こまつ座第94回公演・紀伊國屋書店提携『父と暮せば』

こまつ座第94回公演・紀伊國屋書店提携『父と暮せば』 in 紀伊國屋サザンシアター(8/17)

作   井上ひさし
演出 鵜山仁

広島に原爆が落ちて3年後。今にも崩れそうなこの家に一人で住んでいるのは
美津江さん(栗田桃子さん)です。
図書館に勤める美津江さんは、ある日恋をします。
けれど原爆によって愛する人たちを尽く失った美津江さんにとって
生き残ってしまったという罪悪感から、恋心も疎ましくその心を固く閉ざしがちです。
そこへ亡き父・竹造さん(辻萬長さん)が現れます。
娘のために、娘の恋の成就のために・・・

7/7静岡で初日の幕が上がった『父と暮せば』が東京に帰ってきました!
いやぁ~会いたかったぁ!!お帰りなさ~い★
待ってたど~ん

あの3/11の大震災の後、いまだ瓦礫の残る町並み
未だに帰ることのできない故郷
行方がつかめず巡り合えない家族やペット達。
おとったんと美津江さんの背後に、それら東北の情景が重なります。
この日、おとったんの「広島の一寸法師」の作り話を語るシーンの
あまりに理不尽な運命への怒りが、狂気にも似た熱っぽさ・・・・
そして桃子さん演じる美津江さんのいじらしい程の頑なさ・・・
回想で語られる・・父と娘の壮絶な別れのシーン

観る度に新鮮な感情と出会うこの瞬間。
もう感動は書きつくしてる、観つくしてる・・そんな感じがあると思いきや
毎回、新たな言葉に心揺さぶられ、魂の叫びに感涙してしまうのでした。
ライブならでは・・その一瞬に出会う感動に、感謝しながら
きっとわたしはこの作品を観飽きることなく観続けていくのかもしれません。

東京公演のこの日は、いつもにもまして熱っぽい舞台だった気がします。
そして、こんなに客席から大きな拍手の音が出るんだ・・と思うほど
それは大きな大きな温かい拍手に包まれていました。

「初日の舞台とは、全然違う作品になってしまった」と、
終演後に鵜山さんの初日のご挨拶がありましたf(^_^;)
なかなか手厳しい・・ダメ出しもたんまりあったそうです。
確かに「おとったん、こわい」と冒頭の桃子さんの声からチト違って聞こえました。
あれっ、ちょっと年齢を下げたのかしら?!なーんてね
それは、地方公演で回る会場のキャパや機構の違いも影響しているのかもしれません。
すべての会場が紀伊國屋サザンシアターのような会場なら素敵なんですけどね。
とはいえ・・・本当に熱く力強い素晴らしい舞台でした。

桃子さんと歩きながら「おとったんの“一寸法師”のシーン、今回マジやばかった」
ふと後ろからひょっこり萬長さんのお姿f(^_^;)
すると桃子さん
「やばいっていうのは、芝居がひどかったってことですよ(笑)」
「なにおぉ~」と後ろから桃子さんの頭を抱える萬長さん(笑)
このお二人・・芝居以外でもすっかり父娘です(笑)

すべての人に観て頂きたい・・
昔、昔、演劇は、ひとつの情報の手段でした。
映像ではない、電波でない・・同じ空間、同じ空気を吸って演じる私たちの心の代弁者の姿を
その目で観て感じて欲しいです。
決して過去の物語ではないのですから・・

8/17(水)~24(水)まで in 紀伊國屋サザンシアター
by berurinrin | 2011-08-20 22:32 | 観劇感想