東京裁判三部作・第三部『夢の痂』

東京裁判三部作・第三部『夢の痂』 in 新国立劇場・小劇場(6/6)

作   井上ひさし
演出 栗山民也

ひとりの男が自殺を図ろうと海に飛び込みますが、松の枝に引っかかり命拾い。
そしてその後、男が行き着いた先は、東北のとある小さな町の大きな会社の土蔵の中。
その男は、元大本営参謀・・陸軍大佐・三宅徳次さん(角野卓造さん)。
現在は古物商の商いをしているところ。
そこへ満州から引き上げてきた娘・友子さん(藤谷美紀さん)が訪ねてきます。
そんな折、東京では、東京裁判が行なわれているこの時期に、天皇の行幸があり
この町を訪ねられるとのこと。あたふたする人々を前に、徳次さんが立ち上がります。

『東京裁判・三部作』の最終章『夢の痂』です。
唯一、初演を観たのはこの作品のみでした。
当時の感想を振り返ってブログを読み返してみたら、自分の中で殆ど作品を消化できず
もんもんとした思いが募っていたのを思い出しました。
今回は、小林よしのりさんの『天皇論』を読んでますけど・・(そこんところも変わってない)
でもちょっと、この本はおススメですよ。
ちょっと文章に激しい所はありますけど、天皇という立場の特異性が
日本だけはなく世界的にも不思議なお立場なんだなぁ~と、考えさせられました。

さて『夢の裂け目』『夢の泪』と『夢の痂』と続けて拝見して、
はたして自分の中に何が残ったんだろうと
胸に手を当てて考えてみたんですが、上手く見つからないんですよ。
でも、きっとそれって難しい言葉を優しく伝えてくれる井上さんの作品によって
自分の中で、逆に消化しちゃったんじゃないかなぁ~とも考えてみたりしちゃって

戦争によって、立場、状況、どんな苦しみを背負っても生き残った私達は生きていかなきゃいけない。
生き残った私達は、それらの過去を清算・・いや、丸抱えして
自分なりに辻褄を合わせながら、時代の流れに乗っかって再生されていくものだから
東京裁判と表題がついていながらも、裁判を取り巻く人たちの環境、立場のお話で
結局は、わたしたちのお話だったかなぁ・・と、思った次第です(ちょっと歯切れが悪いのですが)

今回は、ラストに初演時には無かった
『夢の裂け目』のラストのシーンが追加されていました。
それはきっと演じる側の彼らにも、何か大きな心のメッセージを伝えているような
井上さんの温かい言葉で綴られた歌詞でした。
歌いながら舞台中央に固まって上を見上げる姿に、思わず、つーっと涙が流れました。

6/3(月)~6/20(日)まで、新国立劇場・小劇場[THE PIT]
by berurinrin | 2010-06-23 23:11 | 観劇感想
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