英ロイヤル・コート劇場芸術監督ドミニク・クック氏・ 来日記念シンポジウム

英ロイヤル・コート劇場芸術監督ドミニク・クック氏
来日記念シンポジウム

2010年10月6日 in 文学座アトリエ

司会進行  高瀬久男
パネリスト ドミニク・クック氏
   通訳 中山香織氏
そして空席のいす(誰が来られるのかなぁ~きゃはっ)

テーマ「芸術監督の仕事」

ロンドンの演劇事情などを盛り込んで高瀬さんより、先ずは背景からお話をして下さいました。

クック氏といえば、2002年~8年まで続いたファミリーシアター『アラビアンナイト
(リンクは2006年バージョンです)を脚色されました。
青山円形劇場がスタートして大ヒットした作品ですね。
高瀬さんは、いつかロンドンで公演したいと思っていたそうです。
そんなこんなである日、翻訳の中山香織さんから「読んでみませんか?」と送られてきたのが
カラムとセフィーの物語』だったそうです。
『アラビアンナイト』にしても『カラムとセフィーの物語』もそうですが
両方ともストーリーがしっかりしていて、アンサンブルで動くというのが、素敵だなぁと思われたそうです。
『カラムとセフィーの物語』の稽古初日の前には、ロンドンに行って
クックさんの稽古場を見学されたそうです。

『アラビアンナイト』の事もあって来日をとても楽しみにしていたと、クックさん。
前日には、一人で京都に行って来られたそうです。
文学座についての感想を聞かれると
経済状態は似てる(笑)と
なによりアトリエのスペースにとても感動されたようです。
「『カラム・・』については、大変難しい芝居だけれども
世界中の演劇人と話すとすぐ仲良くなれる。
言葉を超えてコミュニケーションができる」とおっしゃっていました。
それは、手段は違えど目指すところは、きっと同じ方向を向いているからなのかもしれませんね。

イギリスで舞台俳優を目指す為には、3年間演劇学校に通うそうで
演劇学校は、すべて民間経営されています。
で学生たちは、自治会で助成金が出るそうです。
最近は、どこの演劇学校も生徒たちが増えてるそうです。
卒業しても医者や看護士のように役に立つ技能はないけれど
有名になりたいと思う人たちが、こぞってやってくるそうです。
たくさんの学校があるそうで、その年によってレベルは変わってくるようです。
で、演出になるには・・と、いうと特に何があるわけではなくて
「自分は演出家!」と言って、周りを納得させるのだそうです。

卒業後、テレビ局に勤めたクックさん。3年間、報道を担当して退社後に
友人たちと劇団を立ち上げ、2年半に渡ってツアーをされたそうです。
当時は、ご自身の演出は未熟だっと言いつつ、資金調達や税金については長けてたそうでしたが
カンパニー全体が疲れてきた時に、
RSC(ロイヤルシェイクスピアカンパニー)の演出助手の仕事が決まったそうです。
その後、約2年間素晴らしい演出家の元で素晴らしい経験が出来たそうです。
そしてシェイクスピアをやるという事は、演出家にとって難しい事だと痛感したそうです。

演劇学校では、学校によって違いますが
実践的なことを学びつつ、テクニックを学んでいくそうです。
演劇は、イギリスの文化に重要な役割を持っているので、
若者たちはプレッシャーを感じるそうです。
俳優という職業は、生涯学び続けなくてはならないし
学び続けたことを伝え続ける仕事であると、
そして、残念ですが、失業率が非常に高いそうです。

演出助手の後は、演出の仕事を始めたクックさん。
このステップは、かなりの痛みが伴ったそうです。
それは、お金の調達で、自分に投資をしてもらわなくてはいけない。
お金を集めるのは、非常に長い時間がかかるそうで
その後の3年間は、たまに演出している以外は、働いたり
お金を集めたり、生きる為の違う仕事をしたりされたそうです。
けれど、当時は、今は、なくなってしまったそうですが
社会保障(失業保険)から多少の援助をもらえた時期だったそうです。

その後、フリーランスの演出家を経てロイヤルコート劇場の芸術監督の
公募があったので、応募されたそうです。
ちなみに芸術監督については、雇用機会均等法によってすべて公募なのだそうです。
募集については新聞やネットに載るとのこと。
難関を乗り切って2006年大晦日に就任されたそうです。

ロイヤルコート劇場は、1888年創立で
戦争によって被害を受けたり、映画館になった時期もあるそうですが
現在は、新人作家の発掘を目的とした新作戯曲を発表する劇場だそうです。

で、芸術監督としては、劇場のすべての最終責任の責務を負うそうで
もちろん経済面も含まれるとの事です。
例えば、火事で劇場が焼けても芸術監督の責任。
丁度この時期、ヨーロッパをゲリラ豪雨が襲って、大雨洪水で大変な事になったそうで、
地下の非常照明が壊れたそうです。
メインの劇場は、公演が終わったばかりで、併設している小劇場の公演の
夜の公演をキャンセルになったそうです。
不幸中の幸いでした。
芸術監督は、4年間の契約で今年切れるそうですが、
来期もオファーされているそうで、そのまま継続されるそうです。
いやにならなければ・・と(笑)
年間18本の作品を上演し、新作を生む。
ロイヤルナショナルシアター、RSCなど巨大な組織で助成金の面でも
同じ本数を確保し同じ数の作品を作るのは、ないお金でやっていくのは、プレッシャーだそうです。

演出をされてない時のドミニク・クックさんのお仕事は
20~35%は、トラブルの解消だそうです。
芸術面や演出家のスケジュール。プレビューの時に判る投資の失敗の解消。
人事面、セクション間のトラブル・・・・水害(笑)

芸術面では、新しい作家たちが書かれた作品が年間約3000作品近く届けられ、
スタッフは、ただひたすら読み続けるそうです。
また15歳から始まるライタースクールでは、毎年50作品委嘱され
芝居を発展させる為にワークショップや観客に観せて試す試みの
ドラマリーディングも開催されているそうです。
そおいえば、今年は、イキウメ主宰の前川知大さんが、毎年行っている
「インターナショナル・レジデンシー」というプログラムに
参加された事がシアターガイドに載っていました。
また、「ヤングライターズプログラム」というのがあって、
その中から3作品が上演され、その内の一作品は、14歳の少女が書いた芝居だったそうです。

良い芝居であれば、書かれて三ヵ月後に上演が可能だそうで

言葉を持たない観客が何を求めているかを、キャッチするのがアーティストであり、
何か新しい声、アイデアを提供することが、ロイヤルコート劇場の使命であるとおっしゃいます。
その為には、劇作家を守らないといけない・・多大なリスクのかかる事だそうです。

また、外にも目を向けて、いい作品があれば招いて上演することも可能だそうで、
一つの国に絞ってプログラムを展開されるそうです。
今までに、アラブ諸国やロシア、トルコ、南米の国々の作品が上演されたそうです。

2006年、劇場は50周年を迎えたそうです。
与えられた資源を最大に利用することが大切だとおっしゃいます。
出来るだけ芸術的な作品を、出来るだけ多くの観客に届ける
それらを、どうしたら最大限に生かせるか?模索中だそうです。

さて、ここで高瀬さんから声が掛かって
空席だった椅子に呼ばれたのは、文学座にもいらしたんですねぇ~うふふっ
芸術監督と呼ばれた方が!颯爽と壇上に上がられたのは、そう!
新国立劇場演劇部門前芸術監督の鵜山仁さんでした。
きゃぁきゃぁ~♪素敵っ★(すみません・・・)

高瀬さんから、クックさんに尋ねたいことは?と聞かれた鵜山さん
「(芸術監督を)辞めたらどうするんですか?(笑)」
あ~みたいなぁ~掴みはオッケーな鵜山さんです。
ロイヤルコート劇場のパンフをご覧になっていた鵜山さん
アトリエの上演作品と重なるものがいっぱいあったそうです。
『ゴトーを待ちながら』『怒りをこめて振り返れ』『キッチン』などなど
今に至るまで、アトリエではイギリスの芝居ばっかりやっているわけじゃない
それなのに、ロイヤルコート初で日本初演の作品をアトリエで数多く上演している事が信じられない。
と、おっしゃる鵜山さん。
「じゃっかんこっち(アトリエ)が、兄貴分(笑)」

「ロイヤルコート劇場には、固有の劇団は持ってますか?」と鵜山さん。
固有の劇団は持っていないそうで、民間の演劇学校の卒業生を招いてるそうです。
アトリエで『カラムとセフィーの物語』をご覧になったクックさんは
劇団として、長い期間で協調し合っている姿がうらやましいとおっしゃっていました。
ロイヤルコート劇場は、劇作家の為の劇場だそうです。

昨今、現代劇を発掘するのが難しい時代になってきたようです。
最近、19歳の劇作家の作品を上演されたばかりとの事ですが
彼らにふさわしい環境を与える必要があるとおっしゃいます。
そしてロイヤルコートには、若い劇作家を支える素晴らしい指導者がいらっしゃるそうです。

「どうしても一見タブーがなくなっちゃって、それを超える新しい表現を見つけるのは難しい」と、鵜山さん。
東西冷戦を区切りとして鵜山さんが例えて話されると、クックさんは
現在の世界、社会から自分自身の問い掛けへと移行してきたとおっしゃいます。
「難しいテーマに挑んでいきたいという欲がある」と鵜山さん。
作品のテーマというか、時代時代による現状の責任、誰に責任があるのか?
それは政治だけじゃなくて、自分たちかもしれない。」
この環境の責任は、この人たちの責任のせいとか・・今であれば、気候変動とか
目の前のペットボトルとプラッスチック製のコップを例えて
「何でプラスチックのもの(ペットボトル)から
プラッスチック製のコップについで飲むのか?」
部分的にでも誰もが何かの責任を担っていると。クックさん。
対立するものが時代共に変貌してきた。と、おっしゃいました。

「今後、公立劇場との仲介役となっていくんだろう・・
国から助成金をもらっているので、商業(民間)では成り立たない芝居も上演する義務もある。」
そうおっしゃるクックさんに頷く鵜山さん。
現芸術監督のクックさんと前芸術監督の鵜山さん。

もっともっと話し合いたいという気持ちが伝わってくる後半は熱い対話になっていきましたが
話がわたしのド素人レベルでは、難しくなってきてしまいましてf(^_^;)
そこんところは、発売中の今月号のシアターガイド12月号
このシンポジウム後に収録されたお二人のガチンコ(笑)トークを読んで下さいませ(笑)
by berurinrin | 2010-11-20 23:06 | イベント