世界文明センター『芝居の役割 演出者の役割』2

世界文明センター『芝居の役割 演出者の役割』 in
東工大・大岡山キャンパス 西9号館2Fディジタル多目的ホール(12/16)

講師 鵜山仁
  
あ~やっぱ『父と暮せば』は、文句なしに素晴らしい作品です。
すまけいさんと梅沢昌代さんのコンビも、本当に素敵です。
映像を観ながら、お芝居にどんどん引き込まれて
最後は涙涙・・で・・ちょっと恥かしいっす。

さて、鵜山さんは「演出の役割」について話をされました。

芝居の世界には、裏方という言葉があって
大道具、小道具、照明、音響効果、舞台美術、制作スタッフ、衣装
劇作家、プロデューサーなど、その中に演出家も入るんだと思いますが
いずれも自分は表舞台に立とうとしない。と、いうか立てない人のことで
その中で演出の役割を選んだという、ご自分の事を実感として
要するに、演出者っていうのは
役者にも作家にも舞台美術家にもなれなかった人じゃないかなって
鵜山さんらしいユニークな表現で話をされていきます。
チェーホフの『かもめ』で、鵜山さんがお好きとおっしゃるソーリという役名を
例えに出されて、ソーリという方は自分の事を「なりたかった男」って表現されているそうで
ソーリという人も文学者にも、弁舌爽やかな人にも都会人にもなれずに
田舎で余生を送っているそうです。
鵜山さんご自身も「なりたかった男」だと思うとおっしゃり
18歳で上京してきて、役者になりたくて、それしか考えてなかったそうで
役者の勉強をしてきて、研究公演とかで、舞台に立った鵜山さんに対して
同級生は浮かない顔をされるし、先生も「辞めたほうがいいんじゃないか」って
忠告をされる始末で、2年間在籍した専門学校を卒業して
文学座を受験された時は、演技部は競争率が高かったので
泣く泣く演出部に願書を出して、今に至るというお話。
ちょうど、その時の同期の方がいらしてて「こまっちゃうんだけど(笑)」と
今更ながらも、役者としての鵜山さんもちょっと観てみたかった気も・・
でも、東宝ミュージカル『シカゴ』で役者デビューもされてますよね。
偶然、扮装写真を見せて頂いたことがあって、口があんぐり(笑)
いやいや、ビジュアル系なお姿で・・美しかったです(*^_^*)

そんな事があったから、今でも作家とか音楽家とか舞台美術家とか
とりわけ役者には、すごく恨みというか憧れというのがあるそうで
上手いとか下手とかそういう問題じゃなくて、そもそもアーティストとして
演出者とそれぞれの専門家とは格が違うんじゃないかと謙った意識が正直あると
おっしゃる鵜山さんに、意外な感じがしちゃいます。
凡人な私にとって、鵜山さんは手を伸ばしても届かない雲の上にいるようなお方ですから・・

さて、そんな立場で何をやってるか?!と演出のお仕事を具体的に
お話してくださいました。
例えば「オハヨウゴザイマス」という言葉に対して
どういう「音」で言うのか?!と、いうのが演技というもので
ホワイトボードに書きながら説明をして下さいます。
どういう「音」といっても、耳に聞こえる音程とかボリュームだけでなく
「音」っていうのは、喜怒哀楽とか恐れとか怯えとか色々な複雑な感情の入った
息づかいといってもいいんじゃないかなと、おっしゃいます。
声だけじゃなくて、体全体の表情を集約した表情だと思っています。

鵜山さんはお稽古場で俳優達に対して良く使う言葉が
「音が違う」とか「音が変わらない」とか「もっと違う音がでないかな」
とか使われるそうです。
それは「オハヨウゴザイマス」という言葉が、いろんなケースで表情が変わる。
そう・・音が変わるということで
「オハヨウゴザイマス」の回りに人が居ると、また微妙に音が異なる
例えば、相手によって異なる音。
先生に「オハヨウゴザイマス」というのと、生徒に「オハヨウゴザイマス」
というニュアンスの違い。
そして「オハヨウゴザイマス」という言葉の前後の音も大切だとおっしゃいます。
前の音は
例えば、あの人に会いたくないなあ・・と、思いながら会ってしまった時の
「オハヨウゴザイマス」と
逆に、あの人に会いたいなあ♪と、思った時に会えた時の「オハヨウゴザイマス」の違い。
後の音は「オハヨウゴザイマス」と言い終った後に、相手が受け入れくれた場合と
靴を投げられた場合(某大統領の挨拶を例えに(笑))では、違ってくる。
相手に投げかける音、音の前後の3つの音の表情の違いから
いろんなシチェーションを例えに出して細かく説明して下さいました。
細かく作り上げていく・・作業。
普通、何にも考えずに使っている言葉ですが、いわれてみれば
挨拶一つにしても色んな感情が入ってるんだなあ・・と、頷くばかりです。

キャラクターやその人の抱えてる人生、歴史によってリアクションが変わってくる
その変化を多様に取っていきたい、その全体のうねりを
よりダイナミックに捉えていきたいという考え方をしている。と、おっしゃいます。
そうすると、とても複雑な操作になるそうですが
実際のリアクションは意外と単純で「プラス」「マイナス」「プラスマイナス」だそうで
靴を投げられた某大統領は、プラス(笑)危害を加えられるとう事ではなくって
積極的にコミニュケーションをとるという態度がプラスなんだそうです。
逆に、後ろを向いちゃうとか、去るというのがマイナス。
また、どちらでもなくて何か待ってるとかの姿勢がプラスマイナス。
リアクションは、単純に云うとおおむね、この3つに分かれるそうですが
それを芝居に持っていく時に、3つの内のどれを探り出すかが
なかなかやっかいなもんだそうです。
そうやってコミュニケーションによる変化をかもしていく目的は、
一瞬後と今とでは、極端に言えば人生観が変っちゃうほどのコントラスト、メリハリ
ドラマを呼び寄せる変化=チェンジ。そしてチェンジがチェンジをまた呼んでいく・・
そうやってキャッチボールを繰り返すことによって、
ものを感じる、感じ方が豊かになっていくことを目指していかれる・・と。
ただ変化、変化といっても、それは色んな考え方がありますが
台本とか脚本というガイドブックトというか、ルールブックに則した形の変化になりますが
その範囲のなかで、また逆にハードルにして、できるだけ最大限の変化、ドラマ、葛藤
を引き出していくそうです。
色んな関連性の中で、一人一人の演技者が、ひとまず発した「音」に対して
新たな可能性に向けて更新し続けるっていうのが、演出者の役割じゃないかな・・と
おっしゃいます。

では、お稽古場での鵜山さんは、どういう形で何と出会っているのかなぁ

12/16(火) in 東京工業大学 大岡山キャンパス西9号2Fディジタル多目的ホール
by berurinrin | 2008-12-19 21:35 | イベント
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