『エネミイ』シアタートーク

『エネミイ』の終演後、シアタートークに参加してきました。
司会は、中井美穂さん。
出演者は、芸術監督の鵜山仁さんと『エネミイ』を演出された鈴木裕美さんです。
中井さんと鵜山さんは、スリッパ姿。
セットそのままなので、まるで直木さんのお宅に訪問されたみたいです(笑)
ちょっとトークの為に用意された椅子の配置の間隔が広いということで
動かす鵜山さん。
「芸術監督ってなんでもやられるんですねぇ」と中井さん。
以前、文学座のアトリエでイベントがあったときも、
鵜山さんは、椅子を片付けたりしてましたっけ・・・懐かしいなぁ~


今シーズンは「戦い」をテーマに、シェイクスピア『ヘンリー六世・三部作』、別役実さん『象』、
井上ひさしさん『東京裁判・三部作』そして最後は、蓬莱竜太さんと
鵜山さんの新国立劇場演劇芸術監督としてこれが最後の作品となります。
「最後は若者で締めくくったのはなぜ?」と聞かれた鵜山さんは
バトンタッチというか、裕美さんを含めて若い世代の人たちに
次に繋げる人に世界を作ってもらいたいと思われたそうです。
「何かが終わるというよりも、続くという思い」
ぜひ蓬莱さんに新作を・・というお気持だったそうです。
鈴木裕美さんは、蓬莱さんとは3回目のお仕事だったそうで
このお話を聞かれた時に
「気の毒なりぃ~蓬莱さん大変だろうなぁ~」と思われたそうです。
「鵜山さんからは“いじめ”というお題だったし(笑)」
「いや、“戦い”“戦い”!」と、たじたじの鵜山さん。
執筆に関しては、ほんとうに大変だったようで、鵜山さんに自覚はあるんですか?と
突っ込む裕美さん
「“なぜ人は戦うのか?”というのもあって、その上なにより1968、9年を書いて
くれって、えっーて思ったし、33歳の蓬莱さんも相当苦しまれた」
「くどくど細かい事を言う方じゃないと思うんですけど・・」と鵜山さん
当時、高校生だった鵜山さん。ど真ん中世代というよりもちょっと後方側?!
「後追い経験していたような気がする」とおっしゃいます。
なので、表現するには、言葉が足りないという思いがあって、
後の世代の人からみてどう総括してくれるのか?
別の角度から照明を当ててくれるのか?
鵜山さんご自身が68.9年がどういう年だったのか?
どういうポジションにいたのかを改めて蓬莱さんや裕美さんに教えてもらいたい
「・・いじめって・・というより、そういう感覚で頼んじゃった」
結果、こういう物語が出来たのは、蓬莱さんのオリジナリティだそうです。

すごく大変で、かなりギリギリな状態で書き上げられた脚本・・
「11稿位書いてるんじゃないか」と裕美さん。オファーは約一年半前。
第一稿が仕上がったのが数ヶ月前。エンドマークが出ていない状態で
鈴木さんと制作の方と蓬莱さんと三人で、合宿のような長い長い打ち合わせをされたそうです。
それは前日から始まって朝8時解散で、13時集合みたいな(爆)
なかなか方向性が決めかねた・・というか、落とし所が見つからなくて
蓬莱さんが、すごく真面目な方で、作家によっては題目を無視しちゃう方もいると思うのですが、
「誠実に答えようとしたあまりに悩んでしまった・・」と、鈴木さん。
主にそれは68.9年の学生運動に対して言う権利があるのか?とか、
言うべき言葉があるのか?とか、そのオファーに登場人物達が、どういう言葉で発するか・・
それらを見つけるまでに時間が掛かったそうです。
こんな風に考えちゃえばいいんじゃない?と鈴木さんがアドバイスしても
当の鈴木さんご自身も、
「聞いたことはあるけれど、なんとなく見たことがある程度。
実際に体験した鵜山さんとは違う」とおっしゃいます。
とはいえ鵜山さんも「実際にやってましたと言いつつも・・・」
TVで観たような事を高校でやっていただけ・・とおっしゃいました。
バリケード封鎖があって、卒業式がなかったり、学校の機能が麻痺して・・でも、それが運動なのか?
学生運動してましたって、何をやっていたのか定義が難しい・・

また鈴木さんや蓬莱さんとも違う高橋一生さんの台詞
「角材(かくざい)↑」「角材(かくざい)↓」の読み方は、そのまんま生まれたそうです。
また「三里塚ってどういう字?」という台詞も、そのまま蓬莱さんの言葉だったそうです。
また、逆もあるということで、ゲームのシーンで「ログイン」という言葉など・・
携帯を持たない方など、あらゆる世代の方がいらっしゃる。

で、ここで、ほぼ同世代の高橋長英さん、林隆三さん、瑳川哲朗さんが参加されました。。
「僕が一番若い!」BY林さん(笑)
この作品は、闘争自体がテーマでなくて、それに係わった人間が40年経過し、
その40年の中で色々経てきた人間のお話。
たまたまある年齢に達した時に安保があって、これ自体を描こうとした芝居でない・・
と、瑳川さんが解説をして下さいました。
「ネットゲーム・・やったことありません(笑)」
高橋さんが稽古場に持ってこられて、みんなでやってみたそうです。
そんな芝居そのものが新鮮で初体験だったそうで、
「我々はもっと自信を持って良いんだ」とおっしゃったのは瑳川さん。
こんなベテランの俳優さんでも不安な時があるのかなぁ~とびっくりしました。
「なかなかこう難しい役で、先は長いなぁ~と思っていますが、なるべく早く
初日を出したい」BY林さん
「蓬莱さんも裕美さんも初めて」と、長英さん。
こういう作品になるとは思っていなかったそうで、もっとふぁ~とした感じになると
思った(ヘンな意味じゃなく)と思われたそうです。
「最近になって面白い本だなぁ~」と
ブレヒトを例にとって、演じる悲劇の場面の前を通行人が現れて舌を出してぶち壊す
みたいな構造になっていて面白い。世代間の違いもあるしギャップもあるし
それを生かされていて新鮮だとおっしゃいました。

「ゴキブリ~!」って、カルチャーショックだったと瑳川さん
芝居とか戯曲の観念が全く違っていてびっくりされてそうです。
今までは、文学性が高く、センテンスの長い台詞が多く日常的な世界が
なかったそうで、日常にもドラマが潜んでいて、それが展開して
ちゃんと人がかかわっている「今まで何を見てきたんだろう(苦笑)」

冒頭、暗くなって戦いの音と映像が流れて『エネミイ』のタイトルが出ますが
これらは脚本にはなかったそうで、稽古の途中で決まったそうです。
そんなに早い段階で学生運動について語っていないので
世代によっては、台詞の匂わす言葉で理解できる人もいると思うけれど
映像を流すことによって、ドラマの裏側にはありますよって
あの映像で、ヘルメットや角材を持ってタオル姿の絵を見たら・・20代でも
理解できる方が多いかなぁと思われたそうです。

「なんでもないような男の子が、ぐっとこさせる演出が良かった」と中井さん。
「高橋さんのような若い方とかが、男の子から瞬間に大人の男を垣間見える」
「そういう男の子が好き」と裕美さん。
キッチンの換気扇の下で、煙草を吸うシーン。
「お三方も男の子に見えるといいな」
背中を丸めて煙草を吸うシーン可愛かったですね。
男の子に見えましたよ♪

ここで鈴木裕美さんが、次のお芝居のお稽古に行かれるという事で早退されました。
で、しばし静かだった鵜山さん。
「さっき“お三方”って言った時、“おっさんがた”って聞こえた」
ちょっと得意げで嬉しそう・・だじゃれお好きですから鵜山さん♪
で、残られたのは、司会の中井美穂さん、芸術監督の鵜山仁さん。
そして“おっさん方”高橋長英さん、林隆三さん、瑳川さん。
(ちなみに鵜山さんは“おっさん方”には入りませんからっ!!)

「若い頃からギャップのある役が多かった」と、おっしゃったのは林さん。
お若い頃から極端な役が多かったそうで、今回の瀬川さんの役作りについては
60年安保に関する本を読んだりされたそうです。
長英さんとは同期だそうで、当時のアンダーグランドの自由劇場で
ベトナム反戦やベトロックとかやってると、角材を持って乗り込んできた
あの頃のは芝居的演劇的な熱さがあったそうです。
そんな林さんの学生時代はノンポリで、運動とは遠いところに居られたそうです。
とはいえ、林さんのおっしゃっている事がよくわからず・・・
なんとなくイメージで浮き上がってきたのは、昔TVで観た
『シーザス・クライスト・スーパースター』というミュージカル映画。
繋がりがあるのかあるのか?ないのか?判らないんですけど・・・むむむ。

「台詞の数は多くないし「...」が多い」と、ゆっくり語って下さるのは長英さん。
何で会話がないのかなぁ?と、当初思われたそうです。
どんな芝居でもそうかもしれませんが・・とサッカーに例えて
コミュニケーションっていうのは、パスを出して、また出して・・・と、芝居もそう
「・・・」で「あ~」とか「う~」とか、パスをもらって、たとえ会話が無くても良い。
このお芝居の独白は楽だったそうで、でも一人じゃ難しいとおっしゃいました。
一人じゃ覚えられないけど・・相手がいて、リアクションによって覚えられたそうです。
「うまくパスを出したとき、受けた時の快感は楽しい
これからもいいパスを受けられるように頑張ります」
この家庭について、りっぱな家だけど内容がズレてる・・そうおっしゃいました。

「このポスターを決めたのは鵜山さん?」と司会の中井美穂さん。
「決めたっていうか“はい”と言った(笑)」
なかなか刺激的なポスターでしたよね。
おめめ(笑)だげが、風船をじっとみてる・・そんな構図。
「やっぱバランスがおかしい・・(目が)凝視しているものが風船だったり
ものをどの方向から見るのか?自分のものの見方も
なんか片寄ってるのかなぁ~と思って“はい”と言っちゃった」
凝視している目を映画『アンダルシアの犬』の映画の冒頭のシーンを例えておっしゃっていました。
あの女の人の眼球をぱーっと切っちゃう、びっくりしちゃうシーン。
わたしには理解不能でちょっと受け入れられない映画でした・・・
「目の前にある風船がいつ爆発するかわからない
そういう焦燥感とか恐怖とか不安感とかあらわしている」と長英さん。
すると鵜山さん
「長英さん、(『エネミイ』を)逆に読んだら「意味ねー」って(笑)」
「台本が出てこないから意地悪をいったんですよ」BY長英さん。
瑳川さんからは、作品の出来る工程がかなり楽しかったそうで
と、いうのは・・芸術監督からテーマを出され
一つの芝居が出来る流れが興味深かったと話されます。
テーマを出して、セレクトして・・という手法があまりないそうで
大抵が劇場が企画して、それに乗っかっていく事が多いそうです。
鵜山さんの場合は、完全に自分の意思を出して本を作らせる。
これらが、本来の芝居作りの形なのではないか?!
でも実際は上手くいかない。
これが上手く行ったら、鵜山さんの思いのエネミイの世界じゃないかと思う。
ご自身をアナログ世代とおっしゃる瑳川さん。
今の時代を否定するつもりはないとおっしゃりながらも
本来持ってる値打ち、あるいは生産すること・・人間の根本的な
考えに共感できるし、より値打ちがあると思う世代。
芝居もアナログで「...」は難しい。喋っている方が楽。
これだけ間が多いとどうするんだ?!演技で俳優が生きることは
大変な問題でどう客に伝わるのか最後の仕事。
「鵜山さん、えらいの提示してくれたね(笑)
鵜山さんへの仕上げみたいになっていくので力を合わせていきたい」
すかざす林さん「まとまりました」

ここからが質問タイムです。
「自分はこういう役は出来ない役ってあるのですか?また女性らしいなと思う演出だと思いましたが・」
お三方だから聞ける質問ですね。
で、オペラ『鹿鳴館』をご覧になったそうで、鵜山さんを天才と褒めて下さった素敵なお客さまです。

長英さんは「この年になると、寂しいことにとんでもない役はこない」
オールマイティの部分は、基本的に役者としての幅を持っていたいので
色んな注文をもらいたい。とおっしゃいます。
林さんは「楽しい役しかやったことがない」
極端な役柄が多いそうで、ギャップを埋めるのが楽しいそうです。
瑳川さんは「やった事のない役が出来るのは楽しい」
劇中にディズニーランドから帰って来たシーンで、ミニーちゃんの耳を
付けて登場されましたが、ご自分はなんでもできると思っちゃうそうです。

鵜山さんから
「女性の演出は多少気を許してみられる許容できる人間なので
男性の演出は、どうも反発したりけちを付けたくなる(笑)
自分が企画しても女性の演出は、どうも気が許せて
ここはどういう意味なのかなぁとか、どういう感覚なのかなぁとかなり親切に観てる(笑)」
はーそういうもんですかねぇ~
で、『鹿鳴館』については、三島作品の独特の文体と付き合う機会が
とても楽しかったと感想をおっしゃっておられました。

で、最後に一言つづ
長英さん「今回の芝居は、年齢層が高くて、若い芝居。
稽古場で若い人たちと交流したことが刺激になった」
長英さんが苦労することを楽々とクリアしちゃう若い人たちの感覚を
まぶしそうに語って下さいました。
林さんも、若い人たちとやるのは刺激になるそうです
「3年ぶりの芝居で、それじゃあだめだと思った。積極的に芝居をしたい」
瑳川さんからは、TVが人の考えやものの見方を変えた。
「物心ついた時からTVを観てドラマを見ている彼ら若い人たちの芝居は
なんてナチュラルに出来るんだろう?!」
ご自分を振り返って、
「活字からイマジネーションを作って形にして自分で何かを作り出すことの不安もあるが、
アナログ世代の良さを感じる芝居作りを続けて行きたい」

最後に鵜山さんから
「世代間のギャップについての芝居を違う世代でやってる
語り合ってる経験ってつぶさになくて多分、僕が梅沢さんと同じ世代に間に入ってかならんだと思う。
芝居を始めた頃はうるさくて仕方のない兄さん世代でしょう、テント世代って脅威ですよ。
今や若い人たちのテンポを考えさせるコミュニケーションが下手。これはなんとかしなきゃならない。
どう言葉にするかトライしてるわけで、コミュニケーションをとる為にしみじみ考えますし、
企画というのはバランスが大切。
リスクテーキング、チームで思い描くような瞬間演目、そういうサスペンスを共有することはいいこと。
今後とも宮田慶子さんによろしくお付き合いください」

さて、以上でレポは終了です。
お付き合いありがとうございました。
いっぱい私見も解釈も入っておりますが、お許しください。
これで鵜山さんが芸術監督としてのシアタートークも最後となりました。
ちょっと寂しい気持ちもしますが、生の声を聴いて思いを語って下さる貴重な時間。
この三年間、あっという間。楽しい時間を過ごせて本当に本当に嬉しかったです。
by berurinrin | 2010-07-20 23:48 | イベント
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