久保田万太郎の世界『三の酉』『夜長』

文学座有志による自主企画公演・久保田万太郎の世界第7回公演

作   久保田万太郎
演出  黒木仁
主催  万太郎の世界
協力  文学座企画事業部 

『三の酉』 脚色 黒木仁

昭和30年頃、赤坂のとある待合の一室。
芸者おさわさん(清水碧さん)の三味線の音色に聞き惚れる啓輔さん(大滝寛さん)
けれどもおさわさんが、酉の市に見知らぬ男性と行った話を聞いた啓輔さんは
心穏やかならず・・・あの手、この手で、おさわさんに本当の理由を聞いた啓輔さんは、
来年の酉の市は、二人で行く約束をするのですが・・

大人のお洒落な会話のやりとりがなんとも自然で、あやうくて
でもあやうい前で、さっと方向転換する・・互いにしかわからない感情の言葉遊び・・
濃密な空気感を堪能しました。
きっと啓輔さんは、結婚されていて地位も名誉も全て持っていて、
おさわさんとも大人の関係で、互いに愛し合っていながらも、束縛しあわない関係で
まぁ、でもそれじゃないと関係が成立しないのだとは思いますがf(^_^;)
おさわさんの言葉が、男の人だったら「え、それから」とか「で、で、」とか、次の言葉が
待ちきれないんじゃないかと思うほど、色っぽいつーか、艶っぽくて素敵でした。
そんであの笑い声の可愛い事。コロコロコロ~と、まりが弾むように高い声で笑うんですよ。
それなのに寂しそうな表情・・・おさわさんの人生が、35分間の中で完結してしまったかの
ような切なくて美しい会話のお話でした。
おさわさんの旦那さんは、大滝寛さん。
お元気な大滝さんのお姿を拝見できて、嬉しかったぁ~
ちょっぴりふっくらしたお姿は、社会的に地位のある旦那さま然とされていて、貫禄を感じられるし
おさわさんに翻弄される時は、ホッペを膨らまして子供のように拗ねちゃったり
中でも、おさわさんの三味線の音色に、節をつけて手をとんとんする姿が粋で素敵でした。
そんな二人の間に、そっと入るおかみのおうたさん(赤司まり子さん)の所作の美しいこと。
飾らない姿に色気を感じさせる・・・ほんと濃厚な時間でした。

『夜長』

お玉さん(吉野由志子さん)のよもや話しに耳を傾けているのは平吉さん(中村彰男さん)。
お玉さんのご主人・三吉さん(三木敏彦さん)の大病をされた前とその後の真面目な生活振りを
報告されていますが、話を聞いている平吉さんに対して、
お手伝いのおきよさん(金沢映子さん)は、意味深な表情をされています。
そんな時、息子の啓太郎さん(山森大輔さん)の友人の一郎さんが、啓太郎さんの身を案じて
訪ねて来られます。

第7回公演『燈下』の三年後の作品・・と、いうことで後日談なのかなぁと思ったりもしたのですが
役名も違うし・・・でもリンクしてるし・・で、ちょっとさらってみるとですね。
前回では、鵜澤秀行さん演じる父が病気で、その痛みの激しさに
植田真介さん扮する息子に向って、つい実の父親じゃない事をばらしてしまいます。
誰よりも父親を慕っていた息子は、それを聞いて以来すっかり内向的な性格になってしまいます。
病気が回復した父は、息子に言った事をすっかり忘れていて、出掛けた帰りにお土産を買ってきます。
そこには複雑な表情で受取る息子の姿がありました。

啓太郎さんは、一郎さんに自殺をほのめかす手紙を送って姿を消してしまいます。
と、なると哀しいドラマが展開すると思えど、なぜか滑稽な笑いのテイストに包まれているんですよ。
この会は、何度も拝見しているのですが、会場から笑いが起こるなんて初めてじゃないかなぁ??

お玉さんは吉野由志子さん、なんかすごい豪快な女性f(^_^;)対する平吉さんが
ちょっとお調子ものなキャラで、彰男さんのにかって笑う姿が、また女心をくすぐっちゃうんでしょうね。
あやしい目配せや告げ口しちゃうお手伝いのおきよさん演じる金沢映子さんが
これまた明るくてとってもチャーミングでした。
そんな中で一人ブルーな息子の啓太郎さんを演じる山森さんは、一瞬の出番ながらインパクトありました。
役柄と対照的な開演前、開演後の山森さんの笑顔は、最高です!
そしてお友達の一郎さんの西岡野人さん。袴姿眩しいですねぇ、髪型も眩しかったですが(*^_^*)
袴姿で動くのは難しいと思いますが、やっぱ歩幅とか違いますもんね。
闊歩するような感じなんですかねぇ・・背筋をピーンと張って、とてもお似合いでした。
真面目だと思っていた旦那さまの浮気現場を奇しくも目撃してしまったお玉さんは、
あろうことか、啓太郎さんが持っていた睡眠薬をその場で飲んで自殺未遂をしてしまいます。
そんな彼女を背負ってこられる近所の者は、鈴木弘秋さん。
ぜーはーぜーはーの声が、リアルで(笑)ぐったりした表情は、面白かったし
「お布団、お布団」と同じく佐藤麻衣子さんも、一瞬の表情は豊かだなぁ~と
そして「困った。困った」の三吉さんの耳元で、内緒話をする浮気相手のおしんさん(石井麗子さん)
の手の動きと流し目がめっちゃ綺麗~!!これはちょっと素敵過ぎました。
けれど、ドタバタ騒動が落ち着き
三吉さんが、最後の啓太郎さんの残した手紙を読んで「知っていたのか」とつぶやくシーンは
どっしりとした三木さんに合わせて時が止まったようで
いつもの静寂な風景が戻ったような気がしました。

ちょっといつもと趣が異なる気がしなくもないのですが
それでも、やっぱりどこかピーンと張り詰めた空気の流れや
ふわっと香ってきそうな季節の香り・・静かな町の喧騒が聞こえてきそうな美しい世界感は
このシリーズで無いと味わえない贅沢さがあります。
う~ん、次回も楽しみですっ!!


4/21(水)~25(日)まで in 文学座新モリヤビル1階稽古場

さて、確実に前進中のモジョ君、ミキボー君は如何でしょうか?台詞は覚えられたのかなぁ(笑)
情報ブログはこちら→モジョ/ミキボーのブログ
by berurinrin | 2010-04-25 21:16 | 文学座観劇感想