オリヴィエ・ピィ朗読および講演会『言葉への情熱』

オリヴィエ・ピィ朗読および講演会『言葉への情熱』 in 日仏学院(6/7)

今年my初の日仏学院のイベントに参加してきました。
オリヴィエ・ピイさんといえば、演出家であり、作家でもあり、役者、歌手でもあり
現在はフランス・パリの伝統的なオデオン座の芸術監督を努めておられます。
オデオン座といったら開場は、マリーアントワネットの時代ですよ。すごいですよね。
さまざま時代のうねりと共に紆余曲折をへて、
現在のオデオン座は、ヨーロッパ諸国の劇団や演出家の作品が上演されているようです。
それにしてもピィさんにしてもコメディーフランセーズの事務局長の
ピエール・ノットさんにしても多彩な方が多いです。
ピィさん、なんて可愛らしいお名前(ああっ失礼)お写真を拝見しても甘いマスク・・と思いきや、
実際のピィさんは、お髭が印象的でしっかり、がっちり体格の野性味溢れた男性でした。

前半は、ピィさんご自身の作品『征服者 (Les Vainqueurs) 』から
1時間ほどの朗読をして下さいました。
登場と同時にリーディングの始まりです。
字幕も同時通訳もストーリーの概要もないので、情けないほどにさっぱり判らなかったのですが
深い声で朗々と、偉ぶる感じが豪快で激しい語り口調でした。
最後はきっと「俺様はぁ~」みたいな、理想を掲げて終わったのかなぁ・・なんて
手に持っているテキストを読み終えるたびに、ピリッと破って床に捨てる動作がワイルドでした。

リーディングが終わると5分ほどの休憩の後、
静岡県舞台芸術センター芸術総監督の宮城聰さんとの対談が始まりしました。
宮城さんは、「Shizuoka春の芸術祭2010」で、ピィさんの書かれた『若き俳優への手紙』
を演出されておられるそうで、そのピィさんとの今回のいきさつから『若き俳優への手紙』
についてのお話を中心にした内容でした。

この『若き俳優への手紙』に至るいきさつは、2年前の6月に舞台芸術センター(SPAC)において
ピィさんが演出された『イリュージョン・コミックー舞台は夢』と『若き俳優への手紙』 を招かれたそうで
宮城さんより、この二つの作品は、同じテーマでありながら、全く異なる劇であり
この2作品を拝見すると、ピィさんの劇世界がわかるとおっしゃっていました。
それは、俳優の声で詩を聞いたということ。
現代の日本の舞台で、舞台上で語る言葉を詩である事が、軽んじられていると
宮城さんご自身、もう一度、俳優に詩を語らせたいと思ったそうです。

そんな事を念頭において、宮城さんは、昨年春には唐十郎さんの作品を演出され、
つい最近はイプセンの詩的要素が強いといわれる『ペール・ギュント』を上演し
来年3月にはピィさんの『少女と悪魔と風車小屋』を上演すべく交渉中だそうです。

『若き俳優への手紙』は、平田オリザさんが日本語版の上演台本を翻訳されて
本来は、男性俳優が演じるところ、日本語版では女優が演じられるそうです。
ドラマは、詩人(主人公)が孤独と向きあい、絶望が彼を被い、つかの間の喜びに
対し水を差し敵対者の存在やさまざまな困難に飲み込まれてしまいます。
のちに一人の少年と出会いますが、その少年に対し、
詩人はいつしか、彼の敵対者であった人たちと同じ意見を少年に向けるそうです。
最後、詩人=俳優は、舞台に立って話すそうです。
「こんな平凡な奇跡があるんでしょうか?」と
それは、演劇に恋をしたものにとっては、久しぶりに恋に落ちた頃を思い出す。
そんなピュアな芝居・・だそうです。
畳み掛けるように話す宮城さんです。

この『若き俳優への手紙』の主人公が心身ともにへとへとになった後、さまざまな世間と
向き合って、少年が演劇を語るシーンと『イリュージョン・コミックー舞台は夢』と
似通ったシーンがあるそうで、主人公=詩人の前に現れる少年は、ピィさんご自身ですか?と
宮城さんからピィさんにご質問がありました。

「そうです」とピィさん。
『イリュージョン・コミックー舞台は夢』と『若き俳優への手紙』 が同様の戯曲であり、
詩というのは、言葉の体操ではなく、よりよく何かを言おうとする文法でもなく
精神的な冒険であり、哲学や宗教のように大切であるとおっしゃいます。
舞台に登場する少年は、意思を持って飢えているそうで
つねに果てしない渇きを持っていて、若い人たちから伝わってきて
それが歴史を作っていく・・・そう、おっしゃっていました。
きっと演劇に例えておられるのかもしれません。

この『若き俳優への手紙』の舞台化に対して、舞台美術を公募されたそうで
40エントリー34プランの中から選ばれたそうです。
この舞台セットも非常にユニークで、日本の能舞台を意識しつつ
まったく逆の発想で、宮城さんも想像できなかったそうです。

鵜山仁さんが演出された新国立劇場版の『イリュージョン・コミックー舞台は夢』を
頭に浮かべたんですが、ピィさんの手がけたものは、かなり趣が異なる感じが(笑)
でも、ノットさんにしてもピィさんにしても鵜山さんから広がった世界。
ちょっと難しい(特に同時通訳の解釈は難しい)内容でしたが、
今後も、まだまだ知らない演劇の世界を楽しんでいきたいです。

『若き俳優への手紙』
演出:宮城聰 作:オリヴィエ・ピィ 日本語台本:平田オリザ 出演:ひらたよーこ 他
6月12日(土)、13日(日)
静岡芸術劇場
by berurinrin | 2010-06-08 23:57 | イベント
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