加藤健一事務所vol.77『コラボレーション』

加藤健一事務所vol.77『コラボレーション』in 紀伊國屋ホール(2/19,26)

作  ロナウド・ハーウッド
訳  小田島恒志・小田島則子
演出 鵜山仁

1931年、ドイツを代表する大作曲家リヒャルト・シュトラウス(加藤健一さん)は、
長年一緒にオペラを作り続けた台本作家ホーフマンスタール氏を亡くしてから気力を無くし
死を感じるほどの絶望の日々を過ごしています。
そんな夫の背中を押すように妻のパウリーネ(塩田朋子さん)の力を借りて、
すでに作家として成功しているシュテファン・ツヴァイク(福井貴一さん)と会うことになります。
シュトラウスは、すっかりツヴァイクの才能に魅せられ
二人はオペラ『無口な女』を完成させます。
折しもナチの脅威は、二人の大芸術家の人生を翻弄していきます。
なぜならシュトラウスはドイツ人、ツヴァイクはユダヤ人だったのでした・・・

全編ほぼシュトラウスの音楽が降りそそぐ美しい舞台です。
ツヴァイクと出会う前、偉大な音楽家シュトラウスは、
相棒というべきオペラの台本作家を失い、絶望と虚無の間で、すっかり老いてしまった姿・・と、いうか、
シュトラウスが現代の人だったことさえ知らなかったんですよ(><)
いやぁ恥ずかしい・・・それにしてもナチスが台頭していたドイツでの作曲活動。
どんなに優遇されも作曲家や芸術家にとって、
創作活動にたいする制約ほど厳しい拷問のような事はないと
この作品を見て一層感じてしまいました。
たとえ自分が危険な立場に冒されても・・誰もが持ってるわけじゃない
それは神から与えられた選ばれし才能なのですから、止める事が出来ないのでしょう。
それなのに家族を守るため、そうせざるおえなくなり追い詰められていく
シュトラウスの苦悩。

そして同じように才能にあふれた作家ツヴァイク。
彼もまたこの時代を生き抜くには、彼のピュアな精神には厳しい環境でした。
ヨーロッパの国であれば、どこでも生きていられる・・そう、言っていたツヴァイクは
ロンドンに亡命したのち各地を転々として故郷はるか遠く、
たどり着いたブラジルで服毒自殺を遂げられます。

折しもシュトラウスの東京二期会オペラ『サロメ』を拝見して
丁度オスマン帝国支配下で、宗教と住む場所を追われたブルガリア人たちの
過酷な運命を描いた『別れの時』(アントン・ドンチェフ作)という本を読んでいまして、
劇中にツヴァイクが語る「さまよえるユダヤ人」という言葉が、容赦なく迫害されていく
ブルガリアの小さな谷に住む人々とリンクして、もうたまらなく切ない気持ち・・・。
舞台の上手のテーブルに最初から最後まで、柔らかく当たる照明の中で輝く白い花が
二人の偉大な芸術家の根本精神を描くかの如く清らかで印象的でした。

そして、ツヴァイクの後の妻となる秘書のロッテ(加藤忍さん)の存在が、
実は気になるところで、ナチの高官・ハンス(加藤義宗さん)が、
彼女の謙虚さが、まるで存在を消すような立ち振る舞いに
対して「スパイ容疑」をほのめかす発言をされますが
ツヴァイクと共に心中する際、ツヴァイクの声明文の中で彼女自身の存在を
すべて消すように依頼する姿が、もしかしたら??まさか??と
ちょっとサスペンスちっくな色合いがありましたね

さて、文学座からは塩田朋子さんがご出演。
くにこ』に続いてのおばあさん。
知らない方が、素顔の塩田さんの美しいお姿をご覧になったら、
その変装振りにびっくりされるとでしょうね(笑)
シュトラウスをしっかり支える気丈で毅然とした妻・パウリーネを演じられました。
美しい歌声にもうっとりです

『モスクワからの退却』『思い出のすきまに』『シャドーランズ』と、
カトケンさんと鵜山さんのコラボレーション
わたしにとってどれもこれもぐっとくる作品が続いています
そしてカトケンさんの次回作は、『旅立ちの詩集』(『モスクワからの退却』の再演)です♪
演出は、初演と同じ鵜山さんですよぉ~★きゃぁ!!楽しみです。

2/19(土)~27(日) in 紀伊國屋ホール
by berurinrin | 2011-02-27 21:33 | 観劇感想
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