<エンターテイナーの表現力メソッド・ワークショップ>その1

<エンターテイナーの表現力メソッド ワークショップ>
          in ヒューマンアカデミー新宿校(12/23)

講師は鵜山仁さんと平淑恵さんです。
「講師やインストラクターとしてはもちろん、
ビジネスマンとしても自分自身の考えを「伝える力」が求められる時代。
プロの表現者による「印象深く伝える」「効果的に表現する」など、
多くの方を魅了するプレゼンテーション方法のワークショップ。」
(チラシ参照)
という趣旨の元に、一般会社員をメインとしたワークショップに参加してきました。

聴講生は20名ほど、小さなフロアにマイク無しで約2時間程の講義の始まりです。
このワークショップは、ただ今お稽古真っ盛り中、平淑恵さんの一人芝居
こまつ座『化粧』のテキストを元に行われます。
まずは鵜山さんから作品の概要と自己紹介。
「文学座って知っていますか?
文学座のお芝居をご覧になったことはありますか?」と鵜山さん。
いつもにもまして、優しく畳み掛けるような口調の鵜山さんです。

井上ひさしさんが主催のこまつ座とは、今から23年程前からのお付き合い。
同じ文学座に籍を置かれる平さんとは、鵜山さんより一期先輩の間柄。
『化粧』という作品は、そもそもも地人会の企画で井上ひさしさんが
作られた作品だったそうです。
初演からずっと28年間演じられた渡辺美佐子さんが、昨年で一つの区切りを
つけられ、今回のこまつ座での上演の運びとなったそうです。
こまつ座としては初演となり、
東京公演の後、4/28まで旅公演が入っているそうです。

「文学座の研究所から35年目・・でも、まだまだ新人のつもりです」と
「『化粧』という作品は、演劇人にとっては憧れの作品。
渡辺美佐子さんの代表作。わたしでいいんですか?と、
鵜山さんに思わず聞いてしまった位に光栄な出来事でチャンスを頂いた」と、淑恵さん。
約90分全部一人でやるわけで、
大衆演劇で女剣劇、やくざものの扮装をこしらえながら、羽二重もしてという
楽屋の話で、それだけでも大変なのに、
五月洋子のしょってる人生・・みたいなものを、かもし出さなきゃいけない・・
12/1からお稽古が始まったそうですが、膨大なダメだしの中
毎日あせって稽古をしてる日々を送っているそうです。
今日は、芝居の楽しみ方を垣間見れたらいいなぁ~と、ご挨拶して下さいました。

舞台演出って、どんなお仕事か?って鵜山さん。
「最近は、蜷川さんみたいな仕事をやっている」と
「でも実際灰皿も机も投げてないし、
どういう角度で投げればいいかもわからない(笑)」

どうやって芝居を作っていくか
台本にどうやってアプローチしていくかが一番の問題で
実例としてのテキスト『化粧』の台本の冒頭の数ページのコピーを見ながら
「音を変える」ということ。これに尽きるとおっしゃいます。

じゃあ、どうやって「音を変えるか」ということで
例えば「おはよう」という言葉。
人と出会って会話する時に「音が変わる」とおっしゃいます。
その日の天気やこの会場の5階まで駆け上ってきたり・・
中でも大事なことは、好きな相手、嫌いな相手に出会った時の
「おはよう」大きな声とか、感情がこもっていて
温度、空気、関係とかを一緒クタにして「音」
「稽古場で、音が変わらないって言ってればいいんです(笑)」
「それだけ?」と淑恵さん
「そうなんですよ」と、鵜山さん
「・・どんだけ苦労してるか(笑)こっちは」と淑恵さん。

「もっと簡単にいうと・・」と、鵜山さん。
「音が変わらないと、どうなるか?!・・・退屈するんですよ(笑)」
そもそも退屈するのは、音が変化しないから
音が変わらないというのは、目先が変わらないから。
人生の最終ゴールは死に決まっていて、最終地点によりも
どうやって寄り道していくか・・のほうが、人生にとって大切なのではないか。
音を変えて、人生をどれだけエンターティメントするかが問題で、
それが客席に届けばいいなと、音を変え続けていくことが、むしろ目的なんじゃないか。
「どういう芝居を作りたいですか?」と聞かれることが多々あるそうですが
「とにかく変わっていけばいい」と言うと、節操の無い演出家みたい(笑)と鵜山さん
でもそんなところがあって、俳優に迷惑かけちゃう

テキストの『化粧』の台本の冒頭数ページのコピーを見ながら
まずは、鵜山さんが冒頭のト書きを読んで下さいます。
ちょっと風邪気味で心配ですが、ハスキーで素敵な声です。
うっとり~★

『化粧』・・・この作品は、1982年初演。
「母」というテーマで、5人の作家が5本の一幕劇を書かれたそうで
その一つが『化粧』だそうです。
一人芝居の一幕もの。
一人芝居なので相手役は登場しないものの
ヒロインの五月洋子さん前には登場している。
「いずれにしろ、、目に見えないものを見えるようにするのが芝居の醍醐味」
だと鵜山さん。
例えば「僕は王様です」と言えば、マントも王冠もなくてもそうなってしまう。
(五月洋子さんにしか見えない)周囲に見えない10人もの登場人物を
どうやって目に見える存在にするかが、大変問題で
芝居の根本原理に準じているそうです。

で、先ほど読んで下さったト書きの解説をして下さいました。
例えば、ト書きの中の文章で
「・・観客の活発な想像力・・」→いかに予算を抑えてお客さんの想像力に委ねるか
まさに音を変えて、舞台とお客さんの仲介役を担う。
「彼女自身が信じているところによると、彼女は大衆劇団「五月座」の女座長・・・」
→まさに実は「平淑恵」であったり、「演じると事とは?!」
と、芝居作りのイロハのようなト書き。

これらの細かく書かれているト書きのエスプリは、心がけてはおられるそうですが
必ずしもすべて使うとは限らない・・・そうです(笑)

さて、では、どういう所から芝居作りが、始まるか?
「シュミレーションをしてみましょう」と、鵜山さん。
ここで淑恵さんが『化粧』の台詞の部分を「棒読み」から始められます。
ト書きは鵜山さんが読んで下さいました。
連日のお稽古の日々に「声がガラガラで・・すみません」と、淑恵さん。
初めは棒読み状態で、文字を追うようにテキストに目がいってましたが
違和感を感じて、ふと目線を淑恵さんの方に見上げてみると
淑恵さんが天井の方を見ながら台詞を語っていました。
最後の方には、五月洋子さんの姿が見え隠れしてるような感覚まで・・
女優さんって凄い・・。
「最後は、気が入っちゃっいましたね」と鵜山さん。
「昨日のダメ出しが頭をよぎっちゃって・・」と苦笑される淑恵さん。
照れる姿が、とっても可愛らしい(失礼!)淑恵さんです。

一番最初の「いよいよ客入れ・・」という台詞から始まって
言葉の背景を一つ一つ細かく検証していく過程を説明して下さいます。

五月洋子さんの①実生活)と②座長としての彼女の顔
③劇中劇『いさみの伊三郎』としての姿
と、3つの違う顔が交差していく姿が浮かび上がっていく。

「いよいよ客入れ・・」→
10人の座員との関係(付き合いの長さやどれだけお給料を払っているか?
仲がいいのか?」と、この日の自分の状態。
(空が)「くらい」→五月洋子さんの不安感
(透明座員が、透明茶を持ってきて飲む)「ありがとう」→
お茶を持ってきてくれた透明座員との関係やあしらい方、どう考えているのか?
などなど・・細かく一行一行出し切って、一ヶ月間稽古していくそうです。
「最初の一行からダメだしされて(苦笑)」と淑恵さん。

「もう一度、オーディションみたい(笑)読んでください」と、鵜山さん。
で、「今度は最初から感情を入れてお願いします」
再度、台詞を淑恵さんが読み上げます。
ひざをポンっと叩いて、いなせな感じで流れるように台詞を吐き出す淑恵さん
台本は殆ど見ていません。
読み終わると、会場からは、ため息がもれました・・
今度は、感情たっぷりに台詞を発する淑恵さん。
まさに、出だしから「音が違う」!!すごい

淑恵さんが台詞を読み終わって、まだ余韻が残る中
「演出家というのは、大抵役者崩れが多くて(苦笑)」
そう・・元々俳優を志していた鵜山さんなのでした
彼ら俳優に対して
「憧れているので、僕が出来ない事を、申し訳ないけどやってください」
「声を変えて下さい」
さまざまな音の中にアクション、目線、呼吸、息遣い、温度
雰囲気も・・音の変化を聞きたい。と、おっしゃいます。

と、ここで参加者を前にして鵜山さん
「せっかくだから、皆さんに台詞を読んでもらいましょう参加型だし(笑)
こんだけ人数があれば色んな声の発見があって、平さんにも
起することがあるかもしれない。助けると思って。。」
えーうそぉ~まじすか?まじすか?まじ??
「じゃぁ一列目の人、文章の“。”から“。”まで、読んでみてください」
よかったぁ~2列目ホッ
活字を追いながら皆さんの声を聞いてると、色んな声が出てくる
感情を出して語る人や真っ直ぐ読み上げる人、緊張してちょっと震えた声
大きな声・・小さな声。
「こんだけ音が変われば、演出はいらない」と鵜山さん。
「戯曲に沿ってるかは別にして世界が出来ちゃう」
あ~どんな声でも発する人の感情が入ってる。
感情を出さないように言っても、感情を出さない感情が入ってるし・・
面白いもんですね
「これを一人で実現しなきゃいけないから大変」と鵜山さん。
あ~そうでした。一人芝居って、芝居って大変な作業なんですね。

先ほどの続きの台詞を淑恵さんが読んで下さった後
「この台詞の間には・・」と淑恵さん。
もろ肌を脱いで、鬢付け油をつけて真っ赤な下紅を塗って、おしろいをはたいて
という所作が入ると説明して頂きました。
それも鬢付け油は、手で温めてからムラなくつけるとか、
下紅を塗ってその上におしろいを乗せると、頬がふぁっとピンク色になって
とても綺麗だとか・・
「読み合わせの時には解らなかったけど・・」と鵜山さん
鵜山さんからも、おしろいを肌にパンパンとはたく音とか
新たな音が加わることで、さまざまな変化が起こってくるとおっしゃいます。

芝居の台詞は、TVドラマにしてもそうですが
普段使う言葉で書かれていないことが多いそうで・・・確かに
どうもこのシチュエーションは違うなぁとか
どうしても台本に書いてある台詞をみても、こうは言わないだろう・・とか
でも、こう言うからには、特別な理由があるそうです。

この作品は、大衆演劇の世界なので、独特の台詞があり
所作指導を沢竜二さんにお願いされたそうです。
沢さんという方は、お母様が女剣戟、何代かに渡る大衆演劇の大看板。
で、沢さん主催で浅草で行われた大衆演劇の方々の集う“座長大会”に
鵜山さんも観に行かれたそうなんですが
その時に「頑張りましょう!」みたいに言うと、合言葉のように
誰かが「なんたって将軍さまのお膝元ですからね」と
座長さん達に気合が入るそうです。
その掛け声が、20年以上も前に鵜山さんが『雪やこんこん』という大衆演劇を題材に
した作品の時にも、やはりご覧になった“座長大会”でも同じ掛け合いがあったそうで
「絶対普段使わない(笑)」
でも、いい台詞、気合を入れる いいイントロダクションになっていると鵜山さん。
確かに普段絶対に口に出さない掛け合いですけど
なんか心地よい響きですねっ

次回に続きます
by berurinrin | 2011-01-31 23:58 | イベント