世界文明センター『芝居の役割 演出者の役割』3

世界文明センター『芝居の役割 演出者の役割』 in
東工大・大岡山キャンパス 西9号館2Fディジタル多目的ホール(12/16)

講師 鵜山仁

さて、抽象的なお話になってしまうと・・と、前置きをされた上で
現場=お稽古場で・・と、いうと
「飽きた」とか「面白くない」とか、「見てて何か足りない、つまんない」と思った時に
初めてダメ出しというか、広い(笑)主観的な印象を担保にして
演出って言う仕事のばねにしているわけです(笑)
稽古を見ていて「飽きた」とか「眠くなってきた」と思ったら
少なくとも何とかしなきゃいけないと思って、何とかするのが演出の仕事で
その時に何とかしようと、稽古をストップして、稽古場のこっち側の演出席から
橋を渡るみたいに向こう側の世界へ・・。
本当に言いたいのは「面白くない、なんとかしてくれ」これだけ(笑)
だけど本当に「面白くないから何とかしてくれ」って言うと怒られそうだし・・
色々言葉を費やして説明するそうですが、それによって失敗するケースもままあるそうで・・
逆に「面白くない、なんとかしてくれ」と言ってるほうが良い時もあるそうです。
但し、そういう場合でも大事なのは
演出者としての自分と役者とのキャッチボール。
で、ここで変化が起きて欲しい
言ったことが、そのまま役者に通じてしまうほど、つまらない事はないとおっしゃいます。
そんな事だったら、わざわざ(演出家が)稽古場に居なくても良いのではないか?!
ダメ出しの時に、演出者からのメッセージに対する役者からの
誤読や勘違いとか、演出者の回答を越えてくるような答えや音を常に聞きたいと
おっしゃいます。
そんな、稽古場での音探しを一ヶ月~二ヶ月程やって
今度は劇場に入って、舞台稽古が開始されます。
そこで初めて本格的な舞台装置、照明、衣装と出会って
そこでも新たな音に挑発されて、拡大されより広範囲な説得力をもって
観客と相まみえる
・・・そして、私たち観客がまた違う音を、観客席から発して
舞台から発する音と絡み合ってまた変化していくのでしょうね。

錬金術・・インチキな仕事をしているみたい(笑)いずれにしろ
そおいう感覚で仕事しています。とおっしゃる鵜山さんです。

あと、ひとつ大事な芝居の方法論で「見立て」という言葉があるそうで
「見立て」といのは、実際にはないもの、実在しないものを
あるかのように表す手法、表現方法だそうで、落語にも『お見立て』というのがありますね。
芝居の醍醐味の一つであるのではないか
「あそこに月が・・」と指を差したら、まるで月があるかのような感じになったり
居ない人に向って手まねきをしたら、そこに人が居るかのような錯覚が起こります。
と、今お稽古真っ盛りの『兄おとうと』のお稽古風景を例にとって説明して下さいました。
『兄おとうと』は再演になるので、ご覧になった方も沢山いらっしゃると思いますが
当時流行りものの「説教強盗」が、現れる1シーン。
「説教強盗」が、出刃包丁を持って登場するそうですが、歌に突入するシーンで
出刃包丁が、振り子のようにメトロノームになって指揮棒に変化できないかと
一生懸命、振付の方と所作指導の方と子供のように頭を抱えてるそうで・・
目に見えないものが見えてくるプロセスの過程を例にとって教えて下さいました。
『兄おとうと』・・実際拝見する時、ぜひチェックしたいですね★
ちなみに、こまつ座『兄おとうと』来年夏7/31~8/16(紀伊國屋サザンシター)です。

でも一番大切な事は、客席との共犯関係というか、客席とのキャッチボールが
出来ないと、これらは成立しないとおっしゃいます。
成立して、ベースにして、創造力の中で、ちょっと大げさですが
まだ見ぬ人生が立ち上がっていく・・それが目的だとおっしゃいます。

かつて生きていた人たちの楽しかった事、悲しかった事、足跡記憶のアーガイブ
をどうやって今に伝えていくか・・幻想を解釈する事によって
かつてあった死者の記憶、魂を蘇えらせる・・・400年前の作品が今に繋がるという
事が演劇というかアートというか、たぶらかしの術(笑)なんじゃないかなぁと

演劇は、お金はあまり掛からないけれど、非常に試行錯誤を重ねるし
非効率的だし、外に出て行かなきゃならないので、俳優も我々もお客さんも
かなり手間と時間が掛かるし、かなり非経済的なジャンルなんですが
それでも現実から“ウサギ穴”通いを続けていると締めくくられた鵜山さんなのでした。

ちょっとマイクの調子が悪かったり、鵜山さんが風邪気味ということで
喉がつらそうだなぁ・・と、ドキドキしながらの拝見でしたが
沢山の言葉を使って、どれもこれも貴重でキラキラと素敵なお話の数々でした。
メモを取っていたら20ページにもなってしまいました(笑)
いつも単語を書き出して、後からその間に言葉を繋げていくのですが
鵜山さんの言葉は、噛み応えがあるというか、咀嚼して文章にまとめていくと
私の心にどんどんストンと落ちていきます。理解できたかどうかは別ですが・・・(><)
でも、それはきっと鵜山さんがおっしゃる言葉や今までの論評、言動に
ブレがないから・・だからなんだと思います。
今年、色んな問題が起きて鵜山さんご自身も大変だったと思いますが
語弊があるかもしれませんが、私はあまり気にしていませんでした。
逆に周りの人たちのあたふたしている様子が、なんだかなぁ・・と(苦笑)
わたしは、以前「また、なにかめずらしいもの作りたいです」そうおしゃった鵜山さん
に魅了されながら、これかも鵜山さんの掘った「ウサギ穴」に落っこちて
現実とは違う世界を体感していきたいなぁと・・うふふっ

12/16(火) in 東京工業大学 大岡山キャンパス西9号2Fディジタル多目的ホール
by berurinrin | 2008-12-20 22:27 | イベント