴンズ
翻訳 広田敦郎
演出 上村聡史
美術 乘峯雅寛

ブラックホールが真珠のように繋がっているコズミック・ストリングという現象が
宇宙規模で発生し、それにより宇宙は千の欠片に砕け、世界の終幕は一週間後に迫っています。
ベントン家の母・マーガレット(倉野章子さん)には5人の息子たちがいて
末期の大腸ガンに侵された長男・ウィリアム(中嶋しゅうさん)は、
実家のあるミルファームで母の介護を受けていました。
死期を前にしてウィリアムは、ロンドンから戻ってきた三男のジェイムズ(中村彰男さん)に
家族全員で最期の時を迎えたい・・そう願いを託すのでした。

もうまもなく地球が滅びてしまう。
その事実は避けられようもなく、命の終わりに向かって、こくこくと時が刻まれているとしたら
あなたは、誰と
もしくはその時をどう過ごしますか?

わたしは猫達と過ごしてるかなぁ~ぷぷぷっ
いつものようにりんりんと茶リン君の世話をして、四方には亡きベルの写真が飾っていて・・
そう・・やっぱ自分の部屋で、静かにその時を待っているかもしれない
もしかして、今みたいにパソコンの前でカチカチしたりして(苦笑)

あっ地球の滅亡と関係があるのかないのか?
五男のフィリップ(牧田哲也さん)と次男ジェイク(大滝寛さん)の孫・ロイ(碓井将大さん)の
死者と交信をしたり、出会う前から二人が繋がっている感じ?が伝わる不思議な能力・・

誰もが逃れられない数日間の運命であるなら
多分、数日前からTVやラジオでは、最後の瞬間をどう過ごすか?とかの特番が流れ、
新聞、雑誌も特集記事が出て
ちょっとお祭り気分になって、ハイな人たちがいるかと思いきや
最後だから何をしていいやって、無法な輩も出来てきたりで、ちょとしたパニックも
飲食店は、もしかしら内輪のパーティがあったりして・・
けれども最後の最期は、騒ぎも収まって、TV、ラジオも放送を終了して、お店は閉じられ
皆んなそれぞれの場所に帰って、過去を振り返ったりしてその時を待つのでしょうか?!

もし帰る場所がなかったら・・・。

母の母(祖母)は、結婚初夜に夫(祖父)の暴力によって身ごもり、
その後、祖父とは夫婦の関係はなかったそうです。
そして母は結婚し、5人の息子に恵まれます。
幼い頃から祖母の愛情を与えられずに育った母は、子供たちへの接し方を知りません。
愛はあるのに、伝えるすべを知らない・・愛情の存在さえも定かでない母。
哀しいかな息子たちも同様に、一人一人心の壁に囲まれて、成長し、おのずと家から離れていきます。
夫は大腸がんで亡くなり、長男は、今や大腸がんの末期・・母親の世話を受けての生活ですが
世話される側、する側と、互いに淡々と義務的な役割を果たしているようで、
そこにはわずかばかりの病気の遺伝という形で辛うじて血縁の絆が残っています。

ぎくしゃくしながらも少しずつ寄添って、残りわすかな時間を過ごす彼らの姿は
様々な傷を心に負いながらも、確実に静かにそこ深くつながる愛情が沁み透っていくようで
砕け散った欠片は、元には戻らなくても、そこにあればそれでいい。
そんな単純な答えをみせてくれた気がしました。

演出は『連結の子』も記憶に新しい文学座のイケメン(笑)上村氏
上村氏が、ロンドン留学中に出会った作品だったそうです。
数人の作家による共同執筆との事・・ちょっとシーンにノイズがあったり
素直じゃないけど、意外とまとまり感のあるSFというよりもリアルなお話でした。
なんかね。みんな死んじゃう最期の時に、すでにばらばらに状態だった家族が
一つにまとまってウンネンって、なったらあまりにも嘘っぽい。
水鳥の飛び立つ羽音が何かを予感させつつ
微妙な距離感を持ちながら、同じ場所に居る・・それが精一杯の彼らなりの表現で
その姿が、言葉以上に伝わってこみ上がってくるものがあるのです。
素敵なラストシーンでした

さて文学座からのご出演者は
冷ややか固い表情の内側には、瑞々しい感情が溢れた母・マーガレットを演じられたのは倉野章子さん。
ジェイムズ演じる中村彰男さんの妻・ハリエット(西尾まりさん)にハグされて
とまどいながら、おずおずと背中に手を回すしぐさ・・
ぽろぽろと硬い表情が、剥がれて内側の姿が見え隠れしていく過程の
細やかな繊細さ・・それが、ラストの表情に出ていたと思います。
そんな倉野さんは、『連結の子』では高原直哉さん(金内喜久夫さん)の家の隣に住み
何くれと世話好きなお茶目な寿子さん。寿子さんのハワイ旅行の日焼け顔(*^_^*) ・・
いまでもしっかり目に焼き付いています(笑)

母に愛された記憶のないジェイクを演じられたのは、大滝寛さん。
やはり愛情を上手く娘に伝えられず
娘もまた自分の息子との関係が構築できずに、結果、娘ニコラ(安藤サクラさん)は家を出て
孫のロイの世話をしつつも、その関係はぎこちないもの・・
子供の頃の記憶というのは、根深いものなんだなぁ~と思います。
確か、忙しい食事の時間に、買ったお惣菜・・
でも、お皿に移しただけでも、その手間を子供は愛情だと受け取ると本に書いてありました。
意外と愛情って気づかないうちに伝わるもんなんだなぁ~と思いましたが
そんな簡単な事が欠如してしまう悲しさ・・
ジェイクと孫ロイ、そして娘ニコラ、ロイと母・ニコラとの関係の互いに溝を埋める術を知らない
そこに繋がるニコラの悲劇・・たまらない結末でした。
その事実を知ったらジェイクは、どうなっちゃうんだろう?!
そんな大滝さんは『長崎ぶらぶら節2012』では、
豪快で朗らかな青年のような古賀十二郎先生を演じられておられました。

知的な雰囲気を持ちながら、屈折した感情を持ったジェイムズ。演じられたのは中村彰男さん。
妻に対して屈折した感情があって、それは普通の事を普通に行う妻の行動を理解できない・・
そうとは思わず母親の愛情を求めてしまっている事の戸惑いなのか・・
一見、知的な雰囲気を漂わせているだけに根深さを感じます。
そんな彰男さんは、『NASZA KLASA(ナシャクラサ)私たちは共に学んだ』
では、のちに司祭となるポーランド人ヘニェクを演じられていました。

そして、この客席の頭上も他人事でなく、今にも落ちてきそうな隕石の欠片に包まれた、シンプルでかつ美しくて悲壮感が漂うこの美術は
文学座の誇る天才美術家★乘峯さんの手によるものです。

拝見したこの日の休憩時間
目の前に可憐な女性の後姿が・・と、思ったらおもむろに声を掛けて下さったその女性(笑)
なんと『長崎ぶらぶら節2012』で、鵜山仁さん♪の演出助手を務められていた稲葉賀恵さん!
髪を切って、シャープでかっこいい感じ・・って事で(笑)
今回は、上村氏の演助だったそうです。
なかなか大胆で、オモシロイ稲葉っち(笑)
『長崎ぶらぶら節2012』可児公演で、帰りの無人駅の切符販売機を壊すいう
すぎちゃん並みのワイルドさに脱帽したものです(笑)
まぁ、そこんとこは置いておいて、この稲葉賀恵さん
きっと近い将来、お仕事でもワイルド振りを発揮されます。
このお名前、ぜひ記憶に留めていて下さいね。

で、上村氏と稲葉っちのご厚意で、ちょこっと皆さんにご挨拶に楽屋を訪問させて頂くと
お~走り回ってるのは、『ボーイング=ボーイング』で舞台監督をされていた神田成美さん!
今回も裏方で走り回っていたのでした。
また近いうちに神田さんのやりたいもの魅せて欲しいです!頑張れっ
元気印の神田っちも、あれ髪切った!!

さて今回の作品・・かなりの挑戦があったと思います。
伝え合えない愛情の断片と落ちてきた隕石の欠片、そして砕け散っていく世界
私たちの体も心も、住む世界もジグソーパズルで出来ているみたい
そんな余韻に浸りながら帰路に着いたのでした。

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今回のパンフとチラシです
なんとパンフにはDVDがついていました!すごい!かっこいい~!!
(実は、まだ見てないのですが・・・f(^_^;))

7/19(木)~7/30(月) in シアタートラム
by berurinrin | 2012-08-10 23:54 | 観劇感想