椿組公演『ささくれリア王』

椿組〇九年4月公演『ささくれリア王』 in ザ・スズナリ(4/25)

作・演出 阿藤智恵

結成10周年公演を迎える劇団・ささくれ団の記念公演は、シェイクスピアの「リア王」を題材とした
『ささくれリア王』!座長の笹木友晴さん(田淵正博さん)の力作です。
ところが初日の1ヶ月前・・主役を演じるはずの俳優が、出演できなくなるというアクシデント。
一度は公演を中止する事を宣言した笹木さんですが
ある日、稽古場を貸してくれている中島運送(株)の会長さん・中島和郎さん(外波山文明さん)が
昔、大好きだったという新国劇・国定忠治の一場面を演じてる姿を見て、
中島さんに主役をやってもらうように頼みます。

シェイクスピアの作品の中で、『リア王』はわたしのお気に入りの一つ。
お気に入り・・なんておこがましいのですが、好きなんですよ。
愛する娘の真実の言葉を理解できなかった・・お馬鹿で癇癪餅で我儘なダメダメ親父(笑)
リア王ですが、そんなひどい王様でも
同情せずにはいられない程の過酷な運命が次から次へとざっぷんざっぷんと、彼を襲います。
そんなリア王を演じることになった芝居好きの中島さん。
会長とは名ばかりで、すでに全ての決済権は娘婿が握り、自分の存在価値を失いつつあった中島さん。
顔を合わせると、喧嘩になってしまう娘との付き合い方も、ぎこちないものに・・
きっとそれは、娘さんも同じ事。
お互いを思いやろうとすればするほど、こんがらがっていく不器用な人たちです。
家族の反対を押し切り劇団・ささくれ団いに入団した中島さん、座員達と関わりながら
いつしかリア王と自分自身が重なり合っていく姿を、ぶきっちょにとっても丁寧に
でも気がつくと、今まで見守っていたささくれ団はじめ観客の私たちが逆に中島さんに
見守られているような包みこまれているような温かい雰囲気に・・人徳ですね。中島さんの(*^_^*)
そして中島さんの見つめる奥さんの優しさにじーん。

とはいえ、弱小劇団で、売れない役者で、仕事やバイトをしながら深夜まで稽古を続け
不安と戦いながら、ついつい飲ミニケーションで、ポロリと本音を語る彼らの姿は、本当にいとおしいです。
好きな事を生業に生活をしていくことは、大変な事だけど
それでも目を輝かせて、劇中劇で演じてる彼らの二重の姿は、美しいなぁと思いました。

文学座からは、亀田佳明さん。ひゅーひゅー♪
黙っていても体から気持ちが伝わってくる・・そんな亀田さんの横顔ヤバイです(笑)
亀田さんの横顔・・見惚れるほどに美しいです。
でもって亀田さんが演じる劇中劇のエドマンド。かっこよすぎです。
私生児として生まれ、親を恨み、兄を罠にはめて、リア王の二人の姉から愛されて
戦争で捕えたリア王とコーディリアに刺客を放ったり、悪行三昧の末
結局、兄に殺されしまうエドマンド。最後は、良い人で死のうとしますが、それは報いられずに・・。
コーデリアを演じる若い女優・土岐恵(今井夢子さん)さんが、わかっていながらも焼餅を焼いちゃうほど
どきどきするラブシーンもあったりと・・まぁ、それはそれ(笑)劇団内恋愛中ですから
彼女は若いですから・・・って。。おそろいのピンクのぼんぼんが、のろけた二人ですね。
それも可愛いカップルで素敵です。
でも、亀田さんの劇中劇じゃないエドマンド役、めちゃめちゃ観てみたくなりました。えへへっ

毎回拝見する度に、私たちを惑わせながら色んな作品を魅せて下さる阿藤さん。
今回阿藤さんが魅せてくれた世界は、芝居を好きな人、芝居が好きな人
どうして芝居が好きなんだろう?どうして芝居を好きなんだろう?
そんな観る側、演じる側のそれぞれの気持ちを優しく察してくれてるような
二つの世界感を、小さなザ・スズナリの空間の中で融合させてくれた芝居に対する愛情物語。
そんな愛情のおすそ分けを頂いたような気分になりました。

4/24(金)~29(水・祝)まで in ザ・スズナリ
by berurinrin | 2009-04-29 01:28 | 観劇感想