新国立劇場『鵺』第一部<頼政と鵺>

新国立劇場『鵺』 in 新国立劇場小劇場(7/2)

作   坂手洋二
演出 鵜山仁

第一部<頼政と鵺>

「ひゅ~ひゅ~・・・」すすり泣くような寂しい声がかすかに響く
ここは宇治川のほとり。陣を張っているのは老武者・源頼政殿(たかお鷹さん)と家令(村上淳さん)
そして武者(坂東三津五郎さん)。
頼政殿は、帝の命令を受けて“鵺”を矢で退治した過去があります。
遠い記憶の中で、この声に聞き覚えがあるという頼政殿。



様子を見に行った武者が、小舟に乗った女(田中裕子さん)を頼政殿の前に連れてきます。
戦のしばしの気晴らしに、女は、彼らの前で語り始めます。

わーい、わーい今年初の鵜山さんの新作ですよぉ~★嬉しぃ(涙)
本当・・待っていました。えへへっ
『鵺』というのは、もともとは、世阿弥が書かれた能。
化け物“鵺”を退治する頼政のお話だそうです。が、私は今まで能を拝見したことがなくって
丁度良いタイミングで、銕仙会能楽研修所で能舞台の雰囲気を味わう事が出来て
(作品は、フランス人の一人芝居でしたが♪がははっ)
ちょっぴり予習気分で大満足(*^_^*) ・・あとは、指折り数えて初日のこの日を待っていました・・うふっ

この『鵺』は、戦乱の時代、現代、そして異国を舞台にそれぞれの全く違う世界を“鵺”が
時空を越え、場所を変え、登場します。
で、先ずは戦乱の時代の『鵺』のお話です。

舞台の上には、ごろんごろんと転がった石たち・・まるで三途の川原・・
そのたくさんの石には、それぞれ顔の絵が書かれていて、苦しそうな表情や恨めしそうな表情・・
さすが、妖怪“鵺”のお話だけに、まがまがしぃ・・と、思いきや
優しい表情やはにかんだ笑顔の石もいて・・ありゃありゃと、なんか可愛いじゃありませんか♪
でも、それはそれ。。なんか、良心を問いかけられるドラマです。

ある日、メスのトラツグミは、鳴き声が帝の気に触ったというだけで
勝手に鵺という、怪物にされ、頼政殿に矢で討たれてしまいます。
射られたメスのトラツグミは、二度と巣に戻ることは出来ず、孵った雛たちは成長することなく・・
残されたつがいのオスは、武者に化けて頼政殿に復讐する為その機会を狙っていました。

過去に妖怪“鵺”を成敗したという武勇を持つ頼政殿は、文学座のたかお鷹さん!
武将姿がめちゃめちゃお似合いです。
どっしりした佇まいは、過去の武勇を語りつつ老いた風格を感じさせます。
その声の深さ・・とっても素敵です。
帝の命令とはいえ、なんの罪の無い小さな動物の命を奪い、妖怪の汚名を着せられた
哀れなメスのトラツグミ・・そして哀れなつがいのオスのトラツグミ・・・・
自分に復讐する為に現れた武者の話を、じっと聞く姿・・・
遠くを語るように、つぶやきながらがっくりと肩が落ちていくその悲哀さ・・
たかおさん、、、かっこいいいっ・・・・です。

たかおさん演じる頼政殿VS武者を演じる坂東三津五郎さん。
三津五郎さんって、色気のある方ですね。
立ち振る舞いの美しさは、何も言うことはありません。
二人の静かな戦い振りは、ただただ・・すごいっす。
そんな二人の間に立って家令の村上淳さんが、ちょっと可哀相な気がしちゃいました。
時代物の場数が出ちゃいますよね。
田中裕子さんの動きが、人間離れしていて“鵺”っぽくて、どきどきしちゃいました。
田中さん、ため息が出ちゃう程・・美しい女優さんです。

“鵺”を斬ると“鵺”になる・・・。頼政殿に切り刻まれながら、武者が“鵺”に変身していく姿は、すごいです。
兜が飛ばされて、その顔はサルになり、腕を斬られてトラになって、背中を切られて毛深いタヌキ
そしてキラキラ赤く光る蛇の尻尾・・・まがまがしい動きは、武者ではなく人ではなく“鵺”!?
水を自由に操って、頼政殿に悪夢を見せつける“鵺”・・
そして頼政殿を自害へ導き、目的を遂げて天昇していく“鵺”の姿・・
うっ切ない

リアルに水を操る姿は、ビニールと照明を使っているのですが、そのビニールの使い方にびっくり・・
ダイナミックでエンターティーメントたっぷりに、心拍数を一気に上げてくれた第一部の<頼政と鵺>でした。
by berurinrin | 2009-07-11 00:03 | 観劇感想