新国立劇場『舞台は夢・イリュージョンコミック』

新国立劇場『舞台は夢・イリュージョンコミック』 in 新国立劇場中劇場(12/6)

作   ピエール・コルネイユ
翻訳 伊藤洋
演出 鵜山仁

プリダマン(金内喜久夫さん)は、何年も前に家を出ていた息子・クランドール(堤真一さん)
の行方がわからず、その安否は気に掛かるばかり・・・。友人のドラントさん(磯部勉さん)
と魔術師アルカンドル(段田安則さん)の住まいである洞穴に向います。
アルカンドルは、プリダマンの願いを叶える為に妖術を使って、父の目の前に
クランドールの姿を蘇えらせます。
そしてクランドールの波乱万丈に跳んだ人生の軌跡が、繰り広げられます。

客席に入った途端、おおおっ・・と、びっくり。
こんなスケールの大きな対面式の舞台初めてです!
大きなわっか(笑)のようなものが吊ってあって、ごろごろとした石や岩が転がっている
真っ黒い床の海の上に浮かぶ島のような丸い円形と小さな円形の舞台が二つ。
やわらかい光が舞台の上に注がれていて、何とも云えない美しい装置です。

前作『山の巨人たち』では、大きな橋の断片が客席に向っていて
舞台と客席・・・台詞の中の言葉を象徴するような
「観客と俳優の間の心の隔たり」を感じましたが・・
今回の舞台は、舞台からはみ出して動き回る俳優達に翻弄されながら
実際は、一緒に作品の中に取り込まれているんだじゃないか?!と錯覚してしまうほどの
観客も巻き込んだ、題名そのままの夢のような楽しい舞台でした。

自分自身にとって『シラノ・ド・ベルジュラック』という作品が、
初めての芝居との出会いで、私の一番の愛読書といえば中学生の時から変わらず
不動の地位を占めるA・デュマの『ダルタニヤン物語』それも鈴木力衛さんの翻訳の・・
ということで、躍動感があって素晴らしい鈴木力衛さんの訳された本を収集していましたが、
手元にある鈴木さんの本は、シラノの台詞ではありませんが
「モリエールは天才なりき・・」のモリエールの戯曲だらけ・・ということで
コルネイユさんは、悲劇作家?!う~ん?詩人さん?程度のうすーい知識でf(^_^;)
でも、シラノ、ダルタニヤンもコルネイユも共通するのは、
17世紀太陽王と呼ばれたルイ14世・・。おおっ、と、『ルイ14世の世紀』(全4巻)
というヴォルテールが書かれた本をぺらぺらめくってみると
「ピエール・コルネイユが出なかったら、散文の作家たちの技量は一向進歩しなかった
だろう、とは大いにあり得ることである。」(丸山熊雄氏訳/岩波新書)
シラノもダルタニヤンもそして今回の『舞台は夢』も長台詞が多いんです。
皆さん語る語る大いに語ります(笑)が、とても心地良いのです。
音の無い音楽の様な言葉の調べに、目の前で繰り広げられる破天荒な展開に
一度観たら病みつきになってしまった私です。

主演の堤真一さん、段田安則さん、秋山奈津子さん・・もう、皆様魅力的で
第一線でご活躍されるオーラがすごい。キラキラ輝いておられる方々ばかり・・
そして文学座からは、堤さん演じる息子クランドールの人生を私たち観客と同じ目線で
ハラハラドキドキと見守るお父さんを演じられた金内喜久夫さん。
アンサンブルで活躍されたスキンヘッドが眩しい野性味溢れた姿が、カッコいい~ぞ
松角洋平さんと控えめだけど大胆で慎重な動きに目が留まってしまう川辺邦弘さん。

今年最後の鵜山さんの演出作品です。
今年一年、鵜山さんの舞台で沢山の元気と慰めを頂きました。
鵜山さんのご活躍が、わたしの元気の源なのです。
終演後、スキンヘッドが眩しい松角くんを訪ねた所、なんと鵜山さんのダメ出しの
真っ最中。カーテン越しに松角くんの台詞をおっしゃる鵜山さんの声の張の良さ・・
あまりのかっこよさに聞き惚れてしまいました。
「鵜山さんってば、皆に愛されてますよ」って
ダメ出し終了で舞台で観られなかった・・そう誰もが釣られて笑顔になっちゃう
あの人懐っこい顔面笑顔の可愛い普段の松角くんが現れました。
「(スキンヘッドは)鵜山さんの指示っす」 って、へぇすごい!すごーい。
その後、鵜山さんに伺ったら「あれは、彼がスキンヘッドにしていいですか?って
言ったから「うん」って言っただけ」って・・おおっ?!
まぁでも、似合ってるし目立ってたし剃って★良かったです。
色んな意味で、誰よりも舞台で光ってたよぉ松角君!!
実は満足して幸せ気分で劇場を後にした私に、またまた素敵な出来事が・・
それはもちろん内緒ですがエヘヘっと、昼間は文学座公演『口紅ーrougeー』を観て・・という何とも贅沢で素晴らしい盛り沢山の一日を過してしまいました。

年末に相応しい斬新で素敵で楽しさ満載の舞台です。
古典劇といわれるものの、今の戯曲にはお目に掛かれない驚きが散りばめられた舞台
ぜひぜひお見逃しのないように(*^_^*)
さて、次回はアフタートークが楽しみです!!

12/3(水)~23(火・祝)まで in 新国立劇場中劇場
by berurinrin | 2008-12-09 23:18 | 観劇感想