ある女優の話

彼女と出会いはもうウン十年もの前の事

『アレキサンドル・デュマ』を愛読していた私。
ある早朝の日曜日、何の気無しにTVをつけたら
不思議な番組をやっていた。
それは宝塚テレビロマン『三銃士』。
この放映していた作品については、あまり語りたくないのですが
初舞台を踏んだばかりのこれからの新人達を多く起用した
実験的な番組だったと思います。
台詞も唄も演技もまだまだ未知なタカラジェンヌ達。
でも、なぜかその番組で引き付けられた生徒がいました。
私のイメージぴったりのダルタニアンを慕う小間使いのケティ役の
一人の生徒。

初めてファンレターを書きました。
なんて書いたか分かりませんが、返事がきました。
その返事を書きました。またまた返事がきました。
まだまだ学生で、そう舞台を観る機会もありませんでしたが
数年後、一人で動き回れるようになり
東京公演の楽屋口で彼女に対面する事ができて
それがきっかけで、数年間彼女が退団するまで関わる事ができました。

研究熱心な彼女は、観終わると
「ダメ出し」を聞いてきました。
娘役なので、台詞回し、化粧、髪型、装飾品、立ち振る舞いから
なんでも聞いてきました。
彼女は簡単には納得してくれない人で
「おかしい」といえば「どう、おかしいの?」
「よかった」といえば「どこが、どうよかったの?」
容赦ありません。
毎回そんな調子なので、こちらも気を抜いておちおち舞台を観ていられません。
でもそんな彼女のおかげで、色々な舞台の楽しみ方を教わりました。

彼女を通じて仲間も一杯できて最高に楽しかったです。
彼女は退団後、現在も女優を続けており
TV、舞台、声優と頑張っています。
去年久しぶりに彼女の舞台を観て、
終演後の“ダメ出し”をすっかり忘れて、板の上の彼女の動きに感動した私
「なんか感じた?」
「。。。うーんっと、腕細すぎ、あたしの肉を分けてあげたい」
「そう簡単に直せない“ダメ出し”するのやめてくれない」
「すみません」

彼女と別れた後、メールに
「久々に透明感のある**の演技に感動したんだよ」
「透明感ってどんなの?」
「(ニュアンスで受け止めて~!!)・・・」
相変わらず、突っ込みの激しい女優です。
by berurinrin | 2005-03-15 21:03 | 日常