新国立劇場『鹿鳴館』オペラトーク<その1>

新国立劇場創作委託作品世界初演
『鹿鳴館』オペラトーク in オペラパレス ホワイエ(6/12)

池辺晋一郎(作曲)
鵜山仁(上演台本・演出)
新井鷗子(司会:音楽構成作家)

6/24初日の世界初上演作品のオペラ『鹿鳴館』を前にオペラトークが開催されました。
新国立劇場で演劇が上演される時は、公演中にシアタートークというイベントが開催されて
演出家やご出演者が登場されて、作品についてのお話を伺えるんですが
オペラトークは、新しいプロダクションの時に開催されるようで
2007年の『カルメン』の時にオペラトークに参加しました。
当時は、オペラ部門芸術監督・若杉弘さんが司会進行されていて、穏やかで温かい
そのお人柄が伺えるようなほのぼのとしたトークでした。
若杉さんが亡くなられ、若杉さんの念願だった『鹿鳴館』の上演を前に行なわれたトークも
まるで若杉さんが参加されているような、温かいほのぼのとした楽しいものでした。

『鹿鳴館』は、1956年に三島由紀夫さんが文学座の為に書き下ろされた作品です。
まず、今回のオペラの実現化についてのお話から、池辺晋一郎さんが語って下さいました。
10年以上も前に、今は亡き・若杉弘さんから
「『鹿鳴館』をいつかオペラにしようよ。やるなら君だ!」と言われたそうで
ただ作品的には異色の中の異色で、三島文学は必ずしもオペラに適したものでは、
ないらしいのですが、それでも「いつか、書くのか」という思いがあったそうです。
と、いうのも池辺さんが大学生の時に三島文学『午後の曳航』をオペラで
書いてみたかったそうですが、脚本化することができなかった・・と、
後に若杉さんから、「(三島文学を)オペラ化にするなら、小説よりも戯曲がいい」と言われ
もっともだと思われたそうです。
三島さんは「みのこ」という作品を、オペラの為に一本だけ書いておられるそうですが、
まだ誰も上演に至っていないそうで、それもいつかは・・と、池辺さんがおっしゃっておられました。

丁度、地下の稽古場では、7月公演『エネミィ』のお稽古中だそうで、そちらに出演される
いわゆる演劇の俳優達が『鹿鳴館』をオペラにする企画について、
「いい企画だねぇ」と、言って下さってると鵜山さん。
鵜山さんは、上演台本を書かれたんですよ!すごいですねぇ~っ!!
で、いきさつを聞かれた鵜山さん。
1956年に文学座で初演された時に、
第三幕で久雄さんと顕子さんという若い恋人同士が散歩するシーンの
「・・あの寒い夕風の吹きかよってくる玉砂利の道を私たちが歩けば・・」という台詞を
かの杉村春子さんが、「あんな説明的な台詞はいえないわ」みたいな事を言われたそうで
結構、伝説的になっておられるようですが(笑)
「文学的詩的な台詞なんですけど、歌ってみせようっていうんだから、なんとも面白い」と
上演台本作成と言いながらも、本来は1/5に縮めただけと、おっしゃる鵜山さんに対し
「ちょっと補足します!」と池辺さん「補足(細く)っていうか、太くします!」(爆笑)
で、池辺さんから、
三島作品は、一言一句言葉を変えることが許されない・・だからと言って、そのまま上演したら
オペラとしては不可能な長時間になってしまう。。。。
1/5に縮めたからといって、カットした部分を勝手に言葉を書き加えて繋げる事は許されない。
カットはするけれど、残った言葉は、そのまま三島さんの言葉でなくてはならない。
「てにおは」まで勝手に変える事が許されない位に、厳しい決め事があったそうです。
本来、これらの事は、若杉さんと池辺さんのお二人の共同作業の予定だったそうですが
ものすごく大変な作業であり、お二人ともお忙しくて、なかなか一緒に作業が出来ないという事で
鵜山さんにお願いされたそうです。
「ものすごい大変な作業だったという事を、太く(補足)しました」と池辺さん(爆笑)
えっ、すごいお話をして下さっているはずなのに、池辺さん・・駄洒落、連発なんですけど(笑)
それに対して鵜山さんは、つーと
はじめに音楽があったわけじゃないので、池辺さんの顔は常に感じておられたそうですが
「好きな台詞をアンソロジーしていただけ」と、かるーくおっしゃっていました。

ただ、一つの言葉だけ変えちゃったそうです。
それは「憎悪」という言葉、どうしても「ぞうお」という言葉が譜面に乗りにくくて
「にくしみ」とされたそうです。
「ここに三島の関係者は?ちょっとどきどきですが、すばらしいカットの仕方だった」と池辺さん。
そして必殺仕業人みたいな役どころの飛田天骨さん。
文学座の早坂直家さんが演じられておられますが、飛田さんの台詞を全てカットして
「だんまり役にしよう」と、これは若杉さんのアイデアだったそうです。

「譜面の読める演出家!」
鵜山さんを大絶賛の池辺さんです。いやぁ~池辺さん、いい人です(笑)
池辺さんと鵜山さんの関係は、かなり以前からの繋がりがあったようで
さかのぼれば鵜山さんが演出家の木村光一さんの演出助手時代から30年以上・・
「池辺さんの駄洒落を聞かされっぱなしだった」と鵜山さん。
鵜山さんの駄洒落は、池辺さんからきてるんだぁ~と、妙に納得してしまいました。
そんな信頼関係の厚い二人によって作られた
『鹿鳴館』は戯曲自体、会話劇に近い芝居。それに歌を乗せる事への挑戦について
池辺さんは「オペラは演劇的なものであるという」考えをお持ちだそうで
なかには「オペラは音楽である」という人もいるそうですが、
演劇的に確立したものの上に音楽が乗ってくると、考えておられるそうです。
例えばと、池辺さん
二人の会話のシーンで、簡単な問いかけであれば、即答できるけれど
難しい問いかけの場合は、言葉の前に、言葉が詰まったり、考えたりする時間が必要な訳で
それを譜面にする時も、何小節とか、そういう演劇的な要素が必要になってくるそうです。
う~ん、これらはまさに演劇的な関係性ですね。
鵜山さんもよくおっしゃってる言葉です。
オペラは演劇の一つのジャンル・・と、池辺さん。まさに打ってつけの作品だそうです。
そんな『鹿鳴館』は、池辺さんにとって9本目の新作にあたるそうです。

『鹿鳴館』の感想の前にUPしなくちゃ。。と思ったんですが、思いのほか
面白い話がわんさかあって、でも池辺さんのお話を伺うのが初めてで
なかなか言葉が早くて追いつかない(><)かなりニュアンスが異なっているかも・・
ごめんなさいm(_ _)m
by berurinrin | 2010-06-27 22:18 | イベント