こまつ座第97回公演『闇に咲く花』

こまつ座第97回公演・紀伊國屋書店提携
『闇に咲く花』 in 紀伊國屋サザンシアター(4/21)

作   井上ひさし
演出 栗山民也

終戦後昭和22年の夏・・・。
愛嬌稲荷神社の神主さん・牛木公麿さん(辻萬長さん)を中心に
生きていく為に、戦争未亡人達とお面作りと闇米を得ることに精を出す日々。
そんな時、息子・健太郎さん(石母田史郎さん)の幼馴染の稲垣善治さん(浅野雅博さん)
が戦地から何とか無事に戻ってきました。
健太郎さんの戦死の報を受けて、思い出を語るうちに
ひょっこり健太郎さんが現れました。
これで穏やかな日々が戻ってくると誰もが思った時
GHQ法務局に勤める諏訪三郎さん(石田圭祐さん)が現れます。

いやぁ~すごい作品です。
3年前、初めてこの作品を拝見した時、その強烈なメッセージに打ちのめされた思い出があります。

A級戦犯、B級戦犯そしてC級戦犯・・・
前回の感想で、祖父の兄弟がフィリピンでB級戦犯として処刑されて
その後、と、ある雑誌に英文で書かれた遺書が掲載された話を書きました。
母曰く、リベラルな叔父さんだったそうです。
そんな母から貰った本は、母の母、私の祖母の弟で昭和天皇(当時、皇太子)の海外外遊随行、
通訳を務めていたという山本信次郎さんの自伝です。
「父・山本信次郎伝」(山本正)中央出版社
中学生の時に、カトリック信者となり、昭和天皇のバチカン訪問にも随行したそうです。
主に外交面で活躍したという信次郎さん。
海軍小将だったその制服姿で、片手にサーベル、帽子そして制服の胸には沢山の勲章が飾られ、
穏やかな表情の写真が載っています。
信次郎さんは、昭和17年2月28日(66歳)の時に病の為、自宅で亡くなったそうです。

そして「いわゆるA級戦犯」「天皇論」「靖国論」・・この内容がすべてだとは思いませんが
無知なわたしとしては、何度となく本箱からひっぱり出しての情報源なのでした。
信次郎さんが、終戦まで生きていたらどんな人生が待っていたのだろうか?
海軍の末路・・・どう転んでも、悲しいかな最悪なものしか浮かばない・・・

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で、なんつーんだろ、栗山さんの演出の井上作品の感想を書く時ほど、頭を抱えるというか
すごく難しいのです。
なんつーんだろx2f(^_^;)
う~ん、多分、自分の心にヒットする瞬間が、ズレるというか・・・チト違うというか
もうひとつ私の頭をガツンとやって欲しい(マ○か(笑))
わたしの感性がブレているのか?!うん。そうだ!!

と、ちょっと悪口を書いちゃったけどf(^_^;)
でも、すごい作品です。
地獄から天国へ、天国から地獄へそして絶望から平安へ
戦争によって激しい人生の振幅を味わいさせられてしまう人々の
それでも前に向かって生きて行こうとする健気さと潔さ
絶望という悲しみを背負った人たちだからこそ分かり合える何かが
きっと彼らの生に対する執着というか、明日へと突き動かしているのだと思います。
そしてどんな言葉で費やしても、この作品を脳裏に焼き付けるだけで
誰もが、二度と戦争を起こしちゃいけないと思うはずです。
だって戦争が起こす悲劇は人を選ばないんですから

文学座からは、前回が初こまつ座参戦だった浅野雅博さん。
健太郎さんの幼馴染で、野球部でそれもピッチャーの健太郎に対して
キャッチャー無二の親友・・神経科医の稲垣先生。
無邪気に過去を振り変えるには、楽しさと苦さと苦しさが入り混じったバランスのあいまいさを
時に狂気にも似た熱を発して語る姿に、エピソードの面白さに笑いつつも
同時に違和感と胸を突く痛みを感じさせます。
稲垣先生の語る野球部員の仲間たちの瑞々しい青春時代のすぐその先に潜む悲劇の結末は
尋常な人の生きた証としては、あまりにもむごすぎました。

戦争未亡人の田中藤子さんは、山本道子さん。
義両親との暮らしの中の辛さも、そのほんわかした明るさで健気に過ごす気遣いを
感じさせて下さいました。明るいムードメーカー役だからこその
他人にはなかなか見せることのない、ふとした時に垣間見える悲哀が伝わってくる気がしました。

実は三年前には、なかなか好きになれなかったんです(><)
健太郎さんを悲劇に、周り人たちを絶望に追い込む・・この人さえいなければって
憎まれ役のGHQ法務局に勤める諏訪三郎さんを演じられた石田圭祐さん。
好き好んで日本人を狩るような事をするわけじゃないですよね。
彼も理不尽の犠牲者の一人。その冷たい表情の向こうの姿を想像すると
やりきれない気持ちでいっぱいになってしまうのでした。

終演後、ロビーで偶然観に来られていた山谷典子さんと偶然再会(*^_^*)
いやんお会いしたかったぁ~で、山谷さんは、ご紹介したように
只今、韓国ツアーの目下お稽古中です♪応援してますよぉ→キャンプファイヤー
で、そのままご一緒に
浅野さんと石田さん、道子さんにお会いできました♪
魂が、ちょっと体から離れて浮遊してる状態でしたf(^_^;)いやいやお疲れ様です。
今回の舞台では、なかなかお目にかかれませんでしたが
笑顔がめっちゃ魅力的な石田さんなのです。
終わって直後でも元気な道子さん♪
これから夏まで長丁場のツアーで全国を回るそうです。
どうぞぐれぐれもお体に気をつけて下さいね

「実はね、この舞台装置は能舞台をイメージしてるんだよ」と教えて下さったのは
いつも気軽に話掛けて下さる・・こまつ座の制作のSさんでした。
と、いうのも演出をされた栗山民也さんは、能に魅せられてこの世界に入ってこられた方
そして前回上演された『雪やこんこん』の時代設定は、昭和二十年代の終わり28、9年って事は
『雪やこんこん』の演出は、鵜山仁さん♪るん・・いや♪るんじゃなくてf(^_^;)生まれた年?!
「井上さんは、俳優のアテガキだけじゃなくて、演出家にも当てて書いてるんだよ」
と、Sさんに教えて頂き、わわわっ思わず鳥肌が立ちました。
井上ひさしさん・・・・ああ本当にすごい作家いや作者。参りました。

4/19(木)~4/29(日) in 紀伊國屋サザンシアター
by berurinrin | 2012-04-27 23:04 | 観劇感想