舞台芸術学院60周年記念公演『月にぬれた手』

舞台芸術学院60周年記念公演
『月にぬれた手』in 東京芸術劇場(3/27)

作  渡辺えり
演出 鵜山仁

戦火を逃れるため、東京から岩手県花巻市の郊外に疎開してきた
詩人であり彫刻家の高村光太郎さん(金内喜久夫さん)。
農業に接したり、地元の小学校にクリスマスのプレゼントを贈ったりと
地域の人たちとの交流を深める日々。
魂を込めながら亡き夫人・智恵子さんの彫刻を作成しています。
そんな日々の中、今日も高村さんの元には、さまざまなお客様がいらっしゃいます。

3・11、東日本大震災が起こりました。
その時、お稽古の真っ最中だったと伺いました。
あれから、いくつもの劇場が公演を中止もしくは延期されました。
3/17に初日を迎えるはずだった『月にぬれた手』・・わたしもチケットを購入していました。
初日を目前に公演の休止が発表されました。
以降は、状況を検討してします・・・と、HPにUPされていました。
苦慮されている様子が伝わってきます。
後日、初日を25日に延期しての公演続行が決定となりました。
一時は公演中止も検討されたそうですが
なんとか上演の運びとなったのは、公演に携わる皆様の御苦労があったればこそ・・
楽しみにしていたゲストを招いてのアフタートークイベントは中止となりましたが
拝見できたことが何よりです。
関係者の皆様、本当に本当にありがとうございました。

高村光太郎さんについて、唯一知ってる書物は
中学の時に読んだ『智恵子抄』という作品のみ。ちと情けない(><)
その中でも『レモン哀歌』という詩。
智恵子さんが、入院中死の床にありながら
レモンを「がりりと噛んだ」という表現が、ずっと記憶に残っていまして
その前後はすっかり忘れていたのですが
改めて読み返してみると、智恵子さんの生と死の魂の息吹きが
真逆ながらも交互に激しく感じられます。
他の詩も智恵子さんに対する強烈な愛情に溢れたものばかり
どきどきしながら読みふけってしまいました。
う~ん、当時の中学生には刺激が強いなぁ~(苦笑)

お話は、花巻に疎開している高村さんの現在と
過去の留学先のパリや智恵子さんとの思い出のエピソードが行きつ戻りつ
交差しながら展開していきます。
なんかねぇ~高村さんが愛嬌があって魅力的な人物なんですよ。
高村さんと演じられる金内さんが融合してしまったかのようです。
智恵子さんがいっぱい(笑)登場するシーンは、ユーモラスで
ふわっとしたなんとも温かい空気感が包みます。
取り巻く人間関係もこれまた輪をかけて面白い
降り続く雪と静かに染み入る音楽の融合の見事なこと。。
始終うっとりと舞台に見惚れてしまいました。
その上、黄色の花たちの美しさ・・なんてこの世は、はかなくて美しいのだろう

文学座からは、金内さんの他に神保共子さんがご出演されました。
少年から農家のおばさんまで幅広い演技に脱帽です。
中でも、ちょっとませた男の子・太郎くんは可愛かったです(*^_^*)

舞台は、被災地でもある岩手県花巻市。
終演後、高村光太郎さんを演じられた金内さんから被災地に向けた
金内さんらしいちょっぴり不器用な(・・失礼)でも胸が熱くなるメッセージと
募金の呼びかけがありました。
物品販売のコーナーでは、高村さんの関係書籍があり
この舞台となった花巻の日々のエピソードが綴られていた
「山口と高村光太郎先生」(著・浅沼政規さん/発行・(財)高村記念会)を購入させて頂きました。

まだまだ復興の道は、長くて遠いけれども
一日も早く普通の暮らしに戻る日を願ってやみません。

3/25(金)~31(木) in 東京芸術劇場小ホール
by berurinrin | 2011-05-06 23:21 | 観劇感想