『夢の痂』シアタートーク

『夢の痂』シアタートークに参加してきました。

司会は、アナウンサーの中井美穂さん。
最初に登場されたのは、もちろん芸術監督の鵜山仁さんです
きゃーきゃーめっちゃ素敵です!
初演時には、一観客として舞台をご覧になっておられた鵜山さん。
その時の感想を聞かれる度に「なぞが多かった」とお答えになっておられました。
『夢の裂け目』『夢の泪』『夢の痂』と三部続いた『東京裁判・三部作』を
ご覧になって、改めて感想を聞かれた鵜山さん。
当初、誰が誰を裁いているのか?とおっしゃっておられましたが
鵜山さんは、ご自身の解釈です・・と、繋ぎながら
「死にぞこなった男たちの生き恥の話」とまとめておられました。
必ずしも天皇の戦争責任の話じゃないのかなぁって
生き恥を女性がどういう風に埋め合わせてるか?ということで集まってきて
男たちの決断力の無さを女性達がどう始末をつけるのか?
初演当時では、戦争責任があるんだ。と、
ひとつの見方をしていてよくわからなかったとおっしゃいます。
でも、今回埋め合わせ・・と、思って納得してしまった。
誰が誰をって、お互いに裁かれあっている関係で
舞台の上でもお互いに裁かれ合っていた気がする。

三部作で、二つ重なって出演されてる方が居て、
(三作にご出演というのは実質不可能だったそうです)
台詞も膨大だったし、無理をお願いしちゃった感もあるんですけど
企画って云うのはリスクだから、こちらも成功するのがわかっちゃてるのは
やってて面白くない、みんなくたびれてるんですけど、
だからこそお客さん共々盛り上げ合って、やっと三部まで行き着けました。
と、会場からは大きな拍手(*^_^*)

『夢の痂』考えてみたら、男性が矢面に立って15才。女性達は色んな苦労を・・
その後の後始末を一身に背負わなきゃならない・・そういう時代だった。
前線に行って、死んでいった男たちの思いを、しみったれた思いを
女性がイニシアティブを持つような思いで世界が作られていくのかなぁと、
妄想しながら観ていたと鵜山さん。
「『夢』って言葉が、なんでタイトルについてくるんだろう」と中井さんから
どこかに8/15(終戦記念日)に青空って、
無限の自由とか無限の平和とか、トンネルの向こうに青空って、ピュアな夢というか
一つに提示された青空だった。
目の前に現れた青空だったけれども、色んな雲が出たり、裂け目が出たり
雨が降ったりして、かさぶたで被ったり、修復したり
それによっていびつになったり、そこんところに夢があったり
遠くの方に夢が控えていたり・・そういうような事が、井上さんの言葉にあった。と、鵜山さん。

と、出演者の方々がご登場されました。
角野卓造さん、辻萬長さん、三田和代さんが登場されました。
『夢の避け目』では、紙芝居屋さんを演じられた角野さん。
『黙阿弥オペラ』『円生と志ん生』そして今回の『東京裁判・三部作』と
計5本の井上作品にご出演されています。
井上さんの大ファンだとおっしゃる角野さん。たくさんの作品をご覧になっていたそうです。
「もっと多くの作品にご出演されていた感じがされる」と、中井さん。
「井上さんの世界に生きずいている」とおっしゃいました。
角野さんからは、
やっぱり当てて書いて下さってるのではなかろうか
今回と初演の時の違いは?と聞かれ
前回よりは、少し稽古する時間があった(笑)
初演は勢いがあって、わっと毎日、一枚、二枚と台本が届いて夢中で覚える・・
考える余裕がなくて・・・今思えば、幸せだったかもしれない。

三田さんから、
『夢の痂』で、まさか最後に角野さんにプロポーズするのにびっくり(笑)
衣装さんがタイトスカートを用意されていたそうですが、急遽フレアースカートに直されたそうです。
先が見えないので、来る台本を覚えて覚えて・・それで精一杯何も考えられなかったそうです。
『夢の裂け目』では、主役の女優さんが急病のため、代役をされた三田さん。
本番9日目で参加されたそうですが、まだ本が完成していなかったので(笑)入れた。

台本ができていない時の俳優の状態とか、稽古場の雰囲気を聞かれたのは、
場数を踏んでいる(笑)辻さん。
最初の作業は、台本をとにかく覚える。覚えて肉体化しなきゃ始まらない。
ただひたすら来た台本を覚えて、「さわるな~!」と、さわるとこぼれる(笑)
台詞を覚えて肉体化して出す。
台詞だけじゃ会話はできない。肉体化して初めて会話が成り立つ・・。

「後半の本が出来てくると、初めの頃が抜けていく・・」本が忘れていくのが怖かったと三田さん。
「そんな恐怖を初演で味わったので、皆んな仲がいいですよ」

「冒頭の場面で角野さんが飛び降りてびっくりした」と、中井さん。
角野さんからは、奈落に白いバツ印と貼ってあるマットレスが敷かれてあるそうです。
とても狭いので、真っ直ぐ落ちないとどっかにぶつかって怪我する危険があるので
毎日、本番前に3回位は、練習されておられたそうです。

「死にぞこなってしまった男たちの生き恥を女が繕うみたいな芝居」と鵜山さんの感想に対して
「初演時は、そんな大変な事は考えずに台詞を覚えた。」と三田さん。
「今回は、逆に台本があるので緊張で、公演しながら次の作品の稽古をしていた」と
『夢の泪』を上演しながら『夢の痂』の稽古をされていたそうです。
いやぁ~たまに頭がぼーとなったと三田さん・・・お疲れ様でした。

逆に「本番と稽古と2本やっていても、ごちゃごちゃにならない」と辻さん。
出演者も違うし、話も違うのでごちゃごちゃにはならないそうで
『夢の痂』の最中に『夢の泪』の台詞が出てくることはない。
本番第一と思っても、稽古大事で、両方とも一生懸命やっちゃうので声に出ちゃう
声がどうしても弱ってきちゃう。
「自分が思うような声が出ないと俳優は嫌なんです。」と、辻さん。

すると鵜山さん
「とにかく萬長さんは、りっぱな声だから・・」いやぁ~あまりフォローになってない気が(笑)
三作・・鵜山さんも演出したかった。と、言いつつ、
僕、自分じゃ出来ないから栗ちゃん(栗山民也さん)なら出来るだろうと
初演ありで発展的に再演できるだろうって、やって頂きたかったと苦労させてしまった。
「鵜山さんは長いのが好き(笑)」と角野さん。
とここで、角野さんがネタ晴らし(笑)
今回の企画で『ヘンリー六世・三部作』やりましたから、日替わりでやりませんか?とか
土曜日は3本連続上演のお話があったそうです。
「面白いけれども役者の体をどう考えているのかと(笑)」角野さん。
順番で一日やるのも大変。スタッフも大変。スタッフの方は、3部とも連続で付いておられるそうです。
「プランは皆さんと一緒に共犯関係なんですけど・・」と、鵜山さん(笑)

この『東京裁判・三部作』の部分は、ステップ・バイ・ステップというか
舞台稽古と本番がぜんぜん違う。井上さんがおっしゃっておられたそうですが
劇場やお客さんから教えられることが多いとおっしゃいます。
つまり、お客さん一人一人が色んな気分で観てるのが、そこはか感じられる。
一つの言葉を受け止めるにしても、一つの役の背景を感じるにしても、それぞれ計算つかない
そんな乱反射して、一つの場所の中で起こっている。そんな結果、計算なんてできない。
共犯でしかない。と、鵜山さん

この『夢の痂』に出てくるのは山形弁?とくには方言の指定していないそうです。
井上さんは、独自に東北4県の方言の辞書を作っておられたそうで
それを引用したそうで、台本どおりに言うそうです。
ちゃんと標準語の意味も書いてあると、三田さん。
ものすごく細かいそうで
「...なのです」「...なんです」
文法の話のときは「..なのです」になる。と、三田さんから
井上さんのこだわりがあるとおっしゃいます。

辻さんは「20年近く、井上作品を演らない年は無かった」とおっしゃいました。
「幸せだ」とおっしゃいます。

井上さんとそのほかの劇作家との違いについて聞かれた角野さん。
まずテーマやストーリーが違う以前に「言葉が全く違う」とおっしゃいました。
その上で「僕達は、もっと前は、長く本読みをやった気がする。」
10日間位は、座って“テーブル稽古”=本読みをして
体を動かす前に、言葉を徹底的に話し合われたそうです。
本の内容だとか、その時の感情だとか、相手の台詞だとか・・
最近では本読みを一回やって次は立ち稽古に入る・・得意じゃないと
「僕は上手く出来ない。
本読み10日間やって体に沁み込んだ言葉は忘れない。
沁みこんでお腹に入った言葉によって肉体を動かしていく。。。劇団でこういう芝居を作ってきた」
なかなかチクリとさしつつ深い言葉です。

角野さんの言葉を笑顔で聞いてる鵜山さん・・
「・・でも、タイツ履いたり、髪を染める芝居も好きじゃない」と角野さん(笑)
だんだん角野さんのリップサービスもノッてきまして
日本の芝居をしたい・・と言いつつ
かつての名作よりも今の時代の息吹を感じる作品をやりたいとおっしゃいます。
井上さんの作品のすごいところは
井上さんの芝居は元の元を書いている。とおっしゃいます。

三田さんから
井上ワールドに飛び込むのにエネルギーを使うそうで
それも普段の芝居の3.4倍ものエネルギーを使っている気がするそうです。
リアリティを持っていないと言葉が回転するだけで、伝わらない。
極限までエネルギーが入ってないとダメで、でも顔はすっとしてなきゃだめ。

お客さんに支えられてるなぁと思ったのは『夢の泪』のトラブルが起こって
舞台の照明が消えて、休憩をとって20分経っても直らなかったそうです。
するとお客さんから、このまま続けてと言われ
生明かりの中で(この位の明るさ)最後まで演じてしまったそうです。
「舞台は思いがけないことが起こります。」と、三田さん。
「相棒ソング3回歌っちゃった。」と辻さん(笑)

で、トラブルのお話で辻さんから振られた、角野さんが

過去の思い出話をしてくださいました。
東横劇場で上演された文学座公演『結婚披露宴』の時に、
(演出は、木村光一さん。ちなみに鵜山さんは演出助手だったそうです)イギリスの芝居なのに
桜の木の張物が上から落ちてきて、置いてあった木の折りたたみ椅子が真っ二つになった。
ほかに、回り舞台が途中で止まって、人力で回したり、袖幕に火がついたり
今回のトラブルの時に、丁度稽古に来られていた角野さん。
心配で廊下でうろうろしていたそうです。

質疑応答コーナーで
「苦しいとかつらいとか言いながらも井上作品に出演することによって得られるものは?」

「俳優をやっているのは、私生活では、言葉が下手なので
井上さんの台詞は、生きているうちに言えないすばらしい言葉ばかり
どんなに台本が遅れようと、この言葉を言いたいと思ってやっている。」と辻さん

「作る時は、すごく大変なんですが、結果、お客さんに喜ばれる充実感。
井上さんの本は読んでも楽しいし、またやりたくなちゃう」と三田さん。

「すごく幸せでした。5本。ものすごく大変だったけれど
楽に出来るよりもみんなで助け合って・・大変だからこそ幸せだった。
それは切迫しているけれど、やればやるほど世界に向き合う姿勢がわかる。
この仕事の中で一番大きい仕事だった。
もっとやりたかったけど・・やればやるほど新しい世界が見えてくる。」と角野さん。

「芸術監督の仕事は面白いですか?引き受けて後悔された事はありませんか?」
率直な質問(笑)に対して鵜山さん

「いたって身勝手な人間なので、公共心なんて口にしたくもない(笑)
なので文学座の中心にいた時は、自分の事しか考えてなかった人間ですが・・新国立に来て
そんな私でも、いささか“公”というか髭←(公の字の八の事をヒゲとおっしゃってます)が、
生えてきちゃった感覚と
その感覚と『東京裁判・三部作』を観ている感覚が全く同じで
どこまでが“私”でどこまでが“公”なのか行き来をどうしたらいいのか?
戦争責任だけじゃなくて切実な問題で
自分が“私”と“公”とダイナミックに行き来出来たのは面白かった。
大体後悔したくないので、芸術監督になって後悔したことはない。
後悔させたことで後悔した事はありますけど(笑)しったこちゃない(爆)
できるだけ沢山の演劇人がこういう立場になって、“私”と“公”を行き来できる
機会があればといいなぁと
また、謙虚深い東京裁判みたいに繋がるんじゃないかな」

今後の展望を聞かれた鵜山さん。

「今後は、内側の事は多少わかったので、外から散々言ってやろうと思ってます。
みんなの劇場、国立の劇場が自分たちのものにするという、一人一人のものにする。
そんな、うねりを少しでも広げられたらいいなと思います」
会場からは大きな拍手が起こりました。

最後に
角野さん
「芝居を観て頂いて、同じ時間を共有できることが幸せです。芝居を観続けてこれからも頂きたい」
三田さんは
「感謝しかありません。お芝居は楽しみものだけど、特に若い人たち抜け落ちてる歴史を考えてほしい」
辻さんから
「芝居って、難しい言葉があって、でも、それでも又観たくなる・・・難しい言葉があるのが良い芝居。
で、よかったらぜひお勧めして欲しい。良い芝居は難しい、でも観たくなるもの」

鵜山さん
「ちょっと毛色の違った劇場が一つあるのは大事で、それを支えるのは私たちすべて
一見、みんなが敵だと思ったり、味方だと思うときがある。紆余曲折含めてサポートして欲しい。」

以上で、シアタートークのレポは終了です。
ニュアンスの違いとか、勝手な解釈でUPしていますので、そこんとこよろしくお願いいたします
by berurinrin | 2010-07-17 15:56 | イベント