シェイクスピア祭『鵜山仁、シェイクスピアを語る』その2

『ヘンリー六世』の演出について
「知的な演出をされた」と河合祥一郎さんが、総合的な感想をおっしゃいました。
それは、シェイクスピアがわからない人に対しても、明晰でわかりやすかった。と
「そのまま『リチャード三世』が観たかった」と、河合さん。
わたしも観たかったぁぁぁ~!もちろん鵜山仁さんの演出で♪

『ヘンリー六世』のお芝居の中の場面で一際、河合さんの心に残ったのが
戦場のシーン。
中でも、息子を殺してしまった父親と父親を殺してしまった息子の嘆きの場面で、
その2人を見てヘンリー六世が嘆くシーン。
ヘンリー六世を演じられた浦井健治さんが、宙吊りになりながら
自分の無力さを独白する台詞が、そのまんま身動きできずヘンリー六世の無力さを
宙吊りによっていかんともしがたい状況が視覚的に良く表されていて
良く思いついたなぁ~と、そのアイデアについて鵜山さんに質問されました。

すると鵜山さん、この会場の上を見上げて
「この三倍位ある高いスノコから
ヘンリー六世演じる浦井君を降ろさなきゃいけなくて・・」と
ご自身も中劇場の天井のスノコ登られたそうで、
「下を見たら、これは落ちたらダメだな・・(苦笑)」と
ダメに決まっているんですけどって、ちょっと怖かったそうですが
あの場面を観たお客様から「ヘンリー六世は死んじゃったんですか?」と
聞かれたそうで、「天に昇っちゃったと思われたんでしょうね」
なるほど~。
一応、この場面は「このもぐら塚の上に座って」と戯曲に書かれてるそうで
元々高いところにヘンリー六世が居る設定にはなっているそうです。
「あの中劇場の舞台機構の中で、2階のお客様にも浦井君の顔が近いシーンも
作らないといけないかなぁ~バカな事も考えちゃったり(笑)」と、
好きな人を間近で見れる機会を作ってくれるなんて、ファンに優しい鵜山さんですね。
私は2階で拝見する機会はなかったのですが、2階でご覧になられたお客様は
浦井さんのお顔近くでご覧になれたのでしょうか?
とはいえ、「なんともつかない不安定な安定感を実現してみたかった」そうです。
「そもそも上から人が降りてくるっていう発想は凡人には思いつかない」と
河合さん。うんうん、そーですよねぇ
「この発想は稽古場で?」と聞かれた鵜山さん。
人命に係わることなので、早めに企画書を出してと云われて、
かなり早いうちから考えられたそうです。

とはいえ「一種のパクリだったかも・・」とおっしゃる鵜山さん。
1983年にパリのオデオン座でジョルジュ・ストレラーさんという有名な演出家が
ミラノのピッコロテアトルのイタリア人がイタリア語で上演した『テンペスタ』を
(シェイクスピアの『テンペスト』です)ご覧になったそうで
妖精エアリルが、一本吊りでフライングしていて自由に空中を浮遊していて、
プロスペローの手から手へ軽くジャンプしたり
ところが、最後魔法の力によって捕われていたエアリルが、プロスペローから解放されたシーンで
エアリルのワイヤーが外れたそうで
外れたら歩いて舞台から去っていかなきゃいけない。
捕われた時は自由なんだけど、去っていく時は自由なんだけど不自由な様を
体感しなくちゃいけない・・そんなシーンが浮かんだようです。
「ついでに・・」と云いながらその『テンペスタ』に登場する
怪獣キャリバンのシーンも面白かったそうで
舞台の真ん中に黒光る板がずっーとあって、真ん中に白い砂があったそうで
で、キャリバンがその白い砂に顔を埋めて、ふと上げると白い刺青のように
顔に描かれていたそうです。
刺激的な舞台・・面白いですねぇ~

「稽古に入る前に長い時間をヘンリー六世の浦井さんと過ごしたのは?」と
河合さんから質問された鵜山さん。
「(浦井さんが)長い台詞を、あまりしゃべった事が無いようだったので・・」と
鵜山さんご自身、台詞をどうしましょう?とか、どういう風に解釈しましょうか?
どういうベクトルが、この台詞一行の中にあるのだろうか?とか、
もうちょっと勉強してみたかったそうで・・浦井さんが、そんな鵜山さんに
「そういうのに付き合ってくれたっていうかどっちが先生だか判らないんですけど・・」と、
半月ほど毎日ではなかったそうですが続けられたそうです。
「すごい贅沢な授業ですね」BY河合さん
本来はやらなきゃいけない・・と、おっしゃった鵜山さん。
「でもそういうデスクワークは馴れていないんで・・」
とはいえ、若い方であまり舞台の経験の無い人と時々、同じようなことを
されるそうですが、今回のように、こんなに長くやった事はなかったそうです。

主に読み合わせをされるそうですが
「この台詞は、誰に言ってるんだろうね」とか、芝居の授業になっちゃうんですけれど・・と、続けて
「例えば「おはようございます」という台詞があったとしたら
“本当は出掛けたくなかったんだけど・・とりあえず、河合さんに会ったので
「おはようございます」と言って背中を向けたい”とか、
モチベーションが色々あって台詞をどういう音で言う中に、前後の人間関係が含まれてる・・
と、言うのが持論なんですけど」と、僕だけが言ってるわけじゃない(笑)
そういう一つ一つを腑分けしてみようと、でもそれらは相手次第だし、相手の
リアクションで変わってくる・・そういう事を含めて
稽古場で解決しなきゃいけない問題が多いけれども、その前提として、
いくつ位ひとつの台詞で関門があるのかと探ってこられたそうです。

久しぶりの第2弾です。覚えてますかぁ(苦笑)
忘れたわけじゃないんですが(まだまだUPしたいものがあって・・)
なかなか追いつかなくって・・・でも、楽しくUPしますので、
伝わって頂けると嬉しいです。
かなり私の解釈が入っているので、
「そんなこと言ってないぞ」なんて言わずに、優しいまなざしでお願いします★
by berurinrin | 2010-06-22 01:43 | イベント
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