2010/2011シーズン『雨』

2010/2011シーズン『雨』in 新国立劇場中劇場(6/11)

作  井上ひさし
演出 栗山民也

江戸・・鉄屑拾いの徳さん(市川亀次郎さん)は、ある雨の日に出会った老人(たかお鷹さん)から
「行方知れずの紅花問屋主人、喜左衛門さんではないか?!」と声を掛けられます。
話を聞くうちに、喜左衛門さんになりすまして
大金と美しい妻・おたかさん(永作博美さん)を手に入れようと考える徳さん。
ところが、まんまと喜左衛門さんになりすましたものの
後に引けなくなり、死に物狂いの努力の日々の末
今や、すっかり本人に成り代った徳さんいや喜左衛門さん。。。
そんな彼の前に昔の仲間が現れます。

久しぶりの中劇場!
ここの劇場の匂いが好き。
あたたかい光が入るロビーが好き。

この作品は、井上ひさしさんの中でも非常に難易度の高い作品といわれているそうですね。
役者の力量が問われるとも聞いたことがあります。
なので、なかなか再演することが困難な作品なんだそうです。
初演は、名古屋章さんが演じられたそうです。
名古屋さん演じられた徳さんが、絶品だったそうで・・
今更ながら拝見したかった(><)
絶対、活字で読んでも面白そうですね!

難易度が高いというのは、言葉。
というのも、キーワードは東北の方言。
なにしろ生粋の江戸っ子で、中でも下町の界隈で、でやんでぃ~べらんめえ~と
しゃべっていた主人公が、自分と瓜二つと言われた大店の主人に成り済まそうとして
すり替わる為には、土地の人と同じ様に言葉を操ることが大前提。
江戸弁が出なくなるほど、必死な努力の末にお国言葉が自然に口をついてしまう・・
そんな涙ぐましい努力の先には、悲劇が待ち受けているという皮肉な結末。
よくよく考えてみると、河童の話や徳さんの語るその場しのぎのでまかせが、
うそ臭いほどに周りを納得させて繋がってしまう・・ところが、その先に
あんなことが待ち構えていたなんて・・みんな仕組まれていたと考えると
ぞぞぞぞっ・・・一番最初の老人の徳さんへの声掛けさえも・・そうなるか?!
そしておたかさん・・・いやぁ~すんごい作品ですねぇ

主人公、徳さんを演じられたのは、あの亀次郎さん。
今や時代劇、現代劇・・あげくはシェイクスピアまでこなす
器用な方ですねぇ・・じつは、初・亀次郎さんなのでした。
う~ん、約3時間の長丁場、ほとんど出ずっぱりで、すごいすごい
ただ残念なのは、ご自身の生まれ持つ品の良さが
徳さんの生れ落ちた境遇と喜左衛門さんになった時に落差が
あまり感じられなかったのは、もったいなかった気がしました。
けれどもあの所作、足捌きの見事な事・・・
歌舞伎を観ない私ですが・・幼い頃から身についた芸事の深さ
昨日今日で出来る動きじゃない・・・すごいですねぇ~

徳さんが喜左衛門さんに成り代わろうとして懸命な努力をする過程で
彼は喜左衛門としての生きがいを自分の中で見出していきます。
徳さんとしてみたら本末転倒かもしれませんでしたが
でも、人間変わろうとしたら・・変われるのかもしれない。
その先にどんな未来が待ち受けていても
なんかちょっと色んな事を諦め始めてる自分の心にガツンときました。

さて文学座からは、たかお鷹さんと石田圭祐さん。
親孝行屋と称し、物乞いのようなうらぶれた風情で
しつこく徳さんを「喜左衛門さん!」と勘違いする様子は
ちょっと尋常じゃない・・・やっぱり、ここから仕組まれたお話?!
まさかねぇ・・・んんん?!
親孝行屋さんの言葉から端を発するこのドラマ。
たかおさんならではです(*^_^*)

平畠家ご家老・浜島庄兵衛さんは石田さん。
徳さんを追い詰めるまなざしの鋭さ・・厳しかったですねぇ~
もう答えの出ている答弁。
すべての答えの方向が、どう反論しても同じ向きを示してる・・
そのやり取りをじっと聞いてる姿・・圧倒されました。

6/9(木)~29(水)まで in 新国立劇場中劇場
by berurinrin | 2011-06-23 23:59 | 観劇感想