文学座12月アトリエの会『 MEMORIESテネシー・ウイリアムズ[1幕劇一挙上演]』その5

文学座12月アトリエの会『 MEMORIESテネシー・ウイリアムズ[1幕劇一挙上演]
in 文学座アトリエ(12/3、11)

『ロング・グッドバイ』

作  テネシー・ウィリアムズ
訳  倉橋健
演出 靏田俊哉

売れない小説家ジョー(亀田佳明さん)は、この日このアパートから出ていきます。
友人シルヴァ(佐川和正さん)は、そんな彼の様子を見に訪ねてきました。
運送屋達が家財道具を運ぶたびに、ジョーは一時の過去の思い出に浸ります。

四部作のラストは、『ロング・グッドバイ』。
前作『バーサよりよろしく』の舞台セントルイスから列車は、アメリカ中西部の某大都市。
ジョーの住むアパートにやってきました。
アトリエの床を見ると、数か所に線路の絵が描かれていたのはご存知でしたか?!
落書きの様でいて、その途中が舞台に向かって走っていて
劇中が途中下車のような・・気がついたら私たちも同じ汽車の旅をしていたんですね(*^_^*)

現在は一人住まいのジョーも、かつては賑やかな家族の団欒があり
このアパートで生まれ育ちました。
父が蒸発してから、少しずつ家族の歯車がずれ始め・・
あんなにも慈しみ仲よくしていた妹マイラ(松岡依都美さん)との関係が崩れ
子供たちの為に、保険金を残し病気を苦に自殺した母(藤堂陽子さん)
との別れを経て、そして、とうとうこの住まいと過去との決別を送ることとなります。
運送屋が、家族の家財道具を一つ一つ運び持ってジョーの目の前を通過するたび
それにまつわる小さなエピソードが、ジョーの前に浮かびます。

人生の終わり・・最後のさよならを言うまで、一瞬一瞬の出会いに別れを告るというジョーと
「こんちわ」の挨拶で始まると言うのは、友人のシルヴァ。
全く対照的な二人ですが、だからこそ長い付き合いが出来たのかもしれません。
人との出会いの度の挨拶「こんにちは」と「さようなら」・・どちらも正解だと思いますが
やっぱ「さよなら」・・別れを意識しての出会いというのは、寂しいですね
寂しくて人と寄添っていても、それでも最後の時はひとり・・
わかっちゃいるけど「こんにちは」と出会って一期一会大事にしたいと思います。
あ~でも、本当はこんな感想じゃない
もう本当に薄っぺらですみません。
でも、そんな会話をしてるジョーが切なくて可哀相で、ぐっと泣きそうになりました。
「ながいながいさよなら」ぐっとくる言葉です。

そんなジョーを演じられたのは、『財産没収』で少年トムを演じられた亀田佳明さん。
彼は、やりきれない怒りで体が震えているのに、泣いてるようにしか見えない・・
その繊細さが頭の先からつま先まで伝わってきます。
マイラの残した香水瓶の香りを嗅ぐ姿、子供に帰ってかくれんぼの鬼を演じる時のはにかんだ笑顔
くるくる表情を変える亀さまの姿に切なさでいっぱいになってしまいます。

ジョーの友人はシルヴァ。
明るくて友人想いのシルヴァ・・演じられたのは佐川和正さん。
意外と軽妙な動きの佐川さんを拝見したのは、初めて?!そうかも・・
外見もすごく納得しちゃうほどお似合いでしたよね。髪型素敵だったし
素顔ではよく見せて下さるお茶目な笑顔も、舞台で魅せて下さるとすごく新鮮(笑)
どちらかというと好青年、穏やかで落ち着いた重厚な雰囲気の役柄が多い気がする佐川さんの
新しい一面を魅せて頂きました。
そんな佐川さんは、研修科の勉強会『蝶のやうなわたしの郷愁』では
台風に直撃された町を舞台にした
夫婦の二人芝居の中で夫を演じられました。
美しきものの伝説』では、「広場の真ん中に、花で飾った杭を立てろ」と、
議論をする学生を演じられていました。

ジョーの妹マイラは、松岡依都美さん
白いワンピース姿が可愛らしかったですね。
一番救いの手が欲しかった時に、ジョーの気持ちが病床の母親に向いていて
心と体が傷ついて壊れていくさまが、まだまだ心の幼さが残っているだけに
思春期の繊細さと相まって、切なかったですね。

ジョーとマイラの母は、藤堂陽子さん。
『バーサよりよろしく』では、女主人ゴールディを演じられました。
お化粧と衣装が変わるだけでこんなに変身しちゃうなんて
女優さんてすごいですよねぇ~
田舎のドライブの話・・あのがっかりした表情が印象的でした。

マイラのボーイフレンド・ビルは、細貝光司さん。
『話してくれ、雨のように・・・』の男とは全く違う
ぼんぼん(笑)のいやーな感じ(爆)でも帽子のかぶり方かっこいいですよねぇ
「僕の口は小さいんだよ(お口をつぼめて)チュッ」ってキャーな感じですが(笑)
細貝さんだから嫌味にならない・・仕方ないって
何言ってんだか私f(^_^;)
でも一つの作品で、俳優の色んな姿が見れるのは、楽しいですよね♪

暗転の際、場面の転換で帽子を被ってTシャツ姿の彼ら
スタッフの方にしては、ちとインパクトがあると思ったら
運送屋さんたちだったのですね★う~んニクイ演出ですねぇ~
4人の中で、年長の運送屋さんは、鈴木弘秋さん
ジョーを気遣って荷物を運ぶ姿が、優しかったですね
それにしても贅沢な配役は劇団ならではですよねぇ
そんな鈴木さんは『カラムとセフィーの物語』では、二人が通う学校の校長先生を演じられていました。
ほかの3人の運送屋さんは、研修科一年生たち。
後田 真欧(うしろだ まお)さん、内藤 裕志(ないとう ひろし)さん、渡辺 大海(わたなべ おおみ)さん
三人とも個性的でユニークでしたね。
彼らの気になる今後の姿は、ぜひ研修科生の発表会をご覧になって下さいね

そして気になったのは、影の声
例えばショーとかくれんぼする相手「もーいいかい まーだだよ」と余韻たっぷりな歌声・・そう
『財産没収』のウィリー(上田桃子さん)の声でしたね。
そしてまた一から巡ってくるストーリー
列車の旅に終着駅は・・・ないのかもしれません。

さて『ロング・グットバイ』
「文学座50年史」より
60年前に文学座で『ながの別れ』というタイトル。アトリエで上演されています。
翻訳をされた倉橋健さんが、演出をされています。
ちなみにキャストは
ジョー(加藤和夫さん)マイラ(加藤治子さん)、母(北条真紀子さん)
シルヴァ(稲垣昭三さん)、ビル(高原駿雄さん)
運送屋(北見治一さん、佐藤格(小瀬格)さん、醍醐弘之さん、内田稔さん)
「文学座50年史」の年表の備考欄を読むと
「ウィルアムズを初めて採り上げる」と書いてありました。
これが文学座にとっての初テネシー・ウィルアムズ作品だったわけですね★
当時は2本立てで、カップリング作品は
あの『わが町』の作者ソーントン・ワイルダー作『長いクリスマス・ディナー』でした。
ちなみに演出は長岡輝子さん。翻訳は倉橋弘さん(鳴海四郎さんの本名)
そして休憩時間には、長倉茂子さんのオルガン演奏があったそうです。

12/3(土)~12/17(土) in 文学座アトリエ

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by berurinrin | 2011-12-15 23:16 | 文学座観劇感想