『父と暮せば』アフタートーク in 川西町フレンドリープラザ<その2>

方言についてのお話で、東京生まれの栗田桃子さん。
ご両親も東京で、方言を持っていないので憧れがあったそうです。
「しゃべりながら外国語を覚えるような感じで大変だけど、方言しゃべれて嬉しい★」
今は、そんな事はないらしいですが・・・(笑)
方言指導の方が入れてくれたテープを聴いて方言のイントネーションを覚えられたそうですが
実際は、会話によってどんどん変わっていくので、お稽古場で都度、言葉を直して頂いたそうです。

井上ひさしさんにとって、言葉を大切にするということは
人間を大事にすることでもあったそうです。
例えば『雨』だとしたら山形弁のように・・
続けて、司会の佐藤修三さんが、「方言と演劇について」鵜山仁さんに尋ねられました。

鵜山さんの田舎は、奈良県。
「ちょっとひねくれていて、地の言葉で芝居をしない為に、東京に出てきて
新劇やってきたんですけど、それを井上さんにひっくり返されているんですけど・・」
ここの川西町フレンドリープラザには、隣接して図書館があるんです。
その中には井上さんの所蔵の本が保管されてる遅筆堂文庫もあります。
で、鵜山さんが、これら図書館のように“字”を蓄積している場所はあっても
「音(言葉)というのは、録音したらそれで良いわけじゃない」
音の周りの背景というか、空気みたいな、風や匂い、温度みたいなものなので
そういうものを含めて言葉として成り立つので、舞台にしかできない。
方言も含めて、色んな音があるとおっしゃいます。
「色んな音があるから面白くって、一つの音しかない程つまらないものはない。
色んな音がぶつかり合いをして、ハーモニーになったり、時に雑音に
なったりすることが大事なんじゃないかと思う」
「言葉の音だけじゃなくて、色んな生活があって、感じようがあって歴史があって、いかに多様な世界とか、
宇宙とか地球とかその豊かさを伝える事を、井上さんはおっしゃりたかったんじゃないかな」
「並大抵ではないんですけど、ちょっと気にして・・と、言いつつ(笑)
自分は方言を捨ててきた身で、脛に傷を持つ身ですが、劇場の中では心掛けてやっていきたい」
鵜山さんは、台詞とか言葉とか言う前に、“音”という単語を良く使われます。
井上さんのこだわる言葉と鵜山さんのこだわる音は、表現が違えど
同じ思いを抱いておられるようです。

映画版『父と暮せば』を最初にご覧になったお客様から
「おとったんを幽霊に設定する為のご苦労は?」と、鵜山さんに質問をされました。
「俺は王様だって言えば、王様になっちゃう。
という楽な事が出来ちゃうのがお芝居で、それもこれもお客さんとの共犯関係
というか、ある音が信じられたら、たちまち世界が出来上がる。
逆に映画のほうが視覚的にも作らなきゃいけないから、大変じゃないかなと」
ということで、あまり苦労はされていないようです(笑)

井上さんは「生前に終戦といわず、敗戦と表現されていたが、どうして?」と
いう質問に対して、客席でご覧になっていた井上さんの奥様ユリさんが
「事実は事実として、直視しようとしたから」と答えられました。

この日の客層は、普段と違って若い方がとても多くて
萬長さんは、緊張されたそうです。すごくいい経験ができたと嬉しそうでした。
それに対して佐藤さんが「今日の萬長さんは、元気な幽霊でした(笑)」
すると鵜山さんが
「まぜっかえすようですが、井上さんは“幽霊”という言葉を使いたがらなかった。
美津江さんだって幽霊かもしれないし、舞台に出てる人ってそうじゃないですか?
心の中に住んでいるっていうか・・」
初演の時から、“幽霊”という言葉に対して
井上さんは、いい顔をされなかったそうです。
確かにそうですよね。木下さんなんて名前だけで登場さえしないんですもんね。
まさに彼こそ幽霊みたいですね(笑う)
「・・明らかに“幽霊”というのは、表現として面白い(笑)」

さて、時間が押しているとの事で、約30分程のシアタートークは終了して
続いて井上ひさしさんの県民栄誉賞授賞式が行われました。
井上ユリさんそして吉村美栄子知事が舞台の上に登場し、表彰状と記念品を
授与されてご挨拶されました。
そんなご様子を客席の扉の影で立って見守っておられる鵜山さんのお姿がふと目に入って
感慨深い気持ちになりました。

イベントが終了して、桃子さんが、隣接している図書館の展示物を鑑賞されていると伺って
桃子さんに会いに図書館へ
井上ひさしさんの展示物を熱心にご覧になっている桃子さんと再会できました。
桃子さんの美津江さんは、わたしは大好きです。最高です!絶品です!ねー!!
普段の素顔は、ちゃきちゃきした元気で面白い桃子さんです★
そのままご一緒に鵜山さんの元へ
すると鵜山さん「ダメ出しがあるんですけど」
明日が千秋楽なのにぃ~「えっ~」と桃子さん(笑)
萬長さんとご一緒にノート持参で別室に行かれましたf(^_^;)
わたしはこの日の『父と暮せば』は、大・大満足だったんですが
さすが鵜山さん、最後までこだわり屋さんですねぇ~そんなところが、これまた素敵なんですけど(笑)
翌日は、シベール・アリーナでの今年のツアーの千秋楽。
千秋楽を観て、帰りたかったんですが、夜公演でその後に帰る電車が無かったんです。
なので泣く泣く諦めた私ですが
鵜山さんは、千秋楽をご観になると言われ
「ダッシュで行けば最終の新幹線に乗れるから」と、おっしゃっていました。
鵜山さんの作品と係わる皆様に対する愛ですよね~!
あ~わたしもダッシュして観たかった(笑)いやいや、欲張っちゃいけません
それはまた次回の感動の為に取っておかなくっちゃ(*^_^*)
by berurinrin | 2010-08-21 10:06 | イベント